Pick UP!

無申告の場合、税務調査が入ったらどうなる?

無申告のリスクとデメリット

無申告のリスク

所得税の納税をしなければならないのに確定申告をせず、無申告であることがばれてしまったときは、納めなければならなかった税額の納付を請求されます。

税務署が請求できるのは、過去5年間(不正があれば7年間)の税額ですので、過去の分をまとめて請求され、資金繰りが一気に悪化してしまうこともあります。

しかもこの時、本来納めるべき税額に加えて、無申告加算税や延滞税といった税額が上乗せされます。

国税庁によると、令和元事務年度の所得税の無申告に対する一般調査・特別調査(※)のうち、1件あたりの申告漏れの所得金額は2,160 万円、加算税を含む追徴税額は、1件あたり 237 万円にもなります。

(参考)国税庁:令和元事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について

httpss://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2020/shotoku_shohi/index.htm

(※)一般・特別調査とは

実地調査(税務調査のうち、現地に赴いて行われる調査)のうち、高額・悪質な不正計算が見込まれる事案に対する調査

無申告のデメリット

個人事業主が無申告であると、課税証明書(所得証明書)といった所得を証明できる公的書類を、市区町村から発行してもらうことができません。

また、前年から一定割合以上の収入が減ったとき、納付前であれば国民健康保険税の減免措置の申請をすることができますが、この手続きに確定申告書の写しなどが必要になりますので、無申告では申請できない可能性があります。

無申告の場合に税務調査が入る可能性はあるのか

無申告であっても、当然、税務調査の対象になります。

無申告者に対する税務調査

無申告者が税務調査の対象になった場合、無申告者は、税務申告をしていない非があることから立場が弱く、調査中は気が重くなることでしょう。

また、何年も無申告であれば、5年分(通常は3年分)の税務調査を受けることもあり、調査期間が多いほど嫌な時間も長くなります。

さらに、税務調査では反面調査として取引先への調査や家族への聞き取りなどを行うのですが、無申告者が相手であれば、この反面調査にも力が入ることが考えられるため、取引先や家族に迷惑をかけてしまうことになります。

無申告であることは税務署にばれている可能性が高い

令和元事務年度の所得税の無申告者に対する一般・特別調査の件数は、7,328 件でした。

なぜ無申告がばれるのかというと、まず税務署は、企業から提出を受ける支払調書など、お金の流れを把握できるさまざまな情報源を持っています。

他にも、取引相手など他の企業への税務調査で申告漏れがわかることもあります。必要があれば、法令上の権限で各種機関に照会し、税務署が持っていない情報を入手することも可能です。

たとえ今は大丈夫でも、税務署はまとめて5年分の調査をすることができますから、3~4年経ったころに突然調査の事前通知が行われることもあるので、油断はできません。

無申告の場合の税負担とペナルティ

無申告がばれてから対応しても手遅れ

無申告の主なペナルティは、無申告加算税と延滞税が発生することです。

特に無申告加算税は、税務署に無申告であることがばれてから対応しても手遅れになります。

無申告の罰則は税金が重くなる

無申告加算税の支払い

「期限後申告」(期限内は無申告で、期限後に申告すること)や「決定」(税務署が無申告者の納税額等を計算して決定すること)が行われると、本来の納税額に無申告加算税が上乗せされます。

無申告加算税の税率は、本来の納税額の15%(50万円を超える部分は20%)です。

たとえば、税務署から120万円の納税額の決定を受けたとき、無申告加算税は、21万5,000円になります。

(計算式)

・50万円までの部分…税率15%、50万円×15%=7万5,000円…①

・50万円を超える部分(120万円-50万円)…税率20%、(120万円-50万円)×20%=14万円…②

・①+②=21万5,000円

ただし、税務署の調査によって無申告がばれることを予知して行ったものでない自発的な期限後申告であれば、税率が下記のとおり軽減されます。

申告期限の時期税率
法定申告期限等の翌日から調査通知前まで5%
調査通知以後、決定の予知がある前10%(15%)
調査による予定の予知があった後15%(20%)
( )は、期限後申告や決定による納税額のうち、50万円を超える部分の税率

決定の予知(税務署の調査によって無申告がばれることを予見すること)があったかどうかは、担当職員とのやりとりなどによって個別に判断されます。

無申告加算税がかからない場合もある 

期限後申告をしても、法定申告期限から1ヶ月を経過する日までに行われた期限後申告で、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合にあてはまれば、無申告加算税は不適用となり、発生しません。

一定の場合とは、下記の両方に該当する場合のことです。

・税額の全額を、期限後申告の納期限(=申告書の提出日)までに納付していること

・期限後申告を提出した日の前日から過去5年の間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、無申告加算税の不適用も受けていないこと

延滞税の支払い

延滞税とは、納期限に遅れた日数に対して発生する利息のような性質の税金です。

【延滞税の計算方法】

納税額×延滞税の割合×遅れた日数/365日

「納税額」…本来の納税額で、加算税を含まない額のことです。1万円未満の端数を切り捨てるため、納税額が1万円未満であれば、延滞税は発生しません。

「延滞税の割合」…銀行の貸付金利を参考に見直されるため、延滞している期間に適用される割合を確認しなければなりません。

(参考)令和3年1月1日~令和3年12月31日の延滞税の割合

・納期限の翌日から2ヶ月経過日まで…年2.5%

・2ヶ月を経過した日以後…年8.8%

上記のとおり、延滞税の割合は納期限の翌日から2ヶ月を経過すると大きく上昇します。

納期限とは、期限内に申告したときは法定納期限(原則、翌年3月15日)ですが、期限後申告や決定があったときは、下記の日が納期限になります。

・期限後申告…申告書を提出した日

・決定…更正通知書を発した日から1ヶ月後の日

期限後申告のペナルティ

65万円の青色申告特別控除が使えなくなる

青色申告特別控除65万円(令和2年分から55万円)は、青色申告決算書を添付した確定申告書を、法定申告期限内に提出しなければ適用できません(10万円の控除は期限後申告でも可能)

青色申告の承認取消しに繋がる可能性も

期限後申告をして、ただちに青色申告の取り消しになることはありません。

しかし、期限後申告をしてしまうことには、さまざまな原因が考えられます。

たとえば、青色申告の要件を満たす帳簿書類の保存ができていないのであれば、それが原因で、青色申告の承認取消になる可能性があります。

他にも、無申告で税務調査を受けた人が、次のいずれかにあてはまる場合、承認取消しになる可能性があります。

・税務署から決定を受け、その後、隠ぺいや仮装など不正があったことがわかった場合、その不正にかかる所得が500万円以上あって、それが決定における所得の50%を超えるとき

・帳簿書類の記載状況等から、推計課税の適用がなければ所得の計算ができない状況にあるとき

推計課税とは、税金を計算できる関係書類が適切に保管されていない場合、税務署が、合理的な基準(例:資産の増減など)を定めて所得を推定・税額を計算し、課税することをいいます。青色申告には適用されません。

融資に悪影響を及ぼす可能性がある

税務申告を期限内にできていない経営者は、法律を守らなくてもいいと考えている遵法精神に欠ける人、期限に間に合わせることができない無計画な人、スタッフに突然辞められた管理能力の低い人など、悪い印象を抱かれる可能性があります。

特に融資を申し込むときは、担当者に確定申告書のコピーなどを提出するため、期限後申告をしたことがわかってしまい、心証が悪くなる可能性があるといえます。

無申告で今から申請する場合の注意点

確定申告の申告期限を忘れていた場合

期限後申告であっても、早く申告するほど無申告加算税などを最小限に抑えることができますし、要件を満たせば、課税されないこともあります。

気がついたら、なるべく早く自主的に申告をすることが得策です。

申告漏れがないようにする

いくら早いほど良いといっても、慌てて申告して申告漏れがあると今度はそれについて修正申告をする羽目になります。

修正申告をすると不足税額に対して、過少申告加算税や延滞税がかかる可能性がありますので、申告漏れのないようにする必要があります。

申告する期間の書類をそろえる

正しい申告を行うには、記帳の根拠となる書類(領収書や請求書、契約書、納品書など)が必要です。

もし紛失してしまった書類がある場合、先方に依頼して再発行を受けるなどしてリカバリーすることになります。

書類がなくても記帳や申告ができないわけではありませんが、中には、青色申告の承認、消費税の仕入控除税額の計上、電子帳簿保存など、特定の書類の保存が税法上義務付けられているものがありますので、基本的には再収集します。

虚偽申告を疑われないようにする

虚偽申告などの疑いをもたれないように努めることも大切です。

方法としては、税理士の書面添付制度の活用があります。

書面添付制度とは、税理士が申告内容について確認した事項などを記載した書面を添付して、税務署に提出する制度のことです。

すると税務署は、税務調査の通知前に税理士に意見を聴取することになり、その聴取によって問題点が解決すれば実地調査が省略される可能性もあります。

書面添付については、税理士にご相談ください。(すべての税理士が対応しているわけではありません)

まとめ

所得税の無申告には、加算税などのリスクや、所得の公的証明が取得できない、65万円の青色申告特別控除が受けられないなど多くのデメリットがあります。

軽い気持ちで無申告のままでいる方は、早めに税理士にご相談ください。

なお、この記事では所得税の無申告について解説しましたが、加算税や延滞税といったペナルティは、法人税や消費税などでも発生します。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。