インボイス制度とは国が認めた請求書を交付する制度
「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)とは、2023年10月から導入される仕入税額控除の方式です。
名前のとおり、「適格請求書」を保存することで、課税事業者は仕入税額控除を行うことができます。
- 年間の仕入高:2,160円(消費税額160円)
- 年間の売上高:3,240円(消費税額240円)
受け取った消費税240円から支払った消費税160円を控除した、差額の80円を納めるイメージになります。
「仕入税額控除」とは、この160円の税額を控除することです。
(実際の計算はもう少し複雑ですが、今日の話ではこの認識で差し支えありません。)
消費税バージョンの経費として捉えると、わかりやすいと思います。
インボイス(適格請求書)とは
インボイス制度にもとづいて発行される請求書等を、「適格請求書」といいます。
適格発行事業者になった場合、相手から適格請求書の発行を求められたとき、交付する義務が生じます。
3万円未満の交通機関の代金、3万円未満の自動販売機の代金など、一定の取引については、交付義務が免除されます。
インボイス制度における課税事業者と免税事業者
消費税の課税事業者になると、商売をして受け取った消費税から、支払った消費税を控除した額を納税することになります。
インボイス制度では、税務署の登録を受けた「適格請求書発行事業者」しか「適格請求書」を発行できません。
登録できるのは課税事業者に限られ、免税事業者が登録を受ける場合は、課税事業者になる必要があります。
区分請求書等保存方式との違い
次に「区分記載請求書等保存方式」との相違を簡単に見てみましょう。
区分記載請求書 (2019年10月~) | → | 適格請求書 (2023年10月~) |
作成者の氏名又は名称 | → | ・作成者の氏名又は名称 ・適格請求書発行事業者の登録番号 |
年月日 | → | 変更なし |
取引の内容 (現行の内容に、軽減税率(8%)対象のものがある場合 それが軽減税率の対象であることを加えたもの) | → | 変更なし |
対価の額 (税率ごとに合計した対価の額(税込)) | → | 対価の額 (税率ごとに合計した対価の額(税抜きor税込み)及び適用税率) |
ー | → | 消費税額等 |
交付する相手の氏名又は名称 | → | 変更なし |
消費税額を別に記載する点がポイントです。
合計 5,460円
内消費税 460円
(10%対象 3,000円 消費税300円)
( 8%対象 2,000円 消費税160円)
インボイス制度導入による課税事業者への影響
インボイス制度導入による課税事業者への影響について説明します。
現行制度:免税事業者との取引でも仕入税額控除ができる
現行制度では、課税事業者は、どの事業者に代金を支払っても、基本的にはその税額を「仕入税額控除」に計上できます。
「仕入税額控除」の要件の1つに、「請求書等の保存」というものがあるのですが、現行の制度では、この請求書等は、免税事業者でも課税事業者でも関係なく発行できるからです。
インボイス制度導入後:適格請求書等がないと仕入税額控除できない
インボイス制度では、課税事業者しかゲットできない「登録番号」などが書かれた「適格請求書等」しか、仕入税額控除の対象になりません。(ただし一部の取引では、請求書の保存そのものを必要としない場合があります。)
つまり、免税事業者に代金を支払っても、課税事業者は、その代金から仕入税額控除を行えなくなります。
そうすると、課税事業者にとって、全く同じ内容で代金を支払うなら「適格請求書等」を発行できる相手(=登録番号をゲットした課税事業者)から購入した方が、税金が安くなるという状況になってしまいます・・・。
インボイス制度の導入後しばらくは経過措置がある
ただし、免税事業者に支払った代金が、すぐに仕入税額控除の対象外となってしまうわけではありません。
インボイス制度の開始後6年間は、免税事業者との取引きした金額の一部を、仕入税額控除にできる経過措置が設けられる予定です。
2023年10月~2026年9月30日まで | 仕入税額の80% |
2026年10月~2029年9月30日まで | 仕入税額の50% |
この経過措置を受けるには、課税事業者は「区分請求書等(※)と同様の事項が記載された請求書等を保管すること」が必要になります。
インボイス制度導入による免税事業者への影響
次にインボイス制度導入による免税事業者への影響について説明します。
影響1:仕入税額控除ができないため取引を中止されるおそれがある
前述した通り、免税事業者は「登録番号」などが書かれた「適格請求書等」を発行できないため、仕入税額控除を行いたい課税事業者から取引を中止したいと考えられてしまうおそれがあります。
影響2:売上規模を察知されるおそれがある
インボイス制度では、課税事業者はよほど特別な理由がない限り、「適格請求書発行事業者」に登録すると考えられます。
そうすると、制度の開始後、インボイスを発行できなければ、その発行事業者は免税事業者なのだろう(=課税売上高が1,000万円に満たない事業者なのだろう)と、たった1枚の請求書等を受け取った相手から察知されることになります。
課税事業者になりインボイスを発行すれば、こうした状況から売上規模を察知されることはなくなると考えられます。
簡易インボイス(適格簡易請求書)とは
簡易インボイスとは、インボイスの記載事項を簡素化したものです。
不特定多数の者に対して販売やサービス提供を行う事業者が発行できます。
小売業・飲食店業・写真業・旅行業・タクシー業・駐車場業などが当てはまります。
簡易インボイスの記載要件
以下の5項目が記載されていれば簡易インボイスとして発行が可能です。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)
- 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
国税庁 適格請求書等保存方式の概要https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0020006-027.pdf
インボイス制度の発行には登録が必要
登録申請手続きの流れ
令和3年10月から、適格請求書発行事業者に登録するための申請の受付が始まりました。
令和5年10月1日から適格請求書を発行するには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を、原則、令和5年3月31日までに提出する必要があります。
「適格請求書発行事業者の登録申請書」は、国税庁のホームページから入手できます。
2枚あるので、作成漏れのないよう注意してください。

この2枚は令和5年9月30日までの申請に使用するための様式となっております。
登録申請書の記載事項
登録申請書の書き方の手順や、申請書に記載する内容については下記のページで解説しています。
ぜひチェックしてみてください。
今回は、「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)について分かりやすく解説していきます。