よくある仮想通貨の税金が払えないケース
仮想通貨が暴落した場合
仮想通貨の暴落によって、税金が払えないことがあります。
たとえば、10月に利確して、500万円の儲けを得たとしましょう。
その後、値下りしたので、「今度はもっと大きく儲けよう」と思い、前回の利確分を含む800万円で、仮想通貨を新たに購入したとします。
ところが、12月にその仮想通貨が暴落し、損切りできないまま、あっという間に12月31日を過ぎてしまったとします。
この場合、10月に利確した500万円の所得が、その年の所得税や住民税の課税対象になります。
しかし、追加投資をしてしまったことによって、手持ちの現金はありません。
年明けに納税のために売却しようとしても、暴落から回復していなければ、納税額に足りず、税金が払えない可能性があります。
不正アクセスによる盗難被害
交換所を狙った盗難被害に巻き込まれ、仮想通貨の税金が払えない場合も考えられます。
日本においても、Mt.Goxの事件などがありました。
盗難被害によって財産を失った人には、「雑損控除」といって、損害金額分の所得控除を確定申告により適用できますが、制度上、全額ではありません。
法人の含み益が課税の対象
法人の場合、仮想通貨を保有したまま決算日を迎えると、その仮想通貨を決算日の時価で評価し、差額の評価損益を認識しなければなりません。
決算日に、仮想通貨の含み益が膨らんでいれば、帳簿との差額が法人の利益になりますので、その分、法人税等の負担が増えてしまいます。
税金に関する知識不足
仮想通貨の税金に関する知識不足によって、税金が払えないケースもあります。
たとえば、仮想通貨は、売却したときだけでなく、別の銘柄と交換したときや、支払いに使ったときにも利益が発生します。
現金を受け取っていない(円に換算していない)のに、税金が発生する場合があるということです。
これを知らず、本来よりも少ない額で確定申告をしてしまうと、後の税務調査で申告漏れを指摘される可能性があります。
その場合、不足している税金の支払いに加えて、遅れた分のペナルティ(次項参照)を支払わなければなりません。
これら追加の税金は、当時の仮想通貨で得た利益が残っているかどうかは関係なく計算されます。
仮想通貨の税金が払えなった場合のペナルティ
仮想通貨の税金が払えない間、延滞税や加算税といった”余計な税金”が少しずつ発生します。
詳しくはこちらでも解説しています。
延滞税
法定納期限に遅れた分の日数に対して発生する税金です。
過少申告加算税
確定申告はしたものの、所得を少なく申告していることが発覚した場合に、本税に加算される税金です。
無申告加算税
納税額があるのに確定申告をしなかった人や、申告期限を過ぎて行った確定申告に不足税額がある場合に、本税に加算される税金です。
【対処法】仮想通貨の税金が払えない場合は納期限の延長を利用する
仮想通貨の税金が納期限までに払えない場合は、下記のような制度で、納期限を延長することができます。
振替納税
個人であれば、振替納税によって1か月ほど、納税期限を延滞税なしで遅らせることができます。
本来、個人の所得税は、翌年3月15日が納期限ですが、振替納税を利用すると4月中~下旬ころに確定申告した税額が指定口座から引き落とされます。
つまり、3月15日に税金を用意できなくても、引き落とし日までに、指定口座内に預金を用意できれば、税金を支払うことができます。
引き落とし日は、毎年、国税庁のWebサイトで発表されますので、正確に把握することが可能です。
納期限までに、税務署や金融機関に「口座振替依頼書」を提出する必要があります。
開始時のみ手続きをすれば、以降は毎年継続されます。
「口座振替依頼書」は、書面で提出するほか、e-Taxによるオンライン提出もできます。
(参考)国税庁:振替依頼書及びダイレクト納付利用届出書(個人)のオンライン提出について
- 申告期限までに確定申告をする必要があります。
- 法人税には使えません
延納
延納とは、納期限までに税金の2分の1以上を納付すれば、残りの税金の納期限を、5月31日まで延長できる制度です。
前項の振替納税を適用していれば、ここでいう納期限は、振替納税の日になります。
ただし、延納している期間中は利子税という税金が別途発生しますので、まずは振替納税で対応できないかよく検討しましょう。
確定申告時に届け出が必要です。
確定申告書の第一表右下の「延納の届出」の欄に、「申告期限までに納付する金額」(=2分の1以上の額)と「延納届出額」(=5月31日までに納税する残額)を記載する必要があります。
- 利子税がかかります。利子税の税率は、延納を利用する年ごとに確認が必要です。
- 法人税には使えません。
納税の猶予
災害などによって財産に相当な損失を受けた場合や、災害や盗難、自身や家族に病気やケガが発生するなどして、税金を一括で払えない場合、原則1年間、納税の猶予が認められる可能性があります。
猶予期間中、延滞税はかかりますが、その税率が軽減されます。
国税に共通する制度ですので、法人税にも使えます。
原則、災害などがやんだ日から2ヶ月以内に、税務署に申請する必要があります。
(参考)災害、盗難等により納付困難となったときの納税の猶予の申請手続
上記よりも有利な条件で猶予を受けられる可能性があります。
こちらも参考にして下さい。
(参考)国税庁:納付の猶予制度関係
換価の猶予
納期限までに払っていない税金のある人(滞納者)が、税金を一括で支払うことによって事業や生活の維持を困難にする可能性がある場合、原則1年間、納税の猶予(滞納処分による財産の換価の猶予)が認められる場合があります。
まとめ
仮想通貨の税金が払えないと悩んでいる間にも、延滞税は膨らみ続けています。
税金が払えないからといって申告をしなければ、後にそれが発覚した際、加算税もプラスされてしまいます。
税理士に相談し、早めに対処することが、もっともペナルティを低く抑える方法です。
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したのは仮想通貨ならではの落とし穴となります。
どんな取引においても先を見据える力は必要ですが、仮想通貨では特に慎重な判断・行動が必要不可欠です。
是非ご紹介しました危険性を意識しつつ、ご利用頂ければと思います。
ご不明点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
まいど!西新宿の税理士 中村です!
先月より続いておりました仮想通貨について、一旦区切りとなります。
先月は仮想通貨における【申告】に着目しておりましたが、今回は申告後、【納税】に着目してお話いたします。