出張旅費日当を活用する
出張のために支払った交通費や宿泊費などを、「実費」ではなく「日当」で支給する節税対策があります。
日当で支給した場合、全額が医療法人の経費になる上、受け取った個人側でも課税されません。
さらに医療法人が消費税の課税事業者であれば、課税仕入れにも該当します。(海外出張を除く)
実費支給した場合も同じ取扱いになりますが、日当で支給するほうが、実費よりも多くの額を支給できるため節税になりやすく、精算の手間も一般的には少ないでしょう。
社会通念上一般的な範囲の日当であり、かつ、出張旅費規程において支給対象を役員だけに限定しないことがポイントです。
MS法人を活用する
MS法人とは
MS(Medical Service)法人とは、医療法人の経営効率化のために、医療法人と密接にかかわる事業を行う法人(株式会社や合同会社など)のことです。
医療法人に制限されている収益業務を担う法人や、医療法人が使用する財産を管理するための法人として活用できます。
MS法人を活用した節税対策
医療法人からMS法人に対して不動産等の賃料や業務委託料を支払うことにより、医療法人の利益を圧縮し、医療法人の法人税等を節税することができます。
また、MS法人に賃料等を支払って医療法人の利益を分散させれば、持分あり医療法人における事業承継時の節税対策にもなります。
節税対策としてMS法人を活用する際は、医療法人・MS法人の法人税等や事業承継などに伴う贈与税・相続税を合わせてシミュレーションすることが大切です。
定期同額の役員報酬を活用する
毎月同額(定期同額)で支払う役員報酬であれば、全額を医療法人の経費にすることができます。
社員総会等によって支給額を決議してから1年間、毎月同額を支給する方法ですので、利益予測や資金繰りの見通しを立てることが重要になります。
事前確定届出給与を活用する
役員賞与についても「事前確定届出給与」に該当する方法で支給することにより、全額を経費にすることができます。
ポイントは、
- 期限内に税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出すること
- 届出書の内容どおりの日付や金額で実際に支給すること
です。
賞与の社会保険料を計算する「標準賞与額」の上限(健康保険:年573万円、厚生年金保険:月150万円)を意識し、月額の役員報酬を低めに、役員賞与をその分高めに設定することで、社会保険料の負担を抑えられる場合があります。
事前確定届出給与はいつまでに提出する?
下記の日のいずれか早い日までに届出書を提出する必要があります。
- 社員総会等による支給額の決議日から1か月を経過する日まで
- 事業年度開始日から4か月を経過する日まで
親族への役員給与
個人のクリニックの場合、親族に対する給与を経費にするためには、その親族が事業専従者であることが条件です。
しかし、医療法人であればこの条件を満たす必要はありません。
事業専従者に該当しない親族(例:他院にも勤めている親族など)に支払った役員報酬や従業員としての給与であっても、医療法人の経費にすることができます。(役員報酬は「定期同額」で支給する必要があります。)
生命保険の活用
法人で生命保険に加入すると、保険の内容によって保険料の全部または一部を法人の経費にすることができます。
たとえば、被保険者を役員や従業員とする養老保険の場合、死亡保険金の受取人を遺族、生存保険金の受取人を法人にすることで、支払った保険料の2分の1を経費とすることができます。
残りの2分の1は資産計上し、遺族が死亡保険金を受け取った際に経費にするか、法人が満期保険金を受け取った際に雑収入と相殺することができます。
1年以内の費用の前払いを検討する
当期の費用に計上できる範囲は、原則、年度内に提供を受けた商品やサービスの代金までです。
しかし、1年以内に提供を受ける商品やサービスの代金を当期に前払いした場合、法人税の特例によって、翌事業年度に対応する分も当期の経費にできる特例があります(短期前払費用の特例)。
例えば、年契約の家賃や保守料などを月額で支払う場合に活用することが考えられます。
- 3月決算法人で、令和4年10月に1年分(令和4年10月分~令和5年9月分)の保守料を支払った場合
会計上の原則 | 短期前払費用の特例 | |
当期の経費 | R4.10月分~R5.3月分 (6か月分) | R4.10月分~R5.9月分 (12か月分) |
翌期の経費 | R5.4月分~R5.9月分 (6か月分) | ー |
短期前払費用の特例は、継続適用が必要になります。
したがって、適用を開始した初年度の節税効果が期待できます。
確定拠出型年金・確定給付企業年金を活用する
確定拠出型年金(企業型DC)、確定給付企業年金(DB)、中小企業退職金共済(中退共)の掛け金は、法人の経費にすることができます。
こうした制度を活用すれば、役員や従業員の将来の年金・退職金を準備しながら、医療法人の節税対策になります。
まとめ
医療法人におすすめの一般的な節税対策を解説しました。
医療法人の節税対策は、医療法の規制と税法の知識に基づき、法人税の節税と事業承継・相続対策を併せて考えることが重要です。
ご自身の医療法人にもっとも合う節税対策を、税理士と計画的に進めましょう。
いかがでしたか?
医療法人における節税では医療法の規制と税法の知識が必要不可欠です。
少しでも不安な点、不明な点がありましたら、税理士にご相談下さい。
まいど!西新宿の税理士 中村です!
本日は【医療法人】にフォーカスを当てていきます!
医療法人ならではの節税方法もござますので、是非ご一読ください。