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役員貸付金とは?税務調査で狙われるポイントと4つの対策

税理士 中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

この記事をご覧になられる方は、きっと会社の貸借対照表に「役員貸付金」を計上しているか、これから「役員貸付金」での処理を検討している方だと思います。

役員貸付金は税務調査において、特に確認されやすい勘定科目の一つです。

計上すること自体に問題はありませんが、放置すると税務調査で追徴課税につながるリスクがあります。

今回は、役員貸付金について、税務調査でチェックされやすいポイントや安全に運用するための具体策をわかりやすく解説します。

役員貸付金とは

「役員貸付金」とは会社が役員に貸しているお金を指します。

役員が会社から金銭を受け取る方法には役員報酬や役員賞与がありますが、それ以外にも、「役員貸付金」として「会社から借りる」形で受け取ることができるのです。

たとえば、役員が会社から10万円を借りた場合には次のような仕訳を行います。

役員貸付金 10万円 / 現金など 10万円

このように帳簿上の処理もかんたんであり、かつ、役員給与のような定期同額の制限もないため、深く考えずに利用しているケースもあるのではないでしょうか。

また、役員貸付金は損益に影響せず消費税の課税取引にも該当しないことから、税務上のリスクをイメージしにくい面もあります。

しかし、これが落とし穴なのです。

「役員貸付金」を計上して放置したまま税務調査に入られると、思わぬ指摘を受けることがあります。

役員貸付金による税務調査での2つのリスク

役員貸付金による税務リスクは主に2種類あります。

それぞれどのようなリスクなのか、わかりやすく解説します。

役員貸付金が“役員賞与”となるリスク

役員貸付金を放置した状況で税務調査に入られると、次のような指摘を受ける可能性があります。

「この役員貸付金は、ずっと返済されていないですよね。

実は貸付けではなく、役員の立場で会社から金銭を受領した(=役員賞与だった)のではないですか?」

このように役員貸付金としての取り扱いを否認され、役員賞与であると判断された場合、その金額に対して、法人は源泉所得税を、役員個人は所得税等をそれぞれ納税していないこととなります。

この場合、それぞれ不足分の税額と、それに応じた加算税、さらに納付が遅れた日数に対して発生する延滞税を納めるペナルティを受けることとなります。

利息不足分が給与となるリスク

役員貸付金の否認に至らなかったとしても、役員から会社に適正な利息が支払われていない場合は要注意です。

役員貸付金の金額に応じた適正な利息が支払われていない場合、税務調査では「役員個人が会社に本来支払うべき利息を免除してもらった(=経済的な利益を会社から受けた)」と判断し、利息の不足額を給与課税の対象とされる可能性があります。

税務署から給与課税されないための適正な利息とは、以下の利率で計算した金額になります。

(1)会社が他から借り入れて金銭を貸し付けた場合:その借入金の利率

(2)上記以外の場合:貸付けを行った年に応じた以下の利率

貸付けを行った年利率
平成22年~平成25年4.3%
平成26年1.9%
平成27年~平成28年1.8%
平成29年1.7%
平成30年~令和2年1.6%
令和3年1.0%
令和4年~令和7年0.9%

(参考)国税庁|金銭を貸し付けたとき

上記の利率よりも少ない利息しか支払っていない場合はその差額が、利息をまったく支払っていない場合は上記の利息の全額が、給与課税の対象となります。

なお、上記の利率で計算した利息額が年5,000円以下である場合や、災害や病気などのやむを得ない事情で生活資金が必要となったことによる貸付けである場合は、利息の不足に対する給与課税は行われません。

また、上記の利率でなくとも、会社で独自に定めた合理的な利率(たとえば、その会社における借入金の平均調達金利など)で利息を徴収していれば、それも適正な利息として認められます。

税理士 中村太郎

低利息や無利息が問題となる場合、給与課税の対象になるのは利息の不足分となります。

一方で、最初に説明した「役員貸付金」そのものが否認されて役員賞与とされると、貸付金の「元本」の部分が給与課税の対象となりますので、追徴税額はより大きくなります。

そのため「役員貸付金」を否認されないよう、しっかり対策する必要があります!

役員貸付金について税務調査でチェックされるポイント

それでは役員貸付金について、税務調査ではどういった点を見られるのでしょうか。

ここでは税務調査の視点を解説します。

金額が多額である

役員貸付金の残高が多額である会社は、少額である会社よりも税務調査で役員貸付金の否認を狙われやすいといえます。

これは単純に、役員貸付金の金額が大きいほど、税務調査で役員賞与となった場合の追徴税額が大きくなるためです。

金銭の貸借と呼べる実態がない

役員貸付金の返済状況や利息の支払い状況も、税務調査での重要なチェックポイントです。

「貸付金について返済が行われていない」、「利息の支払いさえ行われていない」といった場合、役員貸付金ではなく、役員賞与と判断される可能性が高まります。

税務署は、貸借対照表や勘定科目内訳書(貸付金及び受取利息の内訳書)といった書類により、役員貸付金の残高の推移や利息の状況をある程度まで把握しています。

したがって、それを踏まえた対策が必要となります。

貸借契約の存在を証明できる書類がない

役員に金銭の貸付けが行われたと客観的に証明できるかどうかもポイントです。

通常、会社が他者に金銭を貸し付ける場合、金銭消費貸借契約書を交わして利率や返済条件を明確にし、これらの書類を保管することとなります。

もし、役員貸付金に限ってこうした書類がなく、返済の取り決めも曖昧であれば、税務調査において「そもそも返済する意思がなかったのではないか」と追及される材料となってしまいます。

現金支出が頻繁にある

「役員貸付金として処理すると問題になるなら、いっそのこと“雑費”などの費用科目で引き出したほうがよいのでは」と考えてしまいそうになりますが、これは絶対に避けなければなりません。

そもそも、税務署はこうした可能性も想定して調査に臨んでいます。

もしこのような不正な処理を続ければ、目的がよくわからない現金支出が増えるなど、何らかの痕跡が残ります。

こうした痕跡が見られる会社に対しては、役員の私的流用を費用として付け替えた偽装工作の疑いも視野に入れ、より厳しい目で調査が行われるでしょう。

それにより、不明な取引が発覚したり、そこに仮装や隠蔽工作があったと判断された場合、「使途不明金」とされたり「重加算税」という極めて重いペナルティの対象になったりします。

安易な費用処理は絶対に行ってはなりません。

役員貸付金には税務調査以外のリスクもある

役員貸付金を放置している場合、経営者の信頼性にも影響を及ぼします。

たとえば金融機関に融資を申し込む際、役員貸付金の残高が多く、返済の実態がまったく見られない場合、厳しい目で審査されるでしょう。

「役員が会社のお金を持ち出しても、それを止める人がいない会社なのではないか」

「融資を実行しても、事業にきちんと使ってくれるかどうかわからないな」

こうした悪印象を与えてしまい、融資判断で不利になったり、融資を受けられたとしても条件が悪くなったりする可能性があります。

このように税務以外の視点からも、役員貸付金は「金銭貸借」とはっきりわかるよう管理しなければなりません。

役員貸付金の税務調査における具体的な4つの対策

適正な利息を会社に支払う

それでは、役員貸付金を計上している会社が税務調査に備えるための4つの対策を解説します。

役員貸付金に対し、適正な利息を設定してその利息を会社に支払うようにします。

前述のとおり、無利息や不当に低い利率で貸し付けてしまうと、通常設定されるべき利息との差額が役員への給与とみなされてしまいます。

適正な利息の額は、前述の国税庁の利率や会社の平均調達金利などを使用し、合理的な基準で計算するようにしましょう。

契約書・償還表を作成する

役員に貸付けを行う際には、貸付金額、返済方法、返済期間、利率といった条件を明記した「金銭消費貸借契約書」を作成しておきましょう。

会社と役員の間で「貸付けとして合意がある」ことの客観的な裏付けとなるためです。

あわせて、返済スケジュールを明確にする償還表(返済予定表)を作成しておくことも効果的です。

具体的な返済計画が存在し、それに沿って返済が進んでいれば、役員貸付金が賞与ではなく、あくまで貸付取引であることを示す有力な手段になります。

役員貸付金の額を減らす

すでに役員貸付金の残高が膨らんでいる場合は、その残高を計画的に減らしていくことも始めましょう。

残高が多額であるほど、税務調査で狙われる可能性が高まるためです。

役員貸付金を減らす方法としては、役員報酬の中から返済する方法の他にも、役員が保有する資産を会社に譲渡し、その代金で貸付金を返済したり、退職時期であれば役員退職金と相殺したりする方法などがあります。

ただし、譲渡益への課税や退職金の適正額の判断など、検討すべき点が多いことには注意する必要があります。

多額の役員貸付金を解消するには、税理士に相談し、会社と役員の状況に応じた最善策を考えることが不可欠となります。

税務調査に強い税理士に相談する

役員貸付金の金額が膨らんでいたり、返済や利息の扱いが曖昧になっていたりする状態が続いている会社では、会社のみで最善策を判断することが難しいかもしれません。

こうした状況にある場合は、顧問税理士や税務調査に精通した税理士に早めに相談することが最善の対応となります。

税理士 中村太郎

当事務所は、税務調査対応やセカンドオピニオンとしてのご相談など、経営者の皆さまのお力になれるよう全力でサポートしております。

会社の今のご不安を、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

本記事では、役員貸付金のリスクや税務調査で確認されやすいポイント、税務調査に向けた具体的な対策などを解説しました。

有事の際には使い勝手の良い役員貸付金ですが、必要な管理を怠ると、かえって多大な手間を要するものになってしまうことにご注意ください。

税理士 中村太郎

いかがでしたでしょうか。

役員貸付金は、「少額だから大丈夫」「そのうち返せばいい」と油断しているうちに残高が膨らみ、税務調査で想定外の追徴課税を受けてしまうことがあります。

もし会社の状況に少しでも気がかりな点があれば、どうぞお早めにご相談ください。

経営者の皆さまが安心して事業に専念できるよう、当事務所が全力でサポートいたします。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。