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医療法人設立の流れや設立するための要件、困難な点について解説

税理士 中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

今回は【医療法人設立の流れや設立するための要件等】について。

医療法人を設立することには、節税、事業拡大、円滑な事業承継といった、医師やそのご家族などにとってさまざまなメリットがあります。

その一方で、医療法人を設立するための要件や手続きには細かなルールがあります。

今回は、医療法人を設立するために必要な準備や手続きの流れを解説します。

是非ご一読ください!

医療法人を設立するには

医療法人は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県の認可を受けなければ、設立することができません。

この認可を受けるには、都道府県が決めたスケジュールにしたがって申請書類を提出し、審査を受ける必要があります。

この審査では、設立しようとしている医療法人が、法に定められた医療法人としての要件を満たしているかどうかをチェックされます。

審査が終了し、認可書が交付されることで、医療法人設立の登記ができるようになります。この登記を完了させることで、ようやく医療法人が誕生します。

医療法人設立の要件とは

医療法人を設立するには、個人開業では求められなかった要件を満たさなければなりません。その要件は、「人事・財産・施設・予算」の4つに大別されます。

人事関係の要件

医療法人には、社員総会や理事会などの機関を設置することによる内部統制が求められます。

そのため、次の役職を、定められた最低人数以上で確保しなければなりません。

  • 設立者(社員):3名以上
  • 理事:3名以上
  • 理事長:1名以上
  • 監事:1名以上

医療法人を設立するには、上記の役職に必要な人員を確保し、それを示す書類を提出することが求められます。

設立者・社員とは

医療法人を設立するには、1名以上の医師を含む3名以上の「設立者」が必要です。

「設立者」は、後に医療法人の「社員」となります。

ここでいう「社員」のことではなく、医療法人の重要な事項の意思決定を1人1票の方式で行う「社員総会」の構成員を指します。

税理士 中村太郎

理事長であっても、社員の過半数の賛成によりその地位を失うことがあります。

個人開業では生じなかったリスクの一つであり、社員の選定、医療法人の安定した運営において非常に重要です。

当事務所では、院長のご意向を伺いながら、最適な医療法人の設立をご提案いたします。

理事・理事長とは

「理事」とは、社員総会により選任される医療法人の役員のことです。

法人の日々の業務を執行する役割を担います。

診療所の管理者(一般的に「院長」)は、理事に就任しなければなりません。

その他の理事は、社員が就任することもあれば、それ以外の者が就任することも可能です。

理事には医師以外の者も就任できますが、理事の代表である「理事長」については、医師である理事の中から選出する必要があります。

監事とは

「監事」は、医療法人の業務を監査する役員であり、役員や従業員ではない、独立した立場の者を選任しなければなりません。

財産関係の要件

財産関係の要件では、医療法人として安定した医療サービスを地域に提供するために、必要な医療設備や備品に加え、「2か月分以上」に相当する運転資金の調達が求められます。

2か月分以上とされる理由は、医療法人の設立後2か月は、保険診療報酬が振り込まれないからです。

医療法人の財産の調達方法としては、院長などの個人が所有する施設や設備を医療法人に拠出する方法や、「基金制度」を採用し、個人と医療法人の間で基金拠出契約を締結して金銭等を拠出する方法があります。

また、設立しようとしている医療法人に負債を引き継ぐ場合は、その準備も必要です。

金融機関からの借入金や、リース会社とのリース契約を個人から医療法人に引き継ぐ場合、金融機関やリース会社の承諾を得た上で、設立申請時に専用様式の承諾書を提出する必要があります。

税理士 中村太郎

医療法人に現物の財産を拠出する際、総額が500万円を超える場合は、その価額が適正であることを税理士などが証明し、その証明書を申請書類に添付する必要があります。

当事務所では、こうした書類の準備を含め、医療法人の設立に必要な作業を幅広くご支援しております。お気軽にご相談ください。

予算関係の要件

医療法人を設立するには、2年分の事業計画書や予算書などの書類の作成が必要です。初年度が6か月未満の場合は3年分が必要になります。

財産の要件で確認した「2か月分の運転資金」など他の書類と整合性をもたせなければならない書類もあり、作成に時間を要するため、早めの準備が求められます。

医療法人設立の流れ

それでは、医療法人を設立するための流れは、下図のようになります。

ここからは、一つずつの流れを詳しく確認して行きます。

医療法人設立のための申請スケジュールを確認する

医療法人を設立するには、所定の書類を都道府県の担当窓口に提出する必要があります。

まず、仮申請の提出期限が設けられています。

仮申請の期限は、通常、年度ごとに2回設けられており、具体的な日程は都道府県によって異なります。都道府県によっては受付期間が数日しか設けられていないため、早めに期限を確認しましょう。

仮申請は、自治体によって「仮受付」や「仮提出」と呼ばれる場合もあります。

定款案を作成する

「定款(ていかん)」とは、法人の組織や運営に関する事項を定めた文書であり、法人設立時に作成が必要となるものです。医療法人を設立するには、設立者(後の社員)による「設立総会」を開催し、その承認を経て定款が正式に成立します。

それまでは、定款は「案」の状態です。

定款案に記載が必要な事項は、基本的に定型的な内容です。そのため、通常は都道府県が公開する「定款例(モデル定款)」を活用し、必要事項を補填する形で作成します。

なお、以下の内容は早めに検討しておくと、定款案の作成がスムーズに進みます。

  • 医療法人の名称
    例:医療法人社団○○ △△クリニックなど。都道府県名、市区町村名、周辺にある既存の法人と紛らわしい名称、誇大な名称は避ける必要があります。
  • 決算月と会計年度
    例:3月決算法人の場合、会計年度は4月1日から翌年3月31日となります。
  • 基金制度を採用するかどうか(上記の「財産関係の条件」参照)
税理士 中村太郎

定款は、「定款例(モデル定款)」をベースに作成することもできますが、例示された内容から柔軟な内容に変更できる箇所や、あえて定款で定めなくてよい部分もあるため、専門家に相談しながら作成することをおすすめします。

当事務所でも、医療法人設立をご支援する中で、院長のご意向を伺いながら、最適な定款作成を行っております。

設立総会を開催する

定款案の作成後に、設立総会を開催します。

設立総会では、主に以下の事項を決議します。

  • 社員の確認
  • 役員の選任
  • 設立代表者への今後の手続きの委任
  • 医療法人に拠出される財産の目録および負債の金額の確認
  • 定款案の承認 そして、決議内容を記載した「設立総会議事録」を作成します。

設立申請の必要書類を作成・収集する

医療法人設立の申請に必要な提出書類を準備します。

必要書類は、前述のとおり、人事・財産・施設・予算に関わるものです。

また、申請時には以下の書類も必要になります。

  • 医療法人設立申請書
  • 定款
  • 設立総会議事録

仮申請を行う

申請先の都道府県の担当窓口に、準備した必要書類を、仮申請の期限内に提出します。

「仮」とはいえ、必要となる申請書類一式をそろえて提出しなければなりません。

本申請を行う

担当部署による書類の審査や関係機関への照会を経て、その指示のもとで修正や差し替えなどを行った後、正式な書類提出を行います。

本申請後は、都道府県から医療審議会への諮問・答申を経て、設立認可書が交付されます。

法人設立登記書類の作成・申請を行う

設立認可書の交付を受けたら、その交付日や拠出金の払込みなど必要な手続きが終了した日から2週間以内に、必要書類を準備して法務局で「医療法人設立登記」を申請します。

医療法人の設立登記は、書類に不備がなければ1週間から10日ほどで完了します。

都道府県に登記届を提出する

医療法人の設立登記が完了したら、その登記事項証明書の交付を受けて、登記届を都道府県に提出します。

医療関係機関への手続きを行う

医療法人設立の登記が完了した後は、管轄の保健所、厚生局、医師会で必要な手続きを行います。

管轄の保健所では、主に診療所などの開設許可申請書、エックス線装置の設置届、個人医院の廃止届などを提出します。開設許可には1~2か月ほどかかります。

厚生局では、主に保健医療機関の指定申請を行います。こちらは2週間ほどかかります。

その他の行政機関への手続きを行う

金融機関、税務関係(税務署、都道府県税事務所、市町村)、ライフライン関係などの手続きを行います。

税務関係の手続きは、原則として医療法人の設立日から2ヵ月以内に行います。青色申告を行う場合は、税務署への青色申告の承認申請も忘れずに提出します。

医療法人の設立において困難な点

医療法人の設立において大変なことについて解説いたします。

設立するための要件や必要書類が複雑

前述のとおり、医療法人を設立するには、人事・財産・施設・予算に関する複雑な要件を満たし、それを証明する関係書類を提出する必要があります。

要件が複雑で、必要な書類を調べるだけでも大きな負担となります。

設立までのスケジュールがタイト

都道府県では、医療法人の設立を常時受け付けているわけではありません。

通常、年2回のペースで仮申請を受け付けており、自治体によっては受付期間が5営業日程度しか設けられていない場合もあります。

書類の準備が期限に間に合わなければ、医療法人の設立時期がどんどん遅れてしまいます。

書類が揃っていないと受け付けてもらえないことがある

仮申請は、仮とはいえ、提出書類に不足があったり記入漏れが多かったりすると、受理されない場合があります。

都道府県の認可を受けてもやることがたくさんある

都道府県の認可書が交付された後も、法務局での登記申請や、保健所・厚生局への各種手続きなど、多くの作業が必要です。

まとめ

医療法人の設立は、節税や事業承継、経営の安定化など多くのメリットがありますが、要件や必要書類が非常に複雑であり、厳格なスケジュール管理が求められます。

特に、人事・財産・施設・予算に関する要件を満たし、都道府県の申請期限に間に合わせることが重要です。

また、仮申請の段階でも必要書類が揃っていないと受理されないことがあるため、事前準備を徹底する必要があります。

さらに、設立認可を受けた後も、登記申請や各行政機関への届出、税務手続きなど、多くの手続きを適切に進める必要があります。

そのため、医療法人設立の経験が豊富な専門家に相談することが成功の鍵となります。

当事務所では、医療法人の設立から運営支援まで包括的にサポートしておりますので、ぜひご相談ください。

税理士 中村太郎

今回は医療法人設立の流れや設立するための要件等について解説しました。

医療法人化には大きな節税効果があります。

当事務所では、医療法人の節税対策に加え、院長やそのご家族の資産管理に関するアドバイスも行っており、多くのお客様からご好評をいただいています。

医療法人の設立については、ぜひ当事務所にご相談ください。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。