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医療法人の役員報酬の相場はいくら?金額を決めるポイントを解説

税理士 中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

医療法人の役員報酬は、金額の決め方や支給方法によって、法人の経営や税務に大きな影響を与えます。

今回は、医療法人の役員報酬の相場や金額を決めるポイント、税務上の規制について詳しく解説します。

是非ご一読ください!

医療法人の役員報酬とは

役員報酬とは、法人の役員に対して法人から支払われる報酬のことを指します。

つまり、医療法人の役員報酬とは、医療法人の役員である理事や監事に対して支払われる報酬のことです。

医療法人の役員報酬の手続き

医療法人の役員報酬は、定款または社員総会の決議によって決定されます。

社員総会で役員報酬の総額を決め、各役員の報酬については理事会の決議で決めることも可能です。

いずれの決議の際にも議事録を作成し、適正な手続きで報酬額を決めたことを後から確認できるようにしておきます。

医療法人の役員報酬の相場

医療法人の役員報酬の相場を二つ紹介いたします。

医療経済実態調査

医療法人の役員報酬の相場については、厚生労働省による「医療経済実態調査」が参考になります。

「医療経済実態調査」では、医療法人の損益状況が調査されており、医療法人の収益に占める「給与費」の平均的な割合について記述があります。

「給与費」には、役員報酬、従業員に支払う給与や賞与、退職金、さらに法定福利費(法人負担分の社会保険料)も含まれます。

この費用が収益の何割を占めるのかを把握することで、ご自身の医療法人から支払うことのできる役員報酬の相場をイメージしやすくなるでしょう。

令和5年度実施の調査結果によると、医療法人の収益に占める給与費の割合は約49.0%でした。

このことから、医療法人の役員報酬の平均相場は、「役員報酬を含む人件費全体で収益のおおむね半分」と考えることができます。

【参考:医療法人の損益状況】

・収益 1億9,061万円(医業収益1億8,485万円+介護収益576万円)

・費用 1億7,483万円(うち給与費9,330万円)

厚生労働省HP:第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)

https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/24_houkoku.html

賃金構造基本統計調査

「収益に対する割合だけでは、医療法人の役員報酬の相場を把握しにくい」と感じる場合もあるでしょう。

その場合は、「賃金構造基本統計調査」における医師の平均年収も参考になります。

「賃金構造基本統計調査」は、主に勤務医などの労働者を対象とした統計ですが、医療法人の役員である医師であれば、それを超える年収を目指すのが一般的な感覚でしょう。

令和5年度の調査結果をもとに医師の給与と賞与から、年収を算定したところ、労働者である医師の平均年収は1,267万円となりました。

※統計は6月の月給(所定内給与)と年間賞与の額のため6月の月給×12+年間賞与で計算しています。

以下、年齢階級別の平均年収を掲載します。

年齢階級別平均年収
全体1,267万円
~19歳
20~24歳457万円
25~29歳558万円
30~34歳794万円
35~39歳1,018万円
40~44歳1,340万円
45~49歳1,481万円
50~54歳1,712万円
55~59歳1,663万円
60~64歳1,698万円
65~69歳1,847万円
70歳~1,621万円

(参考) e-Stat「令和5年賃金構造基本統計調査」より独自に作成

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429&tclass1=000001213360

医療法人の役員報酬額を決める時のポイント

医療法人の役員報酬の金額について、法律による具体的な上限は特に設けられていません。

しかし、無制限に役員報酬を支払うと、医療法人の経営が成り立たなくなるだけでなく、役員報酬を支払うメリットも損なわれてしまいます。

そうならないために、医療法人の役員報酬の金額は、次の視点から決めることが重要です。

役員報酬による節税効果

医療法人の役員報酬は、一定の条件下で法人税の損金として経費に計上することができます。

さらに、支払いを受けた役員個人は「給与所得控除」を受けられるため、特に個人開業医が法人化して役員報酬を受け取る場合には節税効果を得やすいといえます。

ただし、法人と個人では、所得にかかる税率が異なります。

・法人税(中小法人の場合)

800万円以下…15.0%

800万円超分…23.2%

・所得税

5%~45%

所得税は累進課税であるため、役員報酬が高額になると個人側の税負担が重くなります。

そのため、税理士に相談しながら、節税効果の高い支給方法を検討することが大切です。

なお、医療法人には役員報酬を支給する以外の節税対策もあります。

こちらの記事を参考にしてください。

前年度の業績

前年度の業績に基づいて役員報酬額を考えることも重要です。

経営環境の変化により業績が伸びなかった場合は、役員報酬を下げて医療法人の財務基盤を守る判断も必要になります。

中長期の経営計画

医療法人を持続・成長させるには、将来の設備投資や人材採用育成のための資金を法人に残しておくことも重要です。

将来必要となる金額については、医療法人の中長期の経営計画を立てることで、安定した経営に必要なキャッシュを把握することができます。

個人の資金計画

個人の人生設計に基づいて必要な金額を算定し、役員報酬を決める方法もあります。

結婚や子育て、住宅の購入、教育資金など、ライフステージを考慮した個人の資金計画を立てることがおすすめです。

当事務所では、医療法人の税務や経営についてのご相談を承っております。

お気軽にご相談ください。

医療法人の役員報酬に対する規制

役員報酬は、その支給方法によって、法人の損金(経費)として認められなくなる場合があります。

そうならないために、役員報酬は「定期同額給与」や「事前確定届出給与」に該当する方法で支給することが重要です。

定期同額給与とは

「定期同額給与」とは、毎月同額の役員報酬を支払い続ける方法です。

この規制の趣旨は、役員報酬の金額を恣意的に変更できないようにすることにあります。

もし、自由なタイミングで報酬額を変更できる場合、決算前に法人の利益がゼロになるよう自分に報酬を支払って調整し、法人税をゼロにすることも可能になってしまうからです。

これを防ぐために、月々の役員報酬は「定期同額給与」として、決算後の定時社員総会などで決めた金額を、次の金額変更時まで毎月同額で支払う必要があります。

単純なルールのように思えますが、経営に無理のない範囲で役員報酬を決めなければならないことがポイントです。

そのためには、前年度の決算をもとに、当期の利益予測や資金繰りの見通しを立てるなど、財務会計の知識が求められます。

事前確定届出給与

「事前確定届出給与」とは、期限内に税務署に「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、届け出た日付と金額で実際に役員報酬を支給することにより、損金(経費)に計上する方法です。

定期同額給与とは異なり、事前確定届出給与は「毎月」である必要がありません。

そのため、役員賞与(ボーナス)などに活用されています。

医療法人の役員報酬は変更できる?

定期同額給与である役員報酬は、事業年度の開始から3か月以内であれば、金額の変更が認められます。

この期間内に役員報酬を変更すれば、変更前後の全額が法人の損金(経費)となります。

そのため、定時社員総会などのタイミングで毎年金額を変更することも可能です。

それ以外のタイミングで事業年度の途中に役員報酬額を変更すると、損金として認められない部分が発生するため注意しましょう。

【例外として途中変更が認められるケース】

以下のような特別な事情がある場合は、事業年度の途中でも役員報酬の変更が認められることがあります。

・役員の職務内容に大きな変更があった場合

・医療法人の経営状況が著しく悪化した場合

これらのケースに該当するかどうかは専門的な判断が必要なため、税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

医療法人の役員報酬は、法人の経営状態や節税対策を考慮しながら適正な金額を設定することが重要です。

「定期同額給与」や「事前確定届出給与」など、税務上の規制を理解し、適切な支給を行うことも重要になります。

税理士 中村太郎

いかがでしたでしょうか。

役員報酬は経営状況や個人の所得税との兼合いも大切となります。

当事務所では、医療法人の税務や経営についてのご相談を承っております。

役員報酬についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。