税務調査では何を調べるのか
売上に計上漏れがないか
法人税を計算する上でもっとも重要な要素は、言うまでもなく「売上」です。
税務調査では、売上として計上されている金額が正しいかどうかを調べるために、まず会社の事業内容、販売方法、受注から代金回収までの管理方法、売上の計上基準などを担当者から聞き取り、関係書類や管理システムを閲覧して、売上の全容を把握します。
その上で、調査対象年度の売上に、計上漏れや期ずれがないかを、請求書や納品書などの綴りなどを見て、一つずつ調べます。
特に現金取引は、金額をごまかしやすいことから、日々の管理体制についても入念にチェックされます。
棚卸資産に計上漏れがないか
棚卸資産は、期末の評価額を資産計上することによって、当期の売上に対応する分だけを経費(売上原価)とします。
税務調査では、「棚卸資産」に関して
- 期末の棚卸資産の数量に計上漏れがないか
- 評価方法は企業が選択する方法と一致しているか
といったポイントで、売上原価の過大計上がないかを調べます。
評価額の増減が大きい企業は、特に入念にチェックされやすくなるでしょう。
また、評価損を計上している場合は、税務上の要件(著しい陳腐化など)を満たしていると判断した根拠を確認します。
固定資産の取扱いに誤りがないか
固定資産は、さまざまな観点から調査される項目ですが、特に①固定資産を新しく取得した、②固定資産の修繕をした、③簿価が残っている固定資産を帳簿から除却した、といった処理があれば、誤りがないか必ず調べます。
たとえば、
- 取得価額に含める費用を経費にしてしまい、資産計上すべき固定資産を全額損金に算入していないか
- 20万円以上の修繕費は、資本的支出にあたらないか
- 除却の要件や除却した日付に根拠があるか
といった点を見ながら、帳簿、固定資産台帳、購入や修繕時の関係書類などをチェックします。
交際費の取扱いに誤りがないか
会社の交際費には、損金に算入できる額に限度があります。
そのため、交際費とすべきものを他の勘定科目で処理していないか調べるために、交際費との境があいまいになりやすい、福利厚生費、会議費、広告宣伝費、販売手数料、交通費(接待会場へのタクシー代等)などの内容を、関係書類から確認します。
また、交際費であっても、1人あたり5,000円以下の少額な飲食費であれば、全額を損金に算入することができることはよく知られていますが、そのためには、一定の書類を保存しておかなければなりません。
そのため、少額飲食費を損金に算入している場合は、保存すべき書類がそろっているか、参加人数から本当に1人5,000円以下かどうかをチェックします。
また、交際費の中に、社長のプライベートな支出が混ざっていないかどうかもチェックするため、参加者は誰か、事業との関連性があるのかといった点を質問してくることもあります。
役員給与・役員賞与の税務処理・金額は適正か
役員給与や役員賞与は、損金に算入できる支給方法が限られていますので、まずは、そのルールに従っているかどうかを確認します。
また、支給方法が適正でも、金額が過大な部分は損金に算入できません。
このことから、たとえば会社にまったく関わっていない親族を非常勤役員にし、給与を支払っている現状がないかなどもチェックします。
消費税・源泉所得税の扱いは適切か
会社への税務調査では、法人税の調査と同時に、消費税や源泉所得税の調査も行われることが一般的です。
消費税の調査では、主に課税区分(課税・非課税・不課税)に誤りがないかを調べます。
源泉所得税の調査では、税額の計算に誤りがないか、源泉徴収をしていない支払い(現物給与など)がないか、年末調整は正しく行われているか、期限内に納付されているかなどを確認します。
税務調査のために準備しておくべき対策
帳簿書類の整理
税金の計算根拠となる帳簿や書類は、一定の間、保存する義務があります。
こればかりは、税務調査の通知が届いてから準備しようとしたところで間に合うはずがありません。
担当者を決めて、日ごろから取り組むことが大切です。
また、固定資産の取得価額の根拠や、交際費における事業関連性など、税務調査で説明を求められやすいことが分かっているものについては、法律で定められた保存書類以外にも、関係する文書を一緒に添付して保存したり、必要な事項をメモ書きしたりしておくように心掛けると必ず役に立ちます。
経理ルールを明確にし、管理体制を作る
「受注→商品の引き渡し→入金」といった売上のフローを明確にし、どの時点で売上を計上するかの経理ルールを作りましょう。
さらに、フローの各時点で発生する書類名とその保管先を明らかにし、簡単な図解にしておくと、書類の保存が適正にできているか・売上の計上ミスがないかといった事項を社内で確認しやすくなります。
また、現金取引があるときは、管理体制を明確にすることが重要です。
特に、日々の残高は複数名でチェックし合う体制をつくることが、不正防止の観点からも望ましいといえます。
申告を税理士に依頼する
税務調査に備えるなら、税務申告は税理士に依頼しましょう。
税務上の計算ミスがなくなるだけでなく、会社が抱える税務上の問題点に気が付くチャンスになります。
より税務調査の対応に力を入れたい会社は、税務調査の立会いに対応している税理士や、書面添付に対応している税理士を選ぶことをお奨めします。
それから時々、社長や経理担当者が税務調査を過度に恐れてしまっていて、経費にできるものも経費にしないという誤った処理をしている会社があります。
そのような会社では、税理士に申告を依頼した途端に、税負担が減ることがありますので、今の処理に疑問点があれば、ぜひご相談ください。
いかがでしょうか。
税務は専門性が高い故に気が付かないうちに誤った処理をしてしまう恐れがあります。
それらを防ぐには知識を蓄えることは勿論ですが、一番は税務のプロである税理士に日々の会計を依頼することです。
税理士をお探しの方は是非一度、弊所にご相談下さい!
こんにちは、税理士の中村です。
今回は「税務調査」にフォーカスを当てました。
「税務調査」と聞くと何をイメージされますか?
漠然とした恐怖や不安感を覚える方が多いのではないでしょうか。
「税務調査」とは具体的に何をするのか、どういった対策が出来るのかを一緒に見ていきましょう。