相続税申告の税理士は変更はできる?
「相続税申告をお願いした税理士が、思ったように業務を進めてくれない」
「こちらの心情に全く配慮してくれない」
相続税の申告は、一般的には一生に一度あるかどうかのなじみの薄い税務申告です。
何となく税理士を選んでしまうと、実は税理士側も相続税の申告経験がなく「期待はずれ」ということがあります。
ご家族が亡くなるという壮絶な体験をされたばかりのときに、合わない税理士と長期間、何度も会うことにストレスを感じられる方もいます。
契約自体の原則がありますから、対応やサービスに不満があれば、契約解除をすることは自由です。
この場合、今の税理士との契約を解除し、経験豊富な新しい税理士に変更して構いません。
どんな場合に税理士変更をすべき?
税理士の変更はかなりの労力を求められるため、中々決断に踏み出せない方も多くいらっしゃいます。しかしながら下記の2点、どちらか一方でも当てはまる場合には早急に税理士変更の検討をしたほうがよいです。
- 税理士の相続税に関する知識が乏しい
- 対応が誠実ではない
それぞれ詳しく紹介いたします。
税理士の相続税に関する知識が乏しい
相続税の申告経験がない税理士は少なくありません。
相続税は納税者にとっても、一生に一度あるかないかの申告頻度が低い申告です。
加えて税理士は税理士試験を経て税理士登録を行いますが、相続税は選択科目の為、相続税の勉強をしなくとも税理士資格の取得が可能です。
今現在依頼している税理士が相続税に関する知識が乏しい場合には、新たに相続税に詳しい税理士に依頼されたほうがよいでしょう。
対応が誠実ではない
税理士に業務を依頼する際、税理士が持ち得る知識・経験のほかに大切なのは『自分と合った税理士かどうか』です。
約束を守らない、話を聞いてくれない、質問に答えないなど、税理士の態度が誠実ではない場合、依頼する側もストレスが溜ってしまいます。
円滑な申告を行うためにも、税理士の対応が誠実ではない場合は、税理士の変更を検討しましょう。
相続税申告の税理士を変更した場合のメリット
相続税申告の税理士を変更するメリットは下記の2点です。
- 税務調査に入られる可能性が下がることがある
- 相続税に関するノウハウを知ることができる
それぞれ詳しく解説していきます。
税務調査に入られる可能性が下がることがある
国税局の資料を見ると、相続税の実地調査(※)先の約85%に、申告漏れ等の何らかの間違いが発覚していることがわかります。
つまり、税務署はランダムに調査先を選んでいるのではなく、間違いがありそうな納税者を探し、集中的に調査を行っているのです。
しかし、相続税申告の経験豊富な税理士に申告を依頼することによって、税務調査に入られるリスクがぐっと下がることがあります。
(※)電話等ではなく現地に職員がやってくる調査のこと
相続税に関するノウハウを知ることができる
相続税申告の経験豊富な税理士は、相続税申告のノウハウを蓄積していますので、今の税理士からは提案のなかった節税方法が見つかる場合があります。
特に土地などの財産評価は、減額できるポイントを網羅していないと過大申告になりやすいのですが、経験豊富な税理士に依頼すれば、そういったリスクも抑えることが出来ます。
相続税申告の税理士を変更した場合のデメリット
続いて相続税申告の税理士を変更するデメリットを紹介いたします。
税理士報酬の負担が重くなることがある
途中で税理士を変更すると、前の税理士にもそれまでの相談料等が発生する場合があります。
前の税理士と新しい税理士の2カ所に報酬を支払わなければならなくなると、税理士報酬の負担が重くなることがあります。
手続きのスケジュールがタイトになる
相続税の申告期限は、相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内ですが、申告期限が迫っていると、依頼を受けてもらえない可能性があります。
また、受けてもらえても、申告までの打ち合わせのスケジュールがタイトになったり、通常料金にお急ぎ料金を上乗せされたりするデメリットがあります。
税理士を変更するタイミングは慎重に検討しましょう。
相続税申告の税理士を選ぶポイント
相続税申告の税理士を選ぶ際のポイントを5つご紹介します。
相続税申告の実績が豊富にあるか
税理士によっては、ホームページ等で相続税申告の実績を公開していますので、参考にしましょう。
このとき、相続実績と申告実績の違いに注意が必要です。
公開されている件数をよく見ると、申告件数ではなく、申告件数に相談件数を含めている場合があります。
相談件数を含めている場合、実際の申告実績はかなり少ない場合があり、申告実績のみの数字で公開している他の事務所と比べてしまうと判断を誤る可能性があります。
相続税申告の専門性は高いか
相続税の申告に特化した専門チームやスタッフを擁しているなど、専門性の高い事務所を選ぶようにしましょう。
専門性が高いほど、税務調査に入られにくい精度の高い申告が期待できます。
税務調査の実施率
国税局の資料から推測すると、例年約10%の相続税申告に対して実地調査が行われていることがわかります。
会計事務所によっては、取り扱った税務申告に対する税務調査の実施率を公開していますので、その実施率を10%と比べてみるとよいでしょう。
前述の通り、税務署は間違いがありそうな納税者を探して実地調査を行っているため、税務調査の実施率が低いということは、税務署から信頼される申告書を作成できる事務所であるということです。
税務調査の実施率を公開している事務所は少ないので、知りたければ問い合わせてみても良いかもしれません。
税理士報酬が明確か
税理士報酬が明確であるかどうかも、税理士を選ぶポイントです。
相続税申告の場合、遺産の総額で料金を分けていることが一般的で、財産が多いほど税理士報酬も高くなります。
尚、遺産に土地や非上場株式がある場合は、オプション扱いとなり別料金が加算されることがありますので、料金比較をするときはご注意ください。
書面添付制度があるか
書面添付制度とは、税理士が申告書とは別の書面に、申告書を作成するにあたって確認した内容を記載し、それを添付する制度をいいます。
書面添付がある場合、税務署は税務調査に動く前に税理士に連絡し、税理士に意見を述べる機会を設けてくれます。
もし、このときに税務署の疑問点が解消すれば、税務調査が実施されないこともあります。
つまり、書面添付のある申告書の方が、税務調査に至る可能性が低いのです。
尚、別料金で書面添付に対応する事務所もありますので、料金を比較するときはご注意下さい。
相続税申告の税理士を変更する際の注意点
より正確な申告をするためにも、税理士を変更を検討することは大切ですが、その際の注意点についても紹介いたします。
税理士変更のタイミング
相続税の申告期間は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。
税理士を変更した場合、申告書の準備などが最初からやり直しになることがあります。
その為、申告期限が迫っている場合、依頼を断られたり追加報酬を求められる可能性があります。
少しでも今の税理士に違和感や不信感を感じた際には、とりあえず新しい税理士を探してみるとよいでしょう。
税理士とのトラブル
委任契約の解除にあたり、変更前の税理士とトラブルになる場合がございます。
例えば着手金の返還や違約金の支払い、預けた資料の返還の遅延など様々なトラブルが考えられます。
税理士に対し、本当の変更理由を伝える義務はありません。税理士の性格や態度を見ながら、以下のような理由を伝えましょう。
- 相続税に詳しい税理士を紹介された
- 親戚に税理士を紹介されて断れなかった
- 兄弟姉妹と同じ税理士に依頼することにした
- 相性が合わなかった
- 申告の方針に納得できない部分があった
ただし、税理士側の不適切な事務処理等を理由に解約する場合、着手金などの返済について争いになることも考えられます。そういった場合には、変更理由を正直に伝えるほうが良い場合もあります。このようなケースは、弁護士に相談してアドバイスを受けるのがいいでしょう。
まとめ
相続税申告は税理士にとっても機会の少ない申告です。
税理士変更のメリット・デメリットをしっかりと確認したうえで、ご自分にとって変更すべきかどうかを十分に検討いただき、判断することが大切です。
今回は税理士変更の中でも「相続税申告」に着目してご紹介しました。
相続税申告はその性質上、なじみの薄い申告であります。
ご家族が亡くなりバタバタしている中、慌てて税理士を選びがちですが、なじみの薄い申告だからこそ、慎重に税理士を選ぶことが重要となります。
税理士をお探しの方は、是非一度弊所へご相談ください!
まいど!西新宿の税理士 中村です!
今回は【相続税申告における税理士変更】について。
相続税申告は一生に一度あるかないかのなじみの薄い申告です。
実は税理士の中にも相続税申告は経験したことがないという人も少なくありません。
相続税に限らず、税務申告を税理士に依頼する際大切なことは税理士の知識・経験もそうですが、何より『自分と合った税理士か』が大切です。
相続税申告を控えた上で税理士を変更する場合のメリット・デメリットをご紹介いたします!