税理士変更の断り方で良くない例
顧問契約を締結している税理士を、他の税理士に変えることは自由です。
税理士変更は、税理士にとって珍しいことではありませんから、通常は正直に事情を話して変更して問題ありません。
しかし、税理士との関係が既にあまりよくない場合、その税理士を否定するような理由で断ってしまうと「喧嘩別れ」のような形となり、必要以上に人間関係が悪くなってしまう可能性があります。
例えば、次のような断り方をすることは得策とは言えません。
他に安い税理士が見つかった
この断り方は、その税理士のサービスに対し、顧問料に見合う価値を感じていなかったと言っているようなものです。
本心でも、わざわざ言う必要はありません。
また、この断り方をすることによって、「価値を下げれば契約を続けてくれるのかな」と考える税理士もいます。
それによって税理士から交渉された場合、さらに別の断り方を考えなければならなくなるため、変更を決めているなら言うべきではありません。
サービスに不満がある為、いい所に変更したい
スムーズに契約を解除したいなら、このようなことも言う必要はありません。
人によってはプライドを傷つけられたと感じ、そうしたサービスを提供できなかったことを経営者のせいにして言い返してくるなど、いやな気分にさせられることも考えられます。
もっと業界に詳しい人に任せたい
この理由の場合、おそらく税理士にも思い当たるところがあると思います。
しかし、分かっていることを関係のあまり良くない相手からわざわざ指摘されると、感情の行き場がありません。
契約を解除したいだけなら、わざわざ追い詰める必要はないので言わない方が無難です。
税理士変更の断り方の良い例
それでは、どのような断り方がスマートなのか、私の視点からお伝えします。
友人が税理士として独立して、以前から顧問税理士にする約束をしていた
この断り方であれば、喧嘩別れすることなくスムーズに税理士変更をしやすくなります。
このように言われれば、税理士は納得するしかなく、「何故ですか?」とはなりません。
ちなみに税理士業は、税理士試験の勉強をしながら会計事務所に勤めて経験を積み、30代や40代で独立する人が割といる業界です。
ご自身も同年代なら、不自然な話には聞こえません。
ただし、逆に興味を持たれる可能性があるため、次項のように「親戚」とした方がスムーズな場合もあると思います。
親戚が税理士になり顧問税理士にするように頼まれた
前項の断り方だと、例えば「開業場所はうちの事務所の近くかな?」とか、ご自身と税理士の年齢が近い場合、「この人の友人なら知っている税理士かも知れない!」といった理由で興味を持たれる可能性があり、税理士の名前や開業場所などを尋ねられることが考えられます。
心配な方は、「遠方の親戚」や「遠方の親戚が税理士になって顧問税理士にするように頼まれた」とした方がよいでしょう。
親しい取引先の会社から税理士を勧められた
こちらも喧嘩別れになりにくい断り方です。
このように関係の深い相手からお願いされたという断り方なら、円満に解約しやすくなります。
税理士変更の流れ・スケジュール
次に依頼する税理士を探す
今の税理士を断って契約の解除を告げてから次の税理士を探し始めると、契約の解除に間に合わない恐れがあります。
税理士変更の可能性が高まった段階で、次の税理士を速やかに探し始めましょう。
税理士との契約解除を行う
契約解除の連絡を、担当者に入れましょう。
月次の訪問を受けている場合は、その時に伝えても構いません。
所長税理士がもとの担当であれば、所長税理士に連絡してもよいでしょう。
ただし、契約書に「解約の3か月前までに書面をもって申し出る」のような内容が書かれていることがありますので、解約手続きについて先に契約書を確認しておく必要があります。
税理士からの書類返却
新しい税理士に変更するには、帳簿書類や関係資料を、今の税理士から受け取って次の税理士に渡す必要があります。
契約解除となれば、今の税理士にこうした事務負担を伴う協力を仰がなければならないため、喧嘩別れというのは得策ではないのです。
- 総勘定元帳、試算表、仕訳帳などの会計データ
- 給与関係の台帳や書類
- 税務署への届出書などの資料
- 預けている請求書・領収書などの帳票
次に依頼する税理士と契約する
次の税理士と正式に契約します。
報酬面やサービスの内容が事前の打ち合わせ通りになっているか、契約書をよく確認しましょう。
また、前の税理士から引き継ぐ内容や預ける書類の確認は、必要に応じて受領書を書いてもらうなどして確実に行い、税理士変更時の書類やデータの紛失事故を防止します。
税理士を変更するときの注意点
税理士を変更する際には、前述のとおり、次の税理士を決めるなどスケジュールを明確にすること、次の税理士の契約書を確認すること、前の税理士から書類を返却してもらうことなど、注意点がたくさんあります。
また、税理士変更の連絡をする時期についても、決算期や確定申告などの時期を避ける配慮が求められます。
詳しい注意点については、こちらの記事もぜひご覧ください。
税理士が契約解除を受け入れてくれない場合の対処法
万が一、税理士との話がこじれて契約解除を受け入れてくれない場合は、その税理士が在籍している税理士会に相談するという手段があります。
新しい税理士に引き継ぐための資料を返却してくれない場合も、税理士会に相談することが出来ます。
前回に引き続き税理士変更時の注意点やポイントを解説いたしました。
いかがだったでしょうか。
税理士の変更は一見単純に思えますが、注意すべき事項が多くあります。
よりスムーズに、より円満に済ませるためにも、これらポイントを押さえて行ってください。