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会社経費の基本的な知識 経費になるものとならないもの

税理士中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

今回は【会社経費になるもの・ならないもの】を確認していきます。

法人は毎年決算になると確定申告書を提出しなければなりません。

この申告書の作成の為には日々の会計事務が重要となりますが、よくお問い合わせいただく内容として『この支出は経費になるのか』といったご質問がございます。

今回はどういった支出が経費となり、また経費とならないのか。会社経費の基本を解説いたします!

会社の経費とは

会社の経費とは、その会社の事業に関連して支出した費用のことです。

こうした費用を会社の経費として計上することによってその会社の法人税等が減少するため、経費を漏れなく計上するだけでも立派な節税になります。

会社の経費で節税できる理由

会社が負担する法人税などの税金のほとんどは、会社の売上などの収益から経費を差し引いた残りである「会社の所得」に税率を乗じて計算します。

経費としてきちんと計上すれば、税金の対象になる所得を減らすことができるので、会社の節税に繋がります。

経費を計上することは「経費で落とす」と言ったり、専門的には「損金に算入する」と言ったりします。後者については、法人の経費のことを税法で「損金」と呼ぶためです。いずれも、経費を計上することと同じ意味になります。

会社で経費を年間100万円計上したらどのくらい節税になるのか?

会社の経費でどのくらいの節税になるのか、具体的にシミュレーションしてみましょう。

例えば1年間の課税所得が1,000万円の会社における法人税等の金額は、約300万円(※)です。

もしこの会社で経費を100万円を追加計上した場合、法人税等の金額は約270万円(※)になります。

経費による節税は「投資」でなければならない

上記の節税シミュレーションをもう一度見てみましょう。

今度は、会社のキャッシュを比べてみます。

お金を支払うことによって計上できる経費は、節税額よりも流出させるキャッシュのほうが上回ります。節税のために要らないものを買ったり契約したりすることは、逆に会社の経営を悪化させるということです。

会社の経費による節税は、会社の売上を拡大するための投資と合わせることで初めて有効になります。

例えば、会社の業務を効率化させる目的でDX化に100万円を投資して、将来、100万円以上のキャッシュを会社にもたらせば、その投資は成功ですよね。

もしこれを上記の会社が行った場合、30万円の節税ができるため、実質70万円で投資ができるわけです。

税理士中村太郎

「節税のために経費を計上する」のではなく、「節税を利用して経費を使い、売上を伸ばす」という考え方を忘れないようにしましょう。

人材の採用や育成、設備、広告宣伝など、商品の品質向上や販路の拡大に還元できる経費に継続的に投資をしていくことが大切です。

会社の経費になる要件とは

会社の経費になるかどうかは、その支払いが会社の業務に関係しているかどうかを基準します。

何を買ったかではなく、それが会社のためになる費用であることが重要です。

例えば、社長が文房具店でボールペン1本を200円で購入したとしましょう。

この200円が会社の経費になるかどうかは、このボールペンの用途で変わります。

ボールペンを会社の事務用品として使うのであれば、これは「消耗品費」や「事務用品費」などとして会社の経費になりますが、自宅に持ち帰って子どもに渡し、子どもの学用品として使うのであれば、それは会社の業務とは関係がないので経費になりません。

つまり、業務に関係がなければ同じ商品やサービスに対して支出した費用であっても、経費になる場合とならない場合が出てくるのです。

税理士中村太郎

経費にできる範囲は税理士でも考え方に違いがある場合があります。

この違いは、お客様のために税務調査できちんと戦った経験の厚みではないかと思っています。

法の趣旨とお客様の事業内容との両方を正しく理解した上で、なぜその支出がこの会社では経費になるのかを正しく主張すれば、税務署はわかってくれます。

弊所では、経費になるものは税務調査でしっかりと主張してまいります。

会社の経費になる具体例

ここからは、会社の経費になるものを具体的にあげていきます。

ここに書かれていても業務に関係ない支出であれば経費になりませんし、ここに書かれていないものでもご自身のビジネスに必要な費用は経費になります。あくまで参考として考えてください。

商品や製品の原価

商品やサービスの原価は、もちろん会社の経費になります。

小売・卸売業の商品の仕入れ、飲食業の材料費、製造業の材料費や労務費、建設業の工事原価などが該当します。売れ残った分はその期の経費にはできないため、決算時に経費分から除外します。

人件費

給与やボーナス、退職金など、役員や従業員の人件費です。

役員給与は一定の方法(定期同額など)で支給しなければ経費にならないルールがあることに注意が必要です。

法定福利費

役員や従業員の社会保険料のうち、会社負担分の費用です。

半分は給与から天引きして「預かり金」として処理するため、経費になるのは会社負担分のみとなります。

交際費

顧客や取引先、自社の役員・従業員といった社内外の関係者に対する接待費用や手土産、お中元やお歳暮、冠婚葬祭などの資金が費用です。

経費にできる金額に年度ごとの上限があり、その上限額は法人の規模などで異なります。

少額飲食費

交際費のうち、少額飲食費の要件を満たす接待飲食費(社内飲食費を除く)であれば、交際費としての経費の金額制限を受けず、すべて経費することが可能です。一定の書類保存などの条件があります。

会議費

会議室の利用料や、会議に伴って発生する少額な飲食費などです。もちろん経費になります。

広告宣伝費・販売促進費

広告の掲載費や、販売促進のための商品サンプルの配布やイベント・キャンペーンの開催などの費用のことです。売上拡大のための費用として、もちろん経費になります。

旅費交通費

出張の交通費や宿泊費、出張手当、通勤手当などの費用です。

支払手数料

会社の運営に関して契約している、各種サービスの手数料です。

保険料

会社の資産や事業のリスクをカバーするために加入する損害保険や、役員・従業員のために会社が加入する生命保険などの保険料です。

生命保険料については、その商品によって経費にできる金額に違いがあります。

支払利息

金融機関等に支払う、会社の借入金の利息です。

消耗品費・事務用品費

会社で使用する各種用具や事務用品の購入費です。未使用分は経費になりません。

減価償却費

10万円を超える一定の資産については、その取得価額を使用期間の経過に応じて減価償却費で経費にします。

10万円未満の固定資産

固定資産の取得価額は原則として資産とし、減価償却費によって経費にします。

ただし、取得価額が10万円未満のものや使用可能期間が1年未満のものであれば、使用開始年度において会社の経費にすることができます。

会社がさらに一定の要件を満たせば、30万円未満までの固定資産をその事業年度の経費にする方法もあります。

修繕費

会社の建物や機械などの資産に対するメンテナンスの費用は基本的には「修繕費」として経費になります。

ただし、修理や改良の費用のうち対象の価値や耐久性を増加させる「資本的支出」にあたるものを支出した時は、経費ではなく資産に計上し、減価償却によって経費にしなければなりません。

車両費

社用車のガソリン代や車検の費用などのことです。

法人事業税

都道府県に支払う法人事業税・特別法人事業税は経費になります。

経費にならない税金は後述しています。

固定資産税・印紙税・自動車税・不動産取得税・登録免許税など

会社の資産にかかる固定資産税や自動車税、会社で不動産を取得した時の不動産取得税、登記時の登録免許税などの税金も会社の経費になります。

不動産取得税や自動車取得税は、その不動産や自動車の取得価額に含めて資産計上し、期間の経過とともに「減価償却費」で経費にすることも可能です。

地代家賃

オフィスの賃料や店舗、駐車場などの家賃・利用料金のことです。

水道光熱費

事務所や店舗などの水道光熱費も経費になります。

通信費

会社の電話、インターネット、携帯電話などの利用料金、郵送料も経費になります。

経費にならないもの

会社の経費になりそうでならないものもあります。実務では、どちらかというと経費にならないものを把握することが重要です。

在庫商品

商品として売れていない在庫品の購入費は、その期の経費にすることはできません。購入時に経費としているものは、棚卸資産(商品など)として資産に振り替えます。

未使用の切手・収入印紙など

未使用の切手や収入印紙、事務用品なども経費にできません。購入時に経費としたものは、貯蔵品として資産に振り替えます。

貸付金

貸付金は将来返還してもらえるため、経費になりません。

借入金の返済(元金部分)

借入金の返済額のうち、利息は経費になりますが、元金部分は経費になりません。

投資・出資

他社に出資をした資金も経費になりません。「有価証券」「出資金」などで処理をします。

法人税や法人住民税など

法人税、地方法人税、法人住民税(都道府県民税および市町村民税)も経費になりません。

加算税・延滞税

加算税や延滞税などのペナルティとしての税も経費になりません。

ただし、利子税や社会保険料の延滞金は経費になります。

罰金・過料

罰金や過料なども経費になりません。

会社の経費を計上する時の注意点

最後に、会社の経費を計上する時の注意点を解説します。

原則、その年度の分しか経費にならない

会社の経費にできる費用は、原則、その年度の分しか経費になりません。

これは簿記のおなじみのルールで、会社の経費になるものは、会社の活動を会計期間(事業年度)ごとに区切ったとき、その期間に発生した費用に限られます。

例えば、3月決算の法人が2月に12か月分の支払手数料を前払いした時、その期の経費になるのは2か月分です。残りの10か月分は、翌期の費用(前払費用)にします。

この支払手数料が「短期前払費用」に該当するものであれば、税法のルールで全額経費にできることもあるのですが、原則はこの考え方になります。

会社の経費にならないものを計上するとペナルティがある

経費にならないものを計上すると、申告した所得が過少になってしまい、納税額に不足額が生じます。

この場合、不足した納税額について「過少申告加算税」と「延滞税」といった、ペナルティに該当する税金が発生します。

対象になると、不足税額そのものを納めなければならないだけでなく、こうした追加の税金を余計に納税しなければなりません。

また、偽装や隠蔽によって経費を多く計上するための工作が発覚した場合は、「過少申告加算税」がさらに重い「重加算税」になったり、刑事罰(罰金刑や懲役刑)の対象になったりします。

経費の節税をやり過ぎると資金繰りが悪化する

会社の経費を沢山計上することで節税になりますが、支出を伴う経費をいくら重ねても、節税額がそれを上回ることはありません。

節税になるからといって支出を伴う経費を計上しすぎると、会社に残るキャッシュが減ってしまいます。

経費によって節税をしながら会社にキャッシュを賢く残すには、前述のとおり、経費の使い道が大切です。

まとめ

経費を沢山計上したからといって、その全てが節税に繋がることはありません。

むしと資金繰りを悪化させ、経営に大きな影響を及ぼす可能性もございます。

その支出が経費になるのかならないのか、そして経費になる場合その使い道は会社経営においてどういった意味を持つのか。様々な側面から考える必要がございます。

税理士中村太郎

いかがでしたでしょうか。

沢山お金を使えば当然、キャッシュは減っていきます。

キャッシュが減れば、大切な時にお金を動かす力がなくなってしまいます。

『節税』という言葉に囚われて、不要な支出を増やすようなことがあってはなりません。

何か不明点や困りごとがある場合には、すぐに税理士に相談しましょう。