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ダブルワークでは確定申告が必要?どのように手続きをすればいいか解説

税理士中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

今回は【ダブルワークをする人の確定申告】について。

今の時代、本職以外に収入がある方が多くいらっしゃいます。

そういう場合、確定申告は必要なのか。どういう手続きが必要なのか。

本記事で一緒に確認していきましょう!

目次

ダブルワークで確定申告が必要な場合

ダブルワークとは、2つの仕事を掛け持ちしている働き方をいいます。

ダブルワークで確定申告が必要になる場合を知るためには、まずはそのダブルワークの状況を、下記の2つに区分して考えることが重要です。

給与×給与

ダブルワークの収入がすべて「給与」であるケース。

(例)

●本業の会社で正社員をしながら週末にアルバイトをしている場合

●複数のアルバイトの掛け持ちをしている場合

給与×給与以外

ダブルワークの収入に、「給与以外」があるケース。

(例)

●本業として会社員をしながら、自宅でフリーランスとして仕事を請け負ったり、不動産賃貸業を営んだりしている場合

副業の年収が20万円を超える場合 【給与×給与】【給与×給与以外】

ダブルワークによる収入が20万円を超える場合、確定申告が必要になる可能性があります。

この「20万円」の判定方法は、ダブルワークによる収入の状況によって異なります。

  • ダブルワークの収入が「給与×給与」の場合

ダブルワークの収入がすべて給与である場合、年末調整を受けていない勤め先(本業でないほうの勤め先)から支払われた給与の収入(その勤め先の源泉徴収票の「支払金額」)」が20万円を超える場合、すべての給与を合わせて確定申告をすることが必要になります。

  • ダブルワークの収入が「給与×給与以外」の場合

ダブルワークの収入が「給与×給与以外」の場合、「給与以外」の収入から計算した「所得」が20万円を超える場合、給与と副業の所得を合わせて確定申告をすることが必要になります。

「所得」とは、税金を計算するための金額のことで、「年商」や「支払われた金額そのもの」とは異なります。

会社員の方の副業であれば、事業所得、不動産所得、雑所得にあたる場合が多いと考えられますので、ここでは、この3つの計算方法をご紹介します。

事業所得・不動産所得・雑所得の計算方法

総収入金額ー必要経費

ただし、事業所得や不動産所得を青色申告によって申告する場合、青色申告特別控除後の金額が所得になります。

たとえば、副業である不動産所得が30万円以下であり、10万円の青色申告特別控除を適用する場合、この額は20万円以下になりますので、他に所得がなければ、確定申告は不要となります。

ただし、青色申告特別控除55万円や65万円の適用を受けるには、たとえ控除後の額が20万円以下でも、期限内に確定申告をしなければなりません。

2つの勤め先のうち1社のみで年末調整を受けた場合 【給与×給与】

年末調整とは、会社が年末に、1年間に支給した月給やボーナスの合計から、各人の正しい所得税を計算し、それまで概算で天引きしてきた所得税(源泉徴収税)との差額を調整する制度です。

多くのサラリーマンは、この年末調整を受けていれば確定申告をしなくてよいこととなっています。

しかし、複数の勤め先から給与をもらっている場合、年末調整を受けられるのは本業である1社のみとなります。

年末調整を受けるには、従業員から勤め先に、その年の「扶養控除等申告書」を提出していることが条件であり、この「扶養控除等申告書」は、基本的には本業の勤め先である1社に提出することになっているからです。

2つの勤め先から給与をもらい、1社のみで年末調整を受けている場合は、年末調整を受けていないほうの勤め先からの給与収入(その勤め先の源泉徴収票の「支払金額」)」が「20万円」を超える場合か、2つの給与を合わせた額が「150万円+一定の所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く)」を超える場合に、2つの給与を合わせて確定申告をしなければなりません。

複数の勤め先で別々に年末調整を受けてしまった場合 【給与×給与】

何らかの間違いがあって、複数の勤め先から年末調整を受けてしまった場合、本来よりも少ない税額しか源泉徴収をされていない状態になっていると考えられます。

本来なら、すべての給与に対して適用しなければならない給与所得控除や所得控除が重複適用されていると考えられるからです。

したがって、このケースでは、基本的に確定申告が必要になるといえます。

ただし、複数の勤め先からの給与の合計額が「150万円+一定の所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除を除く)」以下であれば、確定申告をする必要はありません。

「源泉徴収税額>所得税額」なら還付申告ができる

確定申告をしなければならない金額の判定ラインを超えていても、新たに納税しなければならないのは、ダブルワーク全体の所得税に対し、すでに天引きされている源泉徴収税額に対する不足分のみとなります。

もし、計算した所得税よりも、源泉徴収された税額が多ければ、確定申告(還付申告)をすることによって、多く徴収された差額の還付を受けることができます。

還付申告をするかどうかは自由であり、期限も通常の確定申告とは異なります。

詳しくは、後述する「確定申告ができる期間」をご覧ください。

ダブルワークで確定申告が必要な例

続いて「アルバイトやパートの掛け持ちで年末調整を受けていない場合」と「会社員とフリーランスのダブルワークをしている場合」を例に、確定申告が必要になる基準を解説します。

アルバイトやパートの掛け持ちで年末調整を受けていない場合 【給与×給与】

アルバイトやパートタイマーを掛け持ちし、どの勤め先からも年末調整を受けていない場合、確定申告の義務があるかないかでいえば、ケースバイケースです。

すべての勤務先の源泉徴収票の「源泉徴収税額」の合計が、すべての勤務先の給与から計算した所得税よりも少なければ、納税額が不足しているため、下記の【例外】を除き、確定申告で差額の所得税を納税する必要があります。

下記のいずれかに該当する場合、確定申告をする義務はありません。

  • すべての給与の合計額が「20万円」以下である
  • すべての給与の合計額が「150万円+一定の所得控除(雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除の除く)」以下である。

逆に、すべての勤務先の給与から計算した「所得税」よりも、源泉徴収票の「源泉徴収税額」の合計額のほうが多ければ、確定申告をしなければならない法的な義務はないものの、税金を納めすぎている状態ですので、確定申告(還付申告)をすれば差額を還付してもらえます。

会社員とフリーランスのダブルワークをしている場合 【給与×給与以外】

フリーランスの多くは個人事業主であり、その収入は給与ではなく「給与以外」に該当すると考えられます。

「給与×給与以外」であれば、フリーランスとしての所得が20万円を超える場合、確定申告が必要になります。

【フリーランスの所得区分】

個人事業主であるフリーランスの所得は、一般的に事業所得か雑所得に該当します。

事業所得や雑所得の計算方法は、上記の「副業の年収が20万円を超える場合」をご確認ください。

(※)事業所得と雑所得は、おおむね下記のように区分されます。

収入金額記帳・帳簿書類の保存あり記帳・帳簿書類の保存なし
300万円超おおむね事業所得おおむね雑所得
300万円以下雑所得

「おおむね事業所得」であっても、その収入金額が例年300万円以下で、本業の収入の10%未満にあたるなど金額が僅少であるときは、雑所得に区分される可能性があります。

住民税の申告が必要なケースに注意

ここまでの説明のとおり、給与をもらっている人には、たとえ他にアルバイトや副業収入があっても、それが一定額以下なら確定申告が不要になる制度があります。

しかし、この制度によって確定申告が不要であっても、中には、住民税の申告が必要になるケースがあることに注意しなければなりません。

確定申告が不要になる「20万円以下」などのルールは税務署に対する所得税の確定申告のみのルールであり、市区町村に対する住民税のルールには、このようなものがないからです。

たとえば、会社員として給与をもらいながら副業として個人事業を営んでいる人(給与×給与以外)は、その所得が20万円以下であっても、住民税の申告をする必要があります。

なお、ダブルワークの収入がすべて給与の場合、勤め先から市区町村に金額を報告する制度(給与支払報告書の提出制度)があるため、住民税を申告する必要は基本的にありません。

しかし、たとえば短期のアルバイトなどで、すでにその勤め先に在籍しておらず、かつ、その年の給与が年30万円以下であれば、この給与の報告をするかどうかは会社側の任意となります。

市区町村によっては、こうしたものも含めてすべて報告するよう呼び掛けているのですが、もし給与支払報告書が会社から市区町村に提出されていない給与があれば、個人から市区町村に住民税の申告をする必要があります。

ダブルワークで確定申告が不要な場合

ダブルワークの収入の合計が103万円以下 【給与×給与】

ダブルワークの収入がすべて給与で、その年のすべての給与収入の合計(源泉徴収票の「支払金額」の合計)が103万円以下であれば、確定申告をする必要はありません。

ただし、いずれかの源泉徴収票に「源泉徴収税額」がある場合、確定申告をすることによって税額の還付を受けることができます。

したがって、103万円以下でも確定申告をしたほうがよい場合があることに注意してください。

他の勤務先の所得とまとめて年末調整を受けたとき

年の途中で勤め先をやめている場合、その日までの給与が記載された源泉徴収票を現在の勤め先に提出すれば、現在の務め先でまとめて年末調整を受けることができます。

新しく始めたアルバイトなどがなく、現在の勤め先で退職分の年末調整をまとめて受けていれば、確定申告をする必要はありません。

ダブルワークにおける確定申告の手続き

最後に、ダブルワークをしている人が確定申告を行うための、おおまかな流れを解説します。

収入や経費を帳簿に記帳 【給与×給与以外】

ダブルワークの状況が「給与×給与以外」であり、「給与以外」の収入が、事業所得や不動産所得、雑所得などの所得区分に該当するときは、まずは所得を計算することが必要です。

複数の副業収入があるときは、所得区分ごとに計算をしなければなりません。

所得を計算するには、1年間の収入や経費を記載した帳簿が必要になります。

確定申告に必要な書類の準備

【給与×給与】

すべての勤務先の「源泉徴収票」が必要です。

「源泉徴収票」は、翌年1月末まで(退職した場合は、退職日から1か月以内)に勤め先から交付されるルールになっています。

【給与×給与以外】

本業の源泉徴収票と副業の帳簿や書類が必要です。

副業において、報酬の支払者から支払調書をもらった場合は、その支払調書も用意しましょう。(支払調書は支払相手に交付する義務のない書類ですので、なくても構いません)

【給与×給与】【給与×給与以外】(共通)

所得控除を受けるための書類を用意します。

ただし、勤め先から年末調整を受けている場合、その源泉徴収票に記載されている控除から変更がなければ新たに用意する必要はありません。

「年末調整の際に会社に申告し忘れた控除がある」、「年末調整では受けられない控除を受けたい(例:医療費控除など)」、「そもそも年末調整を受けていない」といった場合は、その控除に関する必要書類を用意します。(書類を用意しなくても適用できる控除もあります)

確定申告に必要な書類の作成

確定申告をするには、定められた書類を作成し、それを税務署に提出しなければなりません。

必ず作成しなければならない書類が、確定申告書第一表・第二表です。

この書類は、国税庁のホームページから印刷しても構いませんし、税務署で書類をもらってくることも可能です。

また、PCやスマホから「確定申告書等作成コーナー」を使ってデータで申告することもできますので、必ずしも書面を入手する必要はありません。

確定申告書を提出

作成した確定申告書を、①窓口提出・②郵送・③e-Taxによる電子申告のいずれかで、期限内に税務署に提出します。

データで作成した場合も、印刷して①窓口提出か②郵送で提出することができます。

③の電子申告は、確定申告書等作成コーナーで作成したデータや、市販の会計ソフトのうちe-Taxに対応しているもので作成したデータであれば利用できます。

ただし、電子申告には事前準備が必要ですので、早めにとりかかりましょう。

税金の納付

源泉徴収税額よりもその年の所得税が多ければ、差額を翌年3月15日までに納付しなければなりません。

納付方法はいくつかあります。代表的なものは下記のとおりです。

振替納税

ご自身の口座からの引き落としによる納税方法です。

「納付書送付依頼書」を確定申告書と一緒に税務署に提出するか、金融機関に提出することによって、指定した口座から、4月下旬ころに引き落としてもらえるようになります。

本来なら3月15日までとされる納期限を過ぎてからの引き落としですが、期限内に納税したものとして扱われます。

「納付書送付依頼書」は一度提出すれば、その後の確定申告でもその口座からの引き落としを指定できます。

毎年、確定申告をする見込みがあればおすすめです。

(参考)国税庁:振替納税の新規申込み

httpss://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2018/a/05/5_01.htm

ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)

e-Taxによる電子申告をした場合に利用できる方法です。

指定した口座から、即日または指定日で納税できます。

電子申告後、e-Taxのメッセージボックスから手続きをすることができます。

(参考)国税庁:ダイレクト納付による納税手続

httpss://www.e-tax.nta.go.jp/tetsuzuki/tetsuzuki4_1.htm

窓口納付

税務署や金融機関の窓口に出向いて、現金で納付する方法です。

専用の納付書に金額を手書きして窓口で納付する必要があります。

ただし、金融機関には納付書の備付けがない場合もありますので、納付書をもっていなければ税務署のほうがよいでしょう。

コンビニ納付

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や「コンビニ納付用QRコード専用画面」などからQRコードを発行し、コンビニの端末で読み取って、レジで支払う方法です。

30万円以下の納付にのみ利用できます。

(参考)国税庁:コンビニ納付(QRコード)

httpss://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/conveni_qr_nofu/index.htm

確定申告ができる期間

納付する税額がある場合

確定申告期間は、申告対象年の翌年2月16日から3月15日までとなります。

この期間を過ぎても確定申告書を提出することはできますが、延滞税や無申告加算税といったペナルティを受ける可能性があります。

還付を受ける場合

確定申告期間は、申告対象年の翌年から5年間、確定申告(還付申告)をすることができます。

ただし、副業である事業所得や不動産所得の確定申告を青色申告で行う人のうち、青色申告特別控除55万円や65万円を適用したい場合は、3月15日までの申告が必要です。

確定申告に必要な書類

書類名給与×給与給与×給与以外備考

確定申告書第一表

第二表

本人確認書類

(マイナンバー確認・

身元確認)

確定申告書の提出方法によって変わる

青色申告決算書

または

収支内訳書

※事業所得・不動産所得・山林所得の申告書は要提出

(前々年1,000万円超の雑所得収入があれば、令和4年以降は収支内訳書の提出が必要)

源泉徴収票提出は不要(自宅保管)
帳簿書類提出は不要(自宅保管)

所得控除関係の書類

(控除証明書など)

e-Taxなら提出不要にできるものあり

(その場合でも自宅保管は必要)

まとめ

ダブルワークは、還付を受けられるケースと「20万円以下」などの少額なケースを除き、基本的には確定申告をしなければなりません。

したがって、確定申告の要否判断は、正しい所得税額を算出することがスタートラインとなります。

計算方法がわからないときは、とりあえず確定申告書作成コーナー等に入力するなどし、試算してみるとよいでしょう。

なお、副業収入の多い方は、税計算を間違えたときのリスクが大きいこともあるのですが、ご自身に合った節税対策を知らないという、ただそれだけのせいで、高額な税を納めているケースがとても多いです。

税負担が気になっている方は、節税に強い税理士に早めに相談しましょう。

税理士中村太郎

いかがでしたか?

ダブルワークをしている=確定申告が必要というわけではありません。

まず自分の収入を整理し、確定申告の可否判断が必要となります。

その際の税計算を誤ると、大きな損失につながることもございます。

是非ダブルワークをしている方は、お近くの税理士にご相談ください!

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。