そもそも「確定申告」とは?
確定申告とは、「もうけ」に対してかかる税金(所得税)を計算・清算する手続きです。
私たちが日々生活していくためには、「もうけ」を出さなければなりません。「もうけ」の出し方は様々ですが、税法ではこれを「所得」と呼び、その種類に応じて10種類に分類しております。
- 利子所得
- 配当所得
- 事業所得
- 不動産所得
- 給与所得
- 退職所得
- 譲渡所得
- 山林所得
- 一時所得
- 雑所得
原則として、所得がでたら税金を払う必要があります。1年間で得た上記10種類の所得を集計し、自ら税金を計算・申告・納税する。これが「確定申告」です。
確定申告が必要な人は?
確定申告を行う必要があるかどうか、その基準は「給与所得の有無」で変わります。
確定申告が必要な人(給与所得あり)
給与所得がある人とは、法人の経営者など会社役員や会社員、公務員、パートタイマー、アルバイトなどが該当します。
給与収入が2,000万円を超える人
給与収入が2,000万円を超える人は、給与所得控除額を差し引く前の金額で判断します。
給与を1カ所から受けており、他の所得が20万円を超える人
1ヶ所から受ける給与所得とは別に、他の所得(退職金は除く)の合計が20万円を超える人は、申告が必要となります。
2カ所以上から給与を受けている人
本業とは別にアルバイトをしているなど、給与所得が2カ所以上で発生している人は申告が必要となります。ただし、年末調整しなかった給与の収入額と他の所得(給与や退職金を除く)との合計が20万円以下の場合は不要です。
同族会社から貸借料などの支払を受けた役員・親族など
同族会社の役員やその親族などで、同族会社より給与のほかに貸付金の利子、店舗・工場などの貸借料、機械・器具の使用料などの支払いを受けた人は、受け取った金額に関わらず申告が必要となります。
災害減免法による猶予や還付を受けた人
給与について、災害減免法による所得税等の源泉徴収額の徴収猶予・還付を受けた人は申告が必要です。
確定申告が必要な人(給与所得なし)
給与所得がなくても、個人事業主やフリーランスなど、給与以外の所得がある人は申告が必要となります。
納付税額がある人
納付税額がある人とは、所得の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、かつ税額控除を差し引いても納付税額がある人のことです。
税額控除は配当控除、住宅ローン控除などの限られた項目しかない為、まずは所得の合計額が所得控除の合計額を超えるかどうかで判断します。
ただし、青色申告特別控除額や繰越控除などを受ける場合は、たとえ納付税額がなくても申告が必要となります。
確定申告により税金が還付される人とは?
確定申告では、その義務がなくとも、申告をすることで税金が戻ってくる人がいます。
「税金が戻る人」とは、源泉徴収や予定納税など、あらかじめ納めていた税金が、実は払い過ぎだった人です。税金を返してもらう為に行う確定申告のことを「還付申告」といいますが、その方法・様式は通常の確定申告と変わりません。
ただし、この還付申告の提出は、通常の確定申告が開始される以前より提出する事が可能です。
還付申告の対象者とは?
年末調整を受けていない所得控除・税額控除がある人
給与をもらっている人のうち、年末調整を受けていない所得控除や税額控除がある人が対象となります。
年末調整を受けていない所得控除・税額控除とは医療費控除・雑損控除・寄付金控除・住宅ローン控除・寄附金の税額控除・特定住宅新築や改修に対する特別税額控除などです。
年の途中で退職し、その後就職していない人
年の途中で退職した際、その多くが退職までに受け取った給与の年末調整を受けていません。
この場合、給与から天引きされた源泉徴収額と実際の税額に差異があり、申告により差額が還付される可能性があります。
源泉徴収の対象となる所得がある人
源泉徴収される収入には給与以外にも株式の配当金、原稿料、講演料といった報酬・料金等があります。これらは支払われる際に10~20%ほどの所得税を源泉徴収されている為、実際にはそれよりも低い税率に該当する収入がある場合には、差額が還付されます。
退職所得がある人
退職金について、ほとんどの人が確定申告をする必要はありません。
しかし、退職所得以外の所得が少なく、所得控除を控除しきれない場合は、申告をすることで退職所得から源泉徴収された税額が還付される可能性があります。
また、退職所得の支払いを受ける際に、「退職所得の受給に関する申告書」を支払者(職場等)に提出しなかった人は、一律20.42%の税率で源泉徴収される為、それよりも低い税率に該当する場合には差額が還付されます。
還付申告はいつまでに行えばいい?
還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間行うことが出来ます。
また、既に還付申告した内容に誤りが発覚する場合もあるかと思います。その場合には再度申告をし直さず、「更生の請求」という手続きで、前の申告を正しく修正することが可能です。この「更生の請求」の期限は、前に還付申告書を提出した日から5年以内です。
確定申告に必要な書類とは?
確定申告の受付は、毎年2月半ばから3月15日までの約1ヶ月間と限られています。この期間内に提出する為には、事前に必要な書類を揃えておくことが重要です。
事業所得や不動産所得がある人
- 青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)
青色申告特別控除を受けるには、期限内の申告が条件となりますので注意しましょう。
株式の配当金を受けた人
- 年間取引報告書や配当金等の支払通知書など
給与のある人
- 給与所得の源泉徴収票
年金のある人
- 公的年金等の源泉徴収票
災害に関連する支出のある人
- 災害等に関するやむを得ない支出についての領収書(添付ではなく直接提示でも可)
医療費の支払いによる医療費控除の申告をする人
- 医療費控除の明細書(医療費通知を添付して記載を省略する場合は、その通知書類)
- おむつ証明書など各種証明書(直接提示でも可)
セルフメディケーションによる医療費控除の申告をする人
- セルフメディケーション税制の明細書
- 健康診断など一定の取組みを行ったことがわかる書類(直接提示でも可)
セルフメディケーション税制は、医療費の支払いによる医療費控除との選択適用になります。
国民年金、国民年金基金の支払いがある人
- 社会保険料(国民年金保険料)控除証明書(直接提示でも可)
小規模企業共済等掛金控除に該当する支払いがある人
- 支払った掛金の証明書(直接提示でも可)
小規模企業共済や確定拠出年金(iDeCo)の掛金などが該当します。
生命保険料控除・地震保険料控除を受ける人
- 保険料控除証明書など(直接提示でも可)
寄附金控除を受ける人
- 寄付を行った団体からの受領証(直接提示でも可)
ただし、一定の法人や政治献金には別途書類が必要となります。
住宅ローン控除を受ける人
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
適用初年度については、上記以外に控除を受ける不動産に関する書類(登記事項証明書や売場契約書等)、認定住宅の特例を適用する場合は、その証明書類も必要となります。
本人確認のための書類
郵送で申告する場合
- 身元確認ができる書類(運転免許証やパスポートなど)の写し
- マイナンバーが確認できる書類(通知カード、マイナンバー入り住民票など)の写し
を添付する必要があります。
マイナンバーカードをお持ちの方は、その両面の写しで申告可能です。
尚、受付に触接提出される場合は、提出に行った人の上記書類の提示又は写しの添付も求められますので、代理で提出を行う場合は注意して下さい。
確定申告を忘れたときの「期限後申告」
「期限後申告」とは、文字通り確定申告の期限を過ぎてから行う申告のことです。
期限申告を行うと原則は
- 無申告加算税
- 延滞税
という2つの税額が、通常の税額に上乗せされて徴収されます。
無申告加算税
申告をしていなかったことに対する、ペナルティとしての税です。
自分から申告すると納税額の5%ですが、税務署からの通知以降は、段階的に20%まで上がります。
ただし、1ヶ月以内に自分から申告・納税を行えば無申告加算税は免除されます。
延滞税
確定申告では、申告期限(3月15日)が納税の期限でもあります。
延滞税は、納税が遅れた日数に対して発生する、利息としての税です。
金額は納税額に対して
- 納付期限から2ヶ月以内…年2.6%
- 2カ月後…年8.9%
となります。日割計算となりますので、1日遅れるごとに税額が上がります。
ただし、計算後の金額が1,000円以下となる場合は延滞税は0円となります。
無申告加算税は1ヶ月以内であれば免除、延滞税は日割計算となりますので、対応が早ければ早いほど大きな損失にはつながりません。申告し忘れた場合には、「なるべく早く」「自分から」申告をしましょう。
個人の青色申告と期限後申告
個人の青色申告者が期限後申告を行う場合
- 期限後申告した事業年度
- 期限後申告した翌事業年度から
上記2点に、下記のような影響が出てしまいます。
期限後申告した事業年度の影響
期限後申告の場合、青色申告特別控除65万円が受けられなくなります。
その他の要件を満たしていれば10万円の控除は受けられますが、控除額の大幅な減額は大きな損失となります。
※平成30年度税制改正により、2020年分の確定申告(2021年申告分)から、青色申告特別控除額が55万円に引き下がりました。しかし、e-Taxによる申告(電子申告)又は電子帳簿保存のどちらかを選択すると、従前どおり65万円の控除が受けることが可能となります。
期限後申告した翌事業年度から
青色申告の承認をもらっている個人事業主が期限後申告すると、場合によっては青色申告の取消というペナルティを受けることがあります。
国税庁が示す「個人の青色申告の承認の取消について」に記載される、期限後申告に関する部分を簡単にまとめると、次のいずれにも該当する場合、取消を受ける可能性が高いと言えます。
- その期限後申告が、調査があったことによって行われている
- 隠ぺいや仮装された金額が、一定以上ある
一つ目については、なるべく早く自分から申告することが大切となります。
二つ目の「金額」は、国税庁よりある程度具体的な金額が示されておりますので、気になる方は下記のページを参照ください。尚、あくまで「運営指針」であり、最終的な処分の判断は税務署が行います。
国税庁HP「個人の青色申告の承認の取消について」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shotoku/shinkoku/000703-3/01.htm
また、法人の期限後申告による青色申告の取消は別途運営指針がございます。
青色申告の期限後申告も、「なるべく早く」「自分から」申告することが重要となります。
最後に
ここまで確定申告について、注意点等解説をしてきました。
きちんと理解し、資料を整えれば自分で確定申告をすることは十分可能です。しかし、確定申告の時期は年始・年度末と、何かと忙しい時期と重なっております。その為「誰か詳しい人にやってもらいたい…」と思うこともあるかもしれません。
確定申告は税理士以外に依頼できません。
税理士以外の人が他人の依頼を受けて「税務代理」や「税務書類の作成」などを行うことは出来ません。これは税理士法という法律によって定められており、違反すると確定申告などを行った人に対し、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられることがあります。
稀に「タダでお願いすればセーフ」と思っている方がいらっしゃいますが、報酬等が発生していなくても、税理士以外の人間が確定申告を代行したり、申告書を作成するのは違法となります。
確定申告にはその人の税金の知識が反映されます。
もし納税者に有利な税制を知らない人に申告書の作成を任せると、税金を多く支払うことになってしまいますし、逆に誤った知識で少なく税金を申告してしまうと、あとから納税者がペナルティを受けることとなります。
税理士以外にも税金に詳しい職業の方は沢山いらっしゃいますが、正しい租税制度を実現できるプロとして、国から税務申告の代行を認められているのは税理士だけです。
税務代理や税務書類の作成を依頼する際は、必ず相手が税理士であるかを確認しましょう。

いかがでしたか?
本記事で確定申告について理解が深まれば幸いです。
分からないことがある場合には、税金のプロである税理士に相談し、理解を深め、適切な対応をしていくことが大切です。
確定申告についてご依頼・ご相談は、税理士 中村太郎まで是非ご連絡ください!

こんにちは。税理士の中村太郎です。
今回は確定申告について。確定申告を行う必要がある人・行う際の必要書類・申告により税金が還付される人など、確定申告の基本を解説したいと思います。