延滞税とは?
まず初めに延滞税とはどういったものなのか解説していたします。
延滞税について
延滞税とは、法定納期限までに納付していない税額がある場合に発生する附帯税の一つで、具体的には、修正申告や期限後申告、税務署による更生や決定の処分があった際に発生します。
その国税の法定納期限の翌日から納付日までの期間(=納税が遅れた日数)に応じて計算される利息のような性質があり、基本的に納税が遅れるほど税額は高くなります。
ただし、納税不足額があることに気が付くまでの間、不公平がないよう、特例として延滞税の計算に含まれない期間も設けられています。
申告漏れに気がついたときは、早めに自主申告をすることで納付税額を軽減できる可能性があります。
書類が完全でなくても一旦提出し、後日修正申告するという手段もあります。
ご自身での対応が難しい場合は、お早めに確定申告の専門家である税理士への相談も検討ください。
弊所でも確定申告に関する相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
加算税との違いについて
加算税も、付帯税に分類される税の一つです。
延滞税が利息のように「期間」に対し、加算税は納付されなかった「税額」に対して発生します。
加算税には、以下の4種類があります。
過少申告加算税
期限内申告に対する修正申告や税務署の更生があった場合、その申告や処分によって納付する税額に対して発生する。
無申告加算税
期限内に申告をせず、期限後に行った申告や税務署の決定があった場合、その申告や処分によって納付する税額に対して発生する。
不納付加算税
源泉徴収した税額を納付しなかった場合、納付しなかった税額に対して発生する。
重加算税
上記の加算税に対し、事実の隠蔽や仮装があったとき、各加算税に代えて発生する。
延滞税が発生する場合について
申告等で確定した税額を期日までに納付しない場合
期限内申告書を提出して、その申告書の提出によって納める税額を、法定納期限までに納めなかったとき、期日の翌日から納付した日数までの延滞税が発生します。
修正申告を提出した際に納めるべき税額がある場合
修正申告書や、無申告の場合の期限後申告書を提出した際、その申告書の提出によって納める税額がある場合も、法定納期限の翌日から納付した日数までの延滞税が発生します。
修正申告書とは
期限内申告書や期限後申告書の内容に誤りがあって納める税額が少なすぎたとき、誤った箇所を修正して正しい納税額を申告するために提出する申告書のことです。
期限後申告書とは
法定の申告期限までは無申告で、期限を過ぎてから提出した申告書をいいます。
更生または決定の処分を受けた際に納めるべき税額がある場合
税務署の更生や決定の処分によって納める税額が発生した場合も、法定納期限の翌日から納付した日数までの延滞税が発生します。
更生とは
税務調査によって納税申告書に記載された課税標準額や税額の計算に間違いがあるとわかったときに、税務署が職権で、課税標準額や税額を正すことをいいます。納税者が自ら行う「更生の請求」(=申告内容に誤りがあって、納めすぎた税額の還付を受ける際の手続き)とは別物です。
決定とは
税務調査によって、無申告者などに対し、税務署が職権で課税標準額や税額を決定することをいいます。
延滞税の計算方法
延滞税の計算式は、「税額×延滞税の割合×計算期間/365日」となります。
各用語の解説は、後述します。
なお、納税した日が、納期限の翌日から2か月以内か、その翌日以降化によって、「延滞税の割合」が下記のように変わります。
納付期限翌日から2か月以内の場合
計算式
延滞税の額=税額×「年7.3%と特例基準割合+1%のいずれか低い割合」×計算期間/365日
ちなみに、計算期間が「令和3年1月1日から令和3年12月31日まで」の間の「特例基準割合+1%」は、「年2.5%」ですので、この期間中の延滞税の計算式は、「税額×年2.5%×計算期間/365日」になります。
納付期限翌日から2か月を超えている場合
計算式
延滞税の額=税額×「年14.6%と特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合」×計算期間/365日
計算期間が「令和3年1月1日から令和3年12月31日まで」の間の「特例基準割合+7.3%」は「年8.8%」ですので、この期間中の延滞税の計算式は、「税額×年8.8%×計算期間/365日」になります。
用語の解説
税額とは
税務申告や、税務署による更生や決定によって納めることとなった所得税や法人税などの税額のことです。
ただし、1万円未満を切り捨てますので、申告した税額や更生・決定によって納めることとなった税額が1万円未満であれば、延滞税は発生しません。
延滞税の割合とは
延滞税を計算するための年利のようなものですが、上記で少し見たとおり、この割合には、少し変わったルールがあります。
まず、原則の割合は「納期限」の翌日から2か月を経過する日(例:納期限が3月15日であれば、5月15日)と、その翌日以降(例:5月16日以降)で変わります。
2か月を経過する日までは「年7.3%」よりも「延滞税特例基準割合+1%」、「年14.6%」よりも「延滞税特例基準割合+7.3%」のほうが小さい場合は、「延滞税翌零基準割合+〇%」が適用されます。
延滞税特例基準割合とは
銀行の金利に基づいて毎年計算される、延滞税独自の税率のことです。
各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における、銀行の新規の短期貸出約定平均金利を延滞税の計算のために修正したものとなります。
基本的に「延滞税特例基準割合」のほうが原則の割合よりもかなり低くなるため、「延滞税特例基本的に「延滞税特例基準割合」のほうが原則の割合よりもかなり低くなるため、「延滞税特例基準割合」のほうが重要です。
ただし、各年の銀行の金利を基に計算される割合であることから、毎年微妙に変化します。
そのため、延滞税の計算期間によっては、使用する割合を変えなければなりません。
自身で延滞税を正確に計算したい場合は、注意が必要です。
納期限とは
延滞税の割合の話で、もう一つ知っておかなければならないのは、2か月以内かどうかの判定が「納期限」の翌日を基準に行われることです。
「納期限」は、法定納期限とは必ずしも一致しません。
申告方法によって、下記のように変化します。
- 期限内申告…法定納期限
- 期限後申告又は修正申告…申告書を提出した日
- 税務署による更生・決定…更生等の通知書を発した日から1か月後の日
無申告の場合、期限後申告の提出日や更生や決定の発出日の1か月後が、納期限となります。
誤解してはいけないのが、延滞税そのものは、法定納期限の翌日から発生することです。
ここでいう納期限の話は、あくまで延滞税の割合がいつから上がるかを考えるときの起算日の話ですので注意して下さい。
計算期間とは
遅れた日数のことです。
法定納期限の翌日から納付日までの日数になります。
無申告の場合の延滞税の計算例
令和2年分の所得税の確定申告について無申告で、期限後申告をして納税額が100万円だった場合を例に、延滞税を計算してみましょう。
なお、令和2年分の確定申告の法定納期限は、新型コロナウイルスの関係で令和3年4月15日ですので、延滞税は、令和3年4月16日から発生します。
- 令和3年4月30日に申告・納税した場合
延滞税1,000円
(計算式)
100万円×年2.5%×15日/365日≒1,000円(100円未満切り捨て)
- 令和3年5月31日に申告・納税した場合
延滞税3,100円
(計算式)
100万円×年2.5%×46日/365日≒3,100円(100円未満切り捨て)
- 令和3年6月30日に申告・納税した場合
延滞税5,200円
(計算式)
100万円×年2.5%×76日/365日≒5,200円(100円未満切り捨て)
- (半年後)令和3年10月15日に申告・納税した場合
延滞税1万2,500円
(計算式)
100万円×年2.5%×183日/365日≒1万2,500円(100円未満切り捨て)
- 令和3年4月30日に申告し、令和3年10月15日に納税した場合
延滞税3万1,000円
(計算式)
納期限は4月30日ですので、2か月を経過する日の翌日にあたる7月1日以降は割合が変わります。
100万円×年2.5%×76日/365日+100万円×年8.8%×107日/365日≒3万1,000円(100円未満切り捨て)
延滞税の計算期間の特例
税務調査等のタイミングによっては、かなり長期間にさかのぼって修正申告や更生などの処分が行われることがあり得ます。
ただし、こうしたケースでは一定の期間を、延滞税の計算期間に含めない特例があります。
この期間を「除算期間」といいます。
仮に法定納期限から納付日まですべての日数が等しく延滞税の対象になる場合、税務調査等が行われる時期の違いによって、納税者ごとに延滞税の負担に差が生じてしまいます。
この不公平を解消するため、下記の期間は、延滞税の「除算期間」とすることにしています。
(偽りや不正行為があって国税を免れたと認められる納税者に対しては、除算期間の適用はありません。)
【期限内申告書の提出あり】法定申告期限後1年を経過してから①修正申告又は②更生があったとき
下記の期間は、いずれも延滞税の計算期間に含めません。
- ①法定申告期限より1年を経過する日の翌日から、修正申告書が提出された日までの期間
- ②法定申告期限より1年を経過する日の翌日から、更生の通知書が発せられた日までの期間
【期限後申告書の提出あり】提出後1年を経過してから、修正申告(①)又は更生(②)があったとき
下記の期間は、いずれも延滞税の計算期間に含めません。
- ①期限後申告書の提出があった日の翌日から起算して1年を経過する日の翌日から、修正申告書が提出された日までの期間
- ②期限後申告書の提出があった日の翌日から起算して1年を経過する日の翌日から、更生の通知書が発せられた日までの期間
確定申告書を提出した後に減額更生がされ、その後さらに修正申告又は更生があったとき
衛生28年度税制改正で新設され、平成29年から適用されている除算期間です。
当初の申告(期限内申告や期限後申告)(①)が行われた後、減額更生(②)が行われ、さらにその後に修正申告や更生による増額更生(③)があった場合、下記の期間はいずれも延滞税の計算期間に含めません。
- 当初の申告(①)による納税日の翌日から、減額更生(②)の更生通知書が発せられた日までの期間
- 減額更生(②)が税務署による更生である場合、更生通知書が発せられた日の翌日から、修正申告書の提出や更生通知書(③)が発せられた日までの期間
ただし、減額更生(②)が納税者から「更生の請求」による場合、更生の請求の翌日から起算して1年を経過する日までは、延滞税の計算期間に含まれます。
いかがでしたでしょうか。
まず大事なことは期限内に申告することです。やむを得ない事情で期限後になった場合には、なるべく早く自主的に申告することが大切です。
決算日が近づいてきたら、早めの準備を心掛けましょう。
まいど!西新宿の税理士 中村です!
今回は【延滞税】について。
法人・個人共に確定申告の無申告にはいくつかペナルティがございます。
その中の一つ、延滞税について解説しておりますので是非ご一読ください!