東京都で医療法人を設立する流れ
まずは、東京都で医療法人を設立する際のおおまかな流れを確認しましょう。
申請先となる都道府県の判定
まずは、医療法人の認可申請先が東京都であるかを確認しましょう。
認可申請先となる都道府県は、設立しようとする医療法人の「主たる事務所」の所在地で決まります。
つまり、医療法人の認可申請先が東京都となるのは、主たる事務所が東京都内にある場合です。
主たる事務所とは、事業活動の中心となる場所を指します。
複数の事務所がある場合は、中心となる1か所を主たる事務所とします。
「医療法人設立の手引」を入手
医療法人設立の認可申請を行うには、定められた期日までに申請書類一式を準備し、担当部署へ提出して審査を受ける必要があります。
これらの書類の中には、都道府県ごとに指定された様式のものが多く含まれます。
そのため、医療法人を設立する際は、申請先となる都道府県のホームページなどで提出書類や様式を必ず確認する必要があります。
東京都では、保険医療局のホームページに掲載されている「医療法人設立の手引」に、申請の手順や申請書類の様式が示されています。
医療法人設立のための事前説明会は、東京都では現在開催されていません。
「医療法人設立の手引」などの資料が、説明会の代わりになります。
(参考)東京都保険医療局HP:医療法人の設立・運営
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/hojin
仮申請の期限までに書類を準備する
東京都では、医療法人設立の認可申請を常に受け付けているわけではありません。
毎年度8月と3月の2回にわたり、数日間の受付期間を設けて、医療法人設立の「仮申請」を受け付けています。
まずはこの「仮申請」において担当部署の審査を受けることにより、本申請に進むことができます。
したがって、東京都で医療法人を設立するには、8月または3月の受付期間内に申請書類一式を提出できるよう準備を進める必要があります。
参考までに、令和6年度の仮申請の受付期間は、以下の日程でした。いずれも5営業日とかなり短い受付となるため、注意しなければなりません。
第1回(8月) | 令和6年8月19日(月)~8月23日(金) |
第2回(3月) | 令和7年3月13日(水)~3月19日(火) |
(※)日程は年度ごとに変わるため、最新のものをチェックしましょう。
東京都の認可を受けた後の手続き
東京都から設立認可を受けた後、法務局で法人設立登記を行います。
登記が完了した後は、保健所や厚生局での手続き、医師会での手続き、金融機関や税務関連の手続きなども行います。
当事務所は医療法人設立のための書類作成の支援を行っております。お気軽にご相談ください。
東京都における医療法人設立のスケジュール
東京都における医療法人設立の仮申請の受付期間は、前述のとおり、8月と3月の2回となります。
ここでは、8月に仮申請する場合を例に、医療法人設立の全体のスケジュールを解説します。

【8月に仮申請する場合のスケジュール】
・6月:医療法人設立の準備開始
・7月~仮申請まで:定款案の作成、設立総会の開催、提出書類の準備
・8月:仮申請
・9月~12月:担当部署における審査
・確認後:本申請
・1月~2月初旬:東京都医療審議会における審議
・2月下旬:「医療法人設立認可書」の交付
・認可後:2週間以内に法人設立登記を行う
・登記完了後:都道府県に登記事項の届出を行う
・3月~4月:(登記完了後)関係機関での手続き
以下、それぞれ詳しく解説します。
【6月】医療法人設立の準備開始
まずは、東京都の「医療法人設立の手引」を入手します。
そして、医療法人設立の際に必ず満たさなければならない「人事・財産・施設・予算」に関する要件を把握し、人員や設備、財産の調達方法といった基本的な準備を早めに開始します。
医療法人の「人事・財産・施設・予算」に関する要件については、以下の記事でわかりやすく解説しています。
【7月~仮申請まで】定款案の作成、設立総会の開催、提出書類の準備
医療法人設立のための準備が整ったら、定款案の作成、設立総会の開催、東京都へ提出する必要書類の作成・収集を行います。
必要書類については、記事の後半でまとめます。
【8月】仮申請
仮申請の受付期間内に、東京都庁の「保険医療局医療政策部医療安全課」宛てに申請書類一式を郵送します。
郵送の際は、次の点に注意が必要です。
・受付期間内に必着すること
・書留郵便か特定記録で郵送すること
・封筒表面にわかりやすく「仮受付」と朱書きすること
【9月~12月】担当部署における審査
仮申請からおおむね1か月後、担当部署から審査を開始する旨のメールが届き、書類の内容の審査が始まります。
審査では、保健所等の関係機関への照会も併せて行われます。
【1月~2月初旬】医療審議会における審議
本申請後は、東京都医療審議会への諮問・答申が行われます。
【2月下旬】「設立認可書」の交付
東京都から「医療法人設立認可書」が交付されます。
認可後:2週間以内に法人設立登記を行う
医療法人設立認可書の交付や基金の払込みなど必要な手続きが完了した日から2週間以内に、法務局に法人設立登記を申請します。1週間から10日ほどで登記が完了します。
【登記完了後】都道府県に登記事項の届出を行う
登記完了後は、都道府県に登記事項の届出を遅滞なく行います。
【3月~4月】関係機関での手続き
登記が完了した後は、保健所や厚生局での手続き、医師会での手続き、金融機関や税務、ライフライン関連の手続きを行います。
所管の保健所では、有床の場合の使用許可申請や開設許可申請、個人の診療所廃止届や診療所開設届などの手続きを行います。
関東信越厚生局東京事務所では、保険医療機関指定申請を行い、その指定を受けます。
金融機関や税務、ライフライン関連では、それぞれの窓口に対し、医療法人として新たに事業を始めるための諸手続きを行います。
医療法人設立の認可申請で東京都に提出する書類
医療法人設立の認可申請のため、東京都に多くの書類を提出しなければなりません。
提出する書類は、その性質から「総括・財産関係・人事関係・施設関係・予算関係」に分けて把握すると整理しやすくなります。
以下、この5つの部分に分けたそれぞれの書類を紹介します。
注意:令和6年度の東京都による説明資料から作成しています。必ずご自身が申請する年度の情報もご確認ください。
医療法人の総括書類
以下は、医療法人の設立申請をする際に必ず作成する書類です。
作成書類 | 内容 |
受付表 | ・東京都の様式 |
医療法人設立認可申請書 | ・東京都の様式 |
定款 | ・設立総会で成立した定款(東京都の定款例あり) |
設立総会議事録 | ・設立総会の議事録(東京都の様式例あり) |
財産関係書類
財産関係の書類は、個人から法人に財産を拠出したり、基金制度を採用して拠出する場合など、財産の調達方法によって必要書類が変わります。
また、負債を引き継ぐ場合は、債権者からの承諾を証明するための書類も必要になります。
ひとつひとつの書類がかなり煩雑であるため、税理士に作成を依頼することがおすすめです。
主な作成書類 | 主な収集書類 |
【財産を拠出する場合】 ・財産目録、明細書、減価償却計算書 【現物拠出の総額が500万円を超える場合】 ・拠出価額証明書(税理士などの証明が必要) 【負債を引継ぐ場合】 ・負債内訳書、負債説明資料 ・負債残高証明及び債務引継承認願 (金融機関などの承諾が必要) 【基金制度を採用する場合】 ・基金拠出契約書等 【基金制度を採用しない場合】 ・拠出申込書 【リース物件がある場合】 ・リース物件一覧表 ・リース負債内訳書、割賦未払金の内訳書 ・負債残高証明及び債務引継承認願、リース引継承認願 (リース会社などの承諾が必要) | 【拠出する財産に応じて準備】 ・不動産鑑定評価書または固定資産評価証明書 ・預金残高証明書 ・車検証の写し ・直近の保険診療報酬通知書など 【引継ぐ負債に応じて準備】 ・契約書や領収書など各負債の根拠書類 【リース物件がある場合】 ・リース契約書(写し) |

当事務所でも、医療法人設立のための書類作成の支援を行っております。お気軽にご相談ください。
人事関係書類
人事関係書類は、関係者に作成を依頼するものが多いため、早めに声をかけて手配しておく必要があります。
主な作成書類 | 主な収集書類 |
・役員・社員名簿 ・履歴書(実印押) ・委任状(設立代表者への手続きの委任) ・役員就任承諾書(実印押) ・管理者就任承諾書(実印押) | ・印鑑登録証明書 ・理事長医師免許(写し) ・管理者医師免許(写し) ・理事医師免許(写し) |
施設関係書類
診療所等の土地・建物に関する書類です。
所有物件の場合と賃貸物件の場合で、準備する書類が異なります。
主な作成書類 | 主な収集書類 |
【所有物件の場合】 ・診療所等の概要 (周辺の概略図や建物平面図の添付が必要) ・施設等の概要(附帯業務用) 【賃貸物件の場合】 ・賃貸借契約引継承認書(覚書) ・近傍類似値に関する書類 (医療法人の関係者から不動産賃借を行う場合に作成) | ・不動産賃貸借契約書(写し) ・土地・建物の登記事項証明書など |
予算関係書類
予算関係の書類は2年分必要です。(初年度が6か月未満の場合、一部書類は3年分)
東京都の独自の様式で作成しなければならず、こちらも財産関係と同じく作成に時間のかかる書類となっています。
主な作成書類 | 主な収集書類 |
・事業計画書(2年または3年) ・実績表(2年または3年) ・予算書(2年分) ・予算明細書(収入・支出) ・職員給与内訳書 | ・確定申告書、青色申告決算書等(2年分) 【個人診療所の開設実績がある場合】 ・個人診療所の開設届や変更届(写し) |

東京都の予算関係書類は記載例がなく、作成が特に難しい書類です。当事務所にお気軽にご相談ください。
まとめ
認可申請は8月と3月の限られた期間にしかできず、そこから逆算した書類などの事前準備や認可後に行う手続きを考えると、1年近くの期間が必要となる。
特に、定款案の作成や設立総会、財産、予算、人事に関する書類作成は、早めの準備が重要。
書類の不備があると仮申請が受理されず、スケジュール全体に遅れが生じる可能性があるため、余裕を持って進めることが求められる。

いかがでしたでしょうか。
今回は東京都で医療法人を設立するためのスケジュールを詳しく解説しました。
当事務所では、医療法人設立のスムーズな設立に向けて、スケジュール管理や書類作成などをサポートしております。
ぜひお気軽にご相談ください。
まいど!西新宿の税理士 中村です!
東京都で医療法人を設立する場合、最初にやらなければならないことは東京都知事への認可申請です。
この記事では、東京都で医療法人を設立するための全体のスケジュールについて解説します。
是非ご一読ください!