会社設立(法人化)のメリットは?
会社を設立して法人化することには、個人事業にはないメリットがたくさんあります。
この記事では、会社設立(法人化)に具体的にどういったメリットがあるのかを解説します。
信用が得られやすくなる
会社を設立することで、顧客、取引先、金融機関などからの信頼性が増します。
会社を設立することには、手間もコストもかかりますし、知識も必要です。
中途半端な覚悟でできることではありませんので、社長に事業を継続する強い気持ちがあることがわかります。
また、登記簿を見れば、会社が設立何年目なのか、代表者や役員はどこの誰なのか、資本金や出資金はいくらなのかなどがすべてオープンになっていることも、信頼されやすい理由の一つです。
これに対して個人は、事業の中身が見えにくいため、信頼してもらうためのハードルが高くなります。法人でなければ継続的な取引はしないと決めている会社もあります。
節税面でのメリット
・法人税の税率は所得税より低くなりやすい。
会社を設立して法人化したら、事業で得た収入は会社のものとして計上され、「法人税」、「法人事業税」、「法人住民税」がかかるようになります。
これらを合わせた法人税等の税率は、会社の売上げにもよりますが、資本金が1億円以下の企業なら30%ほどです。
これに対して、個人事業では、事業から得た収入を他の収入を合算し、そこからさまざまな控除額を差し引いた後の課税所得から、「所得税」(5%~45%)や「住民税」(10%)が計算されます。
個人の課税所得が695万円以上になると、それを超える部分にかかる所得税と住民税の税率は33%となります。
さらに個人事業から得た収入には、「個人事業税」(3%~5%)もかかります。
このことから、課税所得が700万円~800万円ほどあれば、法人化を検討したほうが節税に有利になりやすいです。
・社長なのに「給与」がもらえる
会社を設立して社長に就任すると、会社から給与(役員報酬)を受け取ることができます。
給与は、会社の経費になる上、受け取った社長個人の「給与所得」となります。
「給与所得」とは、個人の所得税や住民税を計算するときの所得の種類のことです。
課税対象になるのは、給与の総支給額から「給与所得控除額」を差し引いた額になります。
社長に給与を支払うだけで、会社の節税になり、さらに個人の所得税や住民税も「給与所得控除額」の分だけ非課税になるということです。
個人の場合、事業主に払う給与は経費にならず、全額が個人の所得税・住民税・事業税の対象になります。
経費の幅が広がる
個人事業では、同一生計の配偶者や親族に支払う金銭は、事業専従者を除いて経費にできません。また、個人での利用部分と明らか区別できない費用も経費にできません。
しかし法人にはこうしたルールはありませんので、個人よりも経費にできるものの幅は広がります。
ただし、個人のために会社から特別に支払った金銭や私的利用させている物は、給与として個人課税の対象になる可能性があるので注意が必要です。
その他メリット
・資金調達が楽になる
法人化することで、金融機関からの信頼性が増し、資金調達がしやすくなります。
また株式会社のように有限責任であれば、株主からの出資も集めやすいといえます。
・求人に人が集まりやすい
法人化すれば、信頼性が増すことから、優秀な人材を採用しやすくなります。
法人であれば安定しているイメージがあることや、社会保険の加入義務があること等から、安心して人が集まります。
・決算日を設定できる
個人は、所得税の計算が1月1日から12月31日までですので、自動的に12月に決算をすることになります。
法人化すれば、定款で決算月を好きな月に設定することができます。
多忙な時期などを避けて設定すれば、本業に集中しやすくなります。
・事業承継がしやすい
法人化すれば事業承継を株式の贈与で行うことができます。
株式を贈与すれば、会社の経営権を包括的に引き継げるので、個別の資産の名義変更などをする必要がありません。
・個人資産が差し押さえを受けない
株式会社の株主は有限責任ですので、万が一、会社が倒産しても出資額を超えて責任を負いません。
そのため個人の財産を守ることができますし、前述のとおり、出資も集めやすいといえます。
ただし、金融機関から融資を受けるとき、代表者個人を連帯保証人とすることを求められる場合があります。こうした借入金は、会社が倒産しても返済しなければなりません。
また無限責任となる会社の形態もあります。
会社設立(法人化)のデメリットは?
会社設立・運営に時間やコストがかかる
株式会社の設立は、発起人を決め、定款作成や出資の履行、役員の選任を行い、会社の設立登記(商業登記)を申請して行います。
これらの準備をご自身でゼロから進められる場合は、1~2ヶ月ほどの期間を要すると考えておいたほうがよいでしょう。
また、会社の設立までには、コストも発生します。
出資はもちろんですが、「定款」や「設立登記」にも、お金がかかります。
専門家へ支払うコストが発生
【定款のコスト】
定款にかかるコストは、以下のとおりです。
・定款の作成 印紙税4万円(電子定款は不要)
・定款の認証 5万円(株式会社の場合)
・定款の作成料(任意)
定款の作成を専門家に依頼する場合は、その作成料が別途発生します。
なお、株式会社ではなく持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)を設立する場合、定款の認証は不要ですので、その分だけコストは安くなります。
【設立登記のコスト】
会社の設立登記は、法務局に申請して行います。
申請の際には、登録免許税として、株式会社であれば最低15万円が必要です。
正確には「資本金の額×0.7%」で計算されますが、その結果が15万円未満のときは15万円となります。
これに対し、合名会社・合資会社の登録免許税は一律6万円、合同会社は出資金の額×0.7%で最低額は6万円になります。
このほか、登記の申請を司法書士に代行してもらう場合は、その依頼料も別途発生します。
【運営にかかるコスト】
会社の設立後も、個人事業のときにはなかったコストが発生します。
まず、株式会社には決算公告の義務があります。
方法は、新聞掲載、官報掲載、電子公告があり、それぞれ必要な金額が異なります。
電子公告であれば、自社のホームページに掲載すればよいため掲載料はかかりませんが、掲載内容に別途ルールがある点に注意が必要です。
官報掲載であれば、中小企業の非公開会社がもっとも安価となりますが、それでも7万円ほどかかります。
新聞なら数十万円です。
他にも税金では、赤字でも発生する法人住民税の均等割(7万円)や、登記内容を変更するたびに、変更内容に応じた登録免許税が発生します。
社会保険への加入が義務づけられる
会社と個人事業主では、社会保険の加入義務の判定基準が異なります。
そもそも社会保険は、まず事業所単位(会社・個人事業主単位)で加入義務があるかどうか、その次に、従業員ごとに加入義務があるかを判断します。
個人事業主であれば、加入義務があるのは、常時5人以上の従業員を雇っている場合です。
これに対し、会社は社長一人でも加入が必要になります。
たとえ個人事業を法人化し、これまでと同じ運営体制であったとしても、社会保険料の負担が生じるので注意が必要です。
事務負担の増加
会社の運営には、個人事業のときにはなかったルールがあり、それによってさまざまな事務が必要になります。
主な事務を解説します。
・【株主総会の開催】
株式会社では、会社として一定の事項を決めるとき、定時株主総会や臨時株主総会を招集して決議します。
何について決議が必要となるかは、取締役会があるかどうかや定款の内容で変わってきます。
・【計算書類等の作成】
株式会社は、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本変動等計算書、個別注記表)、事業報告、附属明細書を作成し、このうち計算書類と附属明細書には、10年間の保存義務があります。
また、計算書類、事業報告、附属明細書、監査報告などは、定時株主総会の1週間前(取締役設置会社は2週間前)から5年間、本店に備え置く義務があります。(支店には写しを3年間)
・【税務申告】
個人事業主の間は、税務署への確定申告のみで税務申告を終えることができました。
しかし会社になると、税務署、都道府県税事務所、市区町村の3箇所に税務申告を行います。(特別区は、税務署と都税事務所の2箇所)
納める税金の種類は、主に法人税、法人事業税、法人住民税となります。
個人事業税や個人住民税とは異なり、法人事業税や法人住民税は会社で計算しなければなりません。
個人事業主から会社設立(法人化)の基本的な流れ
会社の基本事項を決定する(必須事項を詳細説明)
株式会社や合同会社を設立するには、最終的に、会社の設立登記(商業登記)を完了させなければなりません。
まずは社名、事業目的、本店住所、役員構成、資本金(出資金)などの基本事項を決定し、それに基づき、定款作成から始めます。
【社名】
社名は、何でも良いと思われがちですが、以下のルールがあることに注意が必要です。
・会社の種類に従って、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社という文字を入れること
(「株式会社」を「KK」等に代えることは認められていません。)
・会社の種類を誤認されるおそれのある文字は使えない
・不正の目的で、他の会社であると誤認されるおそれのあるものも使えない
ちなみに、ローマ字やアラビア数字、字句を区切るための一定の記号、ローマ字であればスペースも使えます。
詳しくは下記をご覧ください。
法務局HP
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html
なお社名は、定款や登記上では「商号」にあたります。
【事業目的】
事業内容は、何を販売しているのか、何のサービスの提供をしているが端的にわかる内容を決めます。
1つに限らず、複数個あって構いません。
似たサービスを行っている他社のものを参考にするとよいでしょう。
【本店住所】
定款や登記において、「本店の所在地」等として定められる内容となります。
たまに、とりあえず自宅を本店として会社の設立を済ませ、その後オフィスを借りて、そこを支店とするケースがありますが、支店が別の都道府県や市区町村にあると、法人住民税の負担が増えますので注意が必要です。
【役員構成】
会社の経営を行う取締役を決めます。
個人事業から法人化する場合は、一人、あるいは配偶者と二人で取締役になるケースが多いです。
ただし、取締役会設置会社とする場合、取締役は3人以上必要で、その中から代表取締役を決めることとなります。
取締役を決めるタイミングは、発起人による出資の履行が完了した後、遅滞なく行うこととされています。
【資本金(出資金)】
会社の経営の原資です。
金銭のほか、現物での出資も認められます。
必要書類や定款等を準備・作成
会社の基本事項を決定したら、会社法で作成が義務付けられている定款の作成や会社の設立登記に必要となる書類を準備します。
定款とは、設立目的や商号、所在地など、一定の事項を記載した、会社の必要最低限のルールブックです。
どの会社でも必ず決めなければならない項目に、以下のものがあります。
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所
株式会社であれば、上記に、株式についての内容も記載しなければなりません。
また、上記のほか、定款にあえて記載することで効力が生じるものもあります。
この部分を使って、法律の規制を緩めたり、逆に強めたりすることが可能です。
このことから、会社の設立目的や経営体制に合った定款を、司法書士や行政書士に相談して作成する方もいます。
公証人による定款認証を行う(株式会社の場合)
株式会社の場合、定款はただ作成するだけでは有効なものになりません。
有効なものとするには、公証役場において公証人の認証を受けることが必要になります。
定款認証の手続きは、紙で作成した定款を認証する場合と、電子定款の認証をする場合とで異なります。
なお、合同会社の設立であれば、定款認証の必要はありません。(定款の作成は必要です)
法務局で登記申請を行う
必要書類が整ったら、法務局で登記を申請します。
登記完了まで1週間ほどかかりますが、会社の設立日は登記日にさかのぼります。
よって、申請日は縁起のよい日を選ぶ方が多いです。
登記申請の注意点
・添付書類をチェック
登記申請には、申請書の作成と添付書類が必要になります。
詳しくは法務局のホームページでご確認ください。
・オンライン申請の活用
一人会社の設立で出資が金銭のみなど、一定の要件にあたる設立であれば、完全オンライン申請が可能です。
詳しくはこちらをご覧ください。
法務局HP
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00117.html
また令和3年2月15日以降、オンライン申請の場合は、印鑑の提出が任意となります。
会社を設立(法人化)した後に必要な手続きは?
個人事業を法人化した後に必要となる、金融機関と税務の手続きを解説します。
個人事業の廃業手続き
【個人事業の廃業関係書類(税務関係)】
・個人事業廃業届
・消費税の事業廃止届(課税事業者のみ)
まずは「個人事業廃業届」を提出します。
提出先は、税務署と都道府県税事務所です。
税務署の場合は廃業から1ヶ月以内、都道府県は自治体のルールに従います。(参考:東京都は10日以内)
国税庁HP:個人事業の開業届出・廃業届出等手続
httpss://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
続いて「消費税の事業廃止届」は、消費税の課税事業者であり、その事業を廃止する場合に提出します。法人化する事業以外に課税売上げのある個人所得(例:不動産所得など)があれば、引き続き、個人での消費税の納税義務が生じますので注意して下さい。
ちなみに「給与支払事務所の廃止届」は、廃業届を出せば新たに提出する必要はありません。
法人の設立関係書類(税務関係)
法人の設立関係の提出書類もあります。
・法人設立届出書
・給与支払事務所等の開設届
(以下、必要に応じて提出)
・源泉所得税の納期の特例に関する申請書
・棚卸資産の評価方法の届け出
・減価償却資産の償却方法の届け出
など
注意していただきたいのは「法人設立届出書」で、その提出先が、税務署・都道府県・市区町村の3つに分かれています。(特別区は税務署・都税事務所の2つ)
提出期限は、税務署が設立登記の日から2ヶ月以内、それ以外は自治体のルールを確認しましょう。(東京都は事業開始から15日以内)
基本的に定款の写しを付けて提出しますが、自治体によってはこれ以外の書類が必要になることもあります。(東京都は登記事項証明書の添付が必要)
それ以外は、税務署のみに提出します。
「給与支払事務所等の開設届」は、開設から1ヶ月以内に提出します。
「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」は、給与等から天引きする「源泉所得税」の納期限を、毎月から年2回(※)に変更するための書類です。常時使用する従業員が10人未満の場合に提出できます。支払いの手間が減らせますので、検討しましょう。個人事業主として承認を受けていたとしても、会社として新たに提出し直す必要があります。
棚卸資産や減価償却資産に関する届け出は、評価方法や償却方法を法定のものから変更したい場合のみ、提出すればよいです。
なお、次の「青色申告」の手続きも必ずご覧ください。
(※)1月~6月分:7月10日まで、7月~12月分:翌年1月20日まで
「青色申告の承認申請書」を提出(個人事業主として青色申告の承認を受けていた場合)
個人事業主として青色申告の承認を受けていた場合、その取りやめを行い、会社として新たに承認を受ける必要があります。
【個人の青色申告の取りやめ】
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を税務署に提出して行います。
提出期限は、青色申告をやめる翌年の3月15日までです。
【会社の青色申告の承認】
法人用の「青色申告の承認申請書」を税務署に提出します。
設立した事業年度から青色申告を始めたい場合は、次のいずれか早いほうの日の前日が提出期限になります。
・設立の日以後3ヶ月を経過した日
・その事業年度終了の日
「青色申告の承認申請書」は、「法人設立届出書」と一緒に、設立してすぐに提出することが一般的です。
ちなみに、会社で青色申告をしても、個人事業主の65万円の控除にあたるものはありませんが、
・繰越欠損金の繰越控除
・欠損金の繰り戻し還付
・30万円未満の資産の損金算入
・その他、青色申告法人に認められる優遇税制の適用
などの特典があります。
個人事業の確定申告も忘れずに
個人事業を法人化する際、法人化した年には、個人事業主としての最後の確定申告を行います
確定申告の時期
確定申告の期限は、通常と同じ、所得が発生した翌年の2月16日から3月15日までとなります。(ただし、新型コロナウィルスの影響で期限延長となる場合があります。)
期日が土日と重なるときは、翌開庁日となります。
毎年、1月1日から12月31日までの間の所得を申告するところ、法人化の年は、1月1日から個人事業の廃業日までの確定申告を行うイメージとなります。
法人化した年の個人確定申告のポイント
・法人化の準備中に発生した経費の扱い
個人事業を営みながら法人化の準備をしている間、会社設立のための経費が発生します。
この場合、会社設立のための経費を個人事業のものとするか、法人のものとして法人設立第1期のものにするのかという疑問が生じます。
まず、個人で営む事業を設立後の会社に引き継ぐ場合、法人設立前の経費は、個人事業の必要経費として扱います。
これに対し、新たな事業のために会社を設立する場合は、法人の設立前に発生した損益でも設立1期目の損益として計上することが認められています。
・個人事業税の申告が必要に
個人事業税とは、個人の事業所得などに対して発生する地方税です。
納付先は、税務署ではなく都道府県税事務所になります。
税務署に確定申告をすれば、都道府県税事務所に申告をする必要はなく、確定申告の情報をもとに税額が計算され、8月頃に納税通知書が送付されます。
ただし、個人事業を廃業するときは、「事業廃止申告書」によって、その年の1月1日から廃業日までの所得を申告する必要があります。
申告期限は、自治体ごとに確認しましょう。
・個人事業税の見込み控除
個人事業税は、支払った事業年度の必要経費とすることができます。
つまり、発生した所得に対して一年遅れで必要経費にすることが通常です。
ただし、特例として最後の確定申告後に税額が通知された場合は、更正の請求によって還付を受けることになります。
このとき、更正の請求の事実が生じた日の翌日から2ヶ月以内という期限があるので注意が必要です。
なお、この扱いのほか、個人事業税には「見込み控除」が認められています。
確定申告をする際、まだ通知されていない個人事業税を見込みで計上し、必要経費とする方法です。
計算式は下記の方法となります。
(A+B)✕C÷(1+C)
A:事業税の課税見込額を控除する前の年分の事業所得の金額
B:事業税の課税標準の計算上Aの金額に加算し又は減算する金額
C:事業税の税率(3%~5%で、業種ごとに決められています)
設立した会社への財産移行が可能
移行手段について
新しく会社を設立するには、事務所や備品の準備など、新しく事業を始めるためのコストも考えなければなりません。
しかし個人事業をそのまま法人化するケースでは、個人事業のときに使用していた設備を新しい会社に移行させることで、初期投資額を大きく抑えることができます。
しかし、個人事業を法人化したといっても、個人と会社は法律の上で別人格となります。
そのため、個人の財産を会社にタダで移行することは贈与にあたります。
するとこの場合、税金の問題が、個人・法人の両方に生じる結果となります。
ではどうやって個人から会社に財産を移行させるかというと、一般的には、次の3つのいずれかの方法で財産を移行します。
・売買契約
個人から会社に資産を売却する方法です。
減価償却ができる資産には、基本的に中古資産の耐用年数の適用があるため、新品よりも早く経費にすることができます。
売買という身近な法律行為で完結できるため、わかりやすいことにメリットがあります。
・現物出資
会社への出資は、現物の給付によることも認められます。
これを活用して、個人事業時代に使っていた資産を会社に出資して引き継ぐことができます。減価償却も可能です。
金銭による出資と同様に、出資をした個人は、会社の株式や持ち分を得ることができます。
金銭なしで資本金を計上できる点にメリットがあります。
・賃貸借契約
個人所有のまま、会社にレンタルするという方法もあります。
財産を会社の所有物にしたくないときに有効です。
契約の注意点について
売買契約、現物出資、賃貸借契約にはそれぞれ注意点があります。
・売買契約の注意点
個人の資産を売却して利益が発生すると、そこに所得税がかかります。
しかし、これを避けるためにわざと低い金額で売却すると、今度は個人・法人のそれぞれに税金が発生することがあります。
では、どのくらい低い金額で譲渡すると、個人と法人に税金がかかるのでしょうか。
税法では、売却のことを「譲渡」といいますが、譲渡する財産が、棚卸資産であるときと、それ以外の財産であるときで分けて考える必要があります。
まず、棚卸資産のときは、通常の販売価額の70%を下回る金額で譲渡すると、個人側は「販売価額の70%の金額」で譲渡したものとして扱われ、70%との差額を事業所得の売上高に計上することになります。
これに対し、不動産や機械、備品などの財産の譲渡では、時価の2分の1未満で売却すると、「時価」によって譲渡したものとみなされ、譲渡所得の収入金額に計上することになります。
ただし、2分の1以上であっても、「同族会社等の行為又は計算の否認」には注意が必要です。
これは、同族会社の役員が会社と取引をすることで、法人税や所得税の負担を不当に減少させる結果になっているとき、税務署の判断で税額を計算し直せるというルールになります。
会社側は、常に時価で取得したものとみなされるので、支払った金額と時価の差額に法人税がかかります。つまり、時価より安く買い取ると税金がかかるということです。
・現物出資の注意点
現物出資の際は、会社法上の必要な手続きがあること、そして税金のリスクの両方に注意が必要です。
現物出資には、出資する財産の価格調査、定款への記載などの手続きが必要となります。
さらに財産が500万円を超える場合は、検査役の調査が必要になることもあります。
そして、現物出資もまた、時価の2分の1未満で会社に財産を移行すると、売買契約のときと同様に、譲渡に対する税金が生じます。
このときは、現物出資によって取得した株式などの時価で、財産を譲渡したものとみなされます。
・賃貸借契約の注意点
会社は個人に使用料を支払うので、会社側は経費としての処理、個人側は賃貸料を得ることになります。
会社から得た賃貸料は、個人の所得になります。
特に、同族会社の役員が、会社から不動産の賃料や機械、器具などの使用料の支払いを受けると、金額にかかわらず確定申告が必要になるので注意してください。
最適な手段は売買契約?
個人事業を法人化するときの財産の移行は、売買契約が適しています。
法律上の取り扱いがシンプルだからです。
税金対策としては、基本的には時価で譲渡することを検討します。
ただし、必ずしもそれがベストであるとは限りません。
最適な金額については、税理士にご相談ください。
いかがでしたか?
今回の記事では起業を考えておられる方へ向けて、会社設立(法人化)の方法や設立した後に注意する点等を中心に解説しました。
今回の記事が、会社設立を考えるすべての人の力になれることを願っています。
こんにちは。税理士の中村太郎です。
今回は起業を考えておられる方へ向けて、会社設立(法人化)の方法やメリット・デメリットについてわかりやすく解説したいと思います。
今回の記事が、会社設立を検討している方の参考になれば幸いです。