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飲食店がインボイス制度に対応するために必要な準備について解説

税理士中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

今回は【飲食店のインボイス制度】について。

弊所で使用している会計ソフトもインボイス対応バージョンにアップデートが行われるなど、インボイス制度開始時期が近付いていることを実感しております。

そんな中今回は【飲食店】におけるインボイス制度について、詳しく解説しております。

是非ご一読ください!

インボイス制度が与える飲食店への影響

インボイス制度とは、複数税率に対応した請求書等の交付をインボイス発行事業者に義務付けることによって、消費税の仕入税額控除を適正にするための制度です。

飲食店は、軽減税率が導入された時から複数税率への対応をおこなってきたところだと思いますが、今回のインボイス制度において、新たに次の影響を受けることになります。

影響1:お客さんに発行するレシート等の記載事項が変わる

2019年10月から、消費税の税率が10%に引き上げられるとともに、飲食料品など一定の商品販売にかかる税率を8%とする軽減税率が導入されました。

同月以降、消費税の申告において仕入税額控除を適用するには、税率ごとに区分した合計額などを記載する「区分請求書等」の保存が求められます。

令和5年10月から開始されるインボイス制度では、保存対象が「区分請求書等」から「適格請求書(インボイス)」に替わります。

「適格請求書」では、発行する事業者の登録番号や、税率ごとに区分した消費税額の記載などが必要になります。

区分記載請求書等保存方式

(~R5.9.30)

適格請求書等保存方式

(R5.10.1~)

①書類作成者の氏名又は名称

②取引年月日

③取引の内容(軽減税率の対象取引があれば、その旨)

④税率ごとに合計した税込価額

⑤書類の交付先

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②取引年月日

③取引の内容(軽減税率の対象取引があれば、その旨)

④税率ごとに区分した税抜価額又は税込価額の合計額及び適用税率

税率ごとに区分した消費税額等

⑥書類の交付先

影響2:「適格請求書」を発行するには登録申請が必要

インボイス制度では、消費税の課税事業者が、経費の支払い先から受け取った請求書等から計上する「仕入税額控除」の適性化が行われます。

具体的には、請求書等に基づいて仕入税額控除を適用する際、「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書(インボイス)」の保存が原則として必要になります。

つまり、仕入れ先や経費の支払い先が、「適格請求書発行事業者」(インボイス発行事業者)でなければ、原則として仕入税額控除を適用できないということです。

このことは、飲食店の利用客から代金を受け取る「売り手側」としての立場と、食品業者や農家から食材等を仕入れたり、店舗の家賃などを支払ったりする「買い手側」としての立場の両方に影響があります。

影響3:「インボイス発行事業者」になると課税事象者

上記の影響から、事業者は、売り手側の立場として「インボイス発行事業者」になることを検討する必要があります。

インボイス発行事業者になるには、国税庁に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出することが必要です。

ただし、この登録申請が承認されるためには、消費税の課税事業者であることが必須であり、免税事業者がインボイス発行事業者に登録したい場合は、課税事業者になることを検討しなければなりません。

上記の3つの影響を踏まえて、飲食店が免税事業者であるときと課税事業者であるときに分けて見ていきます。

飲食店が免税事業者のとき

免税事業者である飲食店の対応としては、まずは「インボイス発行事業者」に登録するかどうかを検討することが必要です。

登録しなければ、課税事業者である利用客に「適格請求書(インボイス)」を交付することができません。その場合、利用客は、その飲食店で支払った取引先の接待の費用や会社の懇親会の費用などについて仕入税額控除を適用できず、消費税の納税額が増えてしまいます。

そのため、免税事業者である飲食店は、そのままだと課税事業者である客から店を利用してもらえなくなる可能性があります。

免税事業者である飲食店はこのことを踏まえて、まずはインボイス発行事業者に登録するかどうか、言い換えると、課税事業者になるかどうかを検討する必要があります。

飲食店が課税事業者のとき

課税事業者である飲食店においても、利用客に適格請求書(インボイス)を交付するには、インボイス発行事業者に登録する必要があります。

また、インボイス制度開始後は、受け取った請求書等がインボイスの要件を満たしているかを確認しながら経理をし、保存することが必要になります。

ただし、簡易課税制度を選択している飲食店であれば、仕入税額控除を実額ではなく売上税額から割合で計算できるため、インボイスの保存は必要ありません。

インボイス制度による飲食店の確定申告への影響

インボイス発行事業者に登録するために免税事業者から課税事業者になる飲食店にとっては、消費税の申告を始めなければならず、そのために普段の経理の方法から見直さなければなりません。

また、インボイス制度の開始から一定期間は、仕入税額控除の経過措置が適用されるため、通常時よりも注意すべき点が多くなります。

インボイス制度開始後の消費税の申告は、税理士に依頼することを検討しましょう。

飲食店がインボイス制度に備える準備

インボイス発行事業者への登録を検討する

まずは、インボイス発行事業者に登録すべきかどうかを判断します。

仮に、飲食店の利用客がすべて一般の消費者であったり、消費税を申告する義務のない免税事業者やインボイス保存をしなくてもよい簡易課税事業者であったりすることがあらかじめ分かっていれば、インボイスを発行する必要はありませんが、飲食店は一般的に不特定の方が利用しますので、登録の検討からスタートする必要があります。

免税事業者である飲食店の場合、インボイス発行事業者に登録すると、消費税の申告と納税による金銭的・事務的負担が増加しますので、それらを踏まえて必要性を検討することになります。

簡易課税制度の適用を検討する

インボイス制度への登録と合わせて検討しておきたいのが、簡易課税制度の適用です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、税務署への届け出によって選択できます。

簡易課税制度を選択すれば、売上税額に対するみなし仕入れ率(飲食店業は60%)で仕入税額控除を計算できるようになるため、仕入税額控除のためにインボイスを保存する必要はありませんし、納税額も一般課税より少なくなることが多いです。

なお、免税事業者からインボイス発行事業者になったことによって消費税の納税義務を負う事業者は、令和5年10月1日~令和8年9月30日を含む課税期間における消費税の申告において、売上税額の80%を仕入税額控除にできる経過措置が設けられます。

この措置は、簡易課税制度を選択していても適用できます。

インボイスの記載事項を確認する

インボイス発行事業者に登録をした後は、利用客の求めに応じて「適格請求書(インボイス)」の要件を満たす請求書等(レシートや領収書等でOK)を発行する義務が生じます。

飲食店業の場合、不特定のお客さんを相手にしますので、交付相手の名称等を記載しなくてもよい「適格簡易請求書」(簡易インボイス)の交付が一般的になります。

「適格請求書」と「適格簡易請求書」の記載要件の違いは、下記のとおりです。

適格請求書適格簡易請求書

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②取引年月日

③取引の内容(軽減税率の対象取引があれば、その旨)

④税率ごとに区分した税抜価額又は税込価額の合計額及び適用税率

⑤税率ごとに区分した消費税額等

⑥書類の交付先

①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号

②取引年月日

③取引の内容(軽減税率の対象取引があれば、その旨)

④税率ごとに区分した税抜価額又は税込価額

税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率(※)

(※)適用税率しか記載しなかった場合、売上税額の計算に「積上げ計算」を適用できなくなります。飲食店の販売形態によっては「積上げ計算」のほうが有利になる場合がありますので、できれば両方とも記載しておくことがおすすめです。

複数税率対応のレジや会計ソフト、受発注システムなどを導入する

初めて消費税の申告を開始する飲食店であれば、複数税率に対応しているレジ、受発注システム、会計ソフトなどの導入も検討しましょう。

これらの導入費用は、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金の対象になる場合があります。

仕入れ先等にインボイス登録の有無を確認する

消費税を一般課税で申告する飲食店(簡易課税制度を選択しない飲食店)は、あらかじめ大口の仕入れ先や経費の支払い先に対し、インボイス発行事業者の登録を受けるかどうかを確認しておきましょう。

相手が登録をしていなければ、消費税の納税額が増えてしまうからです。

ただし、取引の中止を決める前に、下記の経過措置も踏まえて検討するようにしましょう。

インボイス制度開始後の経過措置

インボイス発行事業者でない事業者への支払いであっても、次の期間は、下記の金額を仕入税額とみなして控除することができます。

期間割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和11年9月30日まで仕入税額相当額の50%

受け取った請求書等を確認する

インボイス制度開始後は、受け取った請求書等に登録番号の記載があるかどうかなど、インボイスの要件を満たしているかどうかを確認した上で記帳をおこないます。

しばらくの間は、前項の経過措置の対象になる取引がありますので、登録番号の記載がなくても、それらはインボイスの交付を受けた取引と区別して経理する必要があります。

受け取った請求書等の保存方法を確認する

相手に発行したり、相手から受け取ったりする書類の保存方法については、消費税法の保存要件と電帳法における保存要件を基準に、自社の取引形態や規模に合う方法を選び、進めていく必要があります。

両者の保存要件には異なる点もありますので、税理士等に確認しながら決めていくことをおすすめします。

税額の計算方法を決める

消費税を一般課税で申告する際は、売上税額と仕入税額の計算方法を決める必要があります。

計算方法は、割戻し計算と積上げ計算に分かれており、インボイス制度では、売上税額に積上げ計算を適用する場合、仕入税額の計算にも積上げ計算を適用しなければならないルールがあります。

まとめ

飲食店のインボイス制度の影響や準備について解説しました。

取引が減ってしまうリスクを考えると、インボイス発行事業者への登録は早めに検討することが大切です。

消費税の計理や税務申告に不安がある場合は、税理士にご相談ください。

税理士中村太郎

いかがでしたか?

飲食店のインボイスについて、理解は深まりましたでしょうか。

インボイス制度開始までおよそ半年。

しっかり準備を進めていきましょう!

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。