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【インボイス制度】適格請求書発行事業者として登録しない場合のデメリットは?

税理士中村太郎

西新宿の税理士 中村です!

今回はインボイス制度について、適格請求書発行事業者として登録しない場合のデメリットをまとめました。

令和4年も早くも3月を迎え、徐々に暖かく感じる日も増えてきましたが、同時に年度末と忙しい時期に突入しました。

インボイス制度の開始は来年ですが、知識を蓄え備えるには、時間はあまり残されておりません。本記事が少しでも皆様のお役に立つことを願っております。

適格請求書発行事業者とは

令和5年10月からのインボイス制度開始後、「適格請求書」を発行できるのは「適格請求書発行事業者」に登録した事業者のみとなります。

「適格請求書発行事業者」に登録できるのは、消費税の課税事業者のみであり、免税事業者が適格請求書発行事業者に登録すると、強制的に課税事業者になります。

適格請求書が発行できない場合の影響

「適格請求書」を発行できないと、誰にどういった影響があるのでしょうか。

この影響を真っ先に受けるのは、取引きの相手側、つまり、請求書等を受け取る買い手側の企業です。

インボイス制度の開始後、買い手は、受け取った請求書等が「適格請求書」でなければ、仕入税額控除を適用することができません。

仕入税額控除とは

企業が納税する消費税は、受け取った消費税から、支払った消費税に基づいて計算した一定の金額を控除した、残りの金額になります。

支払った消費税に基づく控除のことを、「仕入税額控除」といいます。

現行の制度であれば、買い手企業は、売り手が発行する請求書(区分記載請求書)の内容に基づき、仕入税額控除を適用することができます。

たとえば、消費税率10%の取引きで、税込1,100円(うち消費税100円)を売り手からの請求書によって支払った場合、買い手企業は、消費税の確定申告において、受け取った消費税から100円を控除できるということです。

現行の制度では、請求書や帳簿に関する記載・保存要件さえ満たしていれば、たとえ売り手が免税事業者であっても、仕入税額控除を適用することができます。

仕入税額控除ができないと取引きの実質負担が増える

インボイス制度の開始後は、適格請求書を発行できない売り手と取引きをした場合、仕入税額控除を適用することができません。

これにより、インボイス制度開始後は、今と同じ取引き内容であっても、売り手が適格請求書発行事業者でなければ、買い手の実質的な負担額が増えてしまうということです。

適格請求書発行事業者として登録しないデメリット

取引きを打ち切られるリスクがある

売り手が適格請求書発行事業者であるかどうかは、買い手側の実質的な負担額に影響します。

そのため、インボイス制度に向けて、買い手から適格請求書発行事業者でない売り手に対し、値下げ交渉が行われる可能性があります。

最悪の場合、取引きを打ち切られる可能性もゼロとはいえません。

同じ金額で取引きができる、適格請求書発行事業者が現れた場合、仕入税額控除による節税ができる分、価格面で負けてしまうからです。

売上規模を推測されてしまう可能性も

適格請求書発行事業者として登録しない事業者は、よほど特殊な事情が無い限り、免税事業者であることが推測されます。

免税事業者の要件は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることです。

つまり、適格請求書発行事業者として登録していなければ、売上規模を推測する材料を取引先に与えてしまうことになります。

買手が受ける影響は企業によって変わる

すべての買い手企業が影響を受けるわけではない

さきほど、税込1,100円(消費税100円)を支払った場合、買い手は、消費税の納税額から「100円を控除できる」と説明しました。

この話だけ見ると、インボイス制度開始後、買い手の負担は実質1.1倍になるような印象を受けると思います。

しかし、仕入税額控除の対象にならなかった100円はどこにいったのでしょうか。

改正前後の違いを仕訳で見るとわかりやすいです。(税抜き経理方式で比較しています)

例:消耗品の代金1,100円で現金払いした場合

<現行法>

借方金額貸方金額
消耗品費1,000現金1,100
仮払消費税等100

<インボイス制度開始後(相手が適格請求書発行事業でない場合)>

借方金額貸方金額
消耗品費1,100現金1,100

消費税の仕入税額控除にならなかった100円は、買い手の法人税(個人事業であれば所得税)の経費になります。

100円のうち、いくらかは法人税(所得税)の負担軽減になるため、1.1倍の負担増があるわけではないのです。

また、課税事業者のすべてが、そもそも支払った消費税の全額を控除できるわけではありません。

簡易課税制度を選択している企業であれば、支払った消費税が納税額に影響しませんし、簡易課税制度を選択していない事業者の中にも、全額を控除できないケースがあります。

仕入税額控除には経過措置がある

インボイス制度開始後、買い手は仕入控除税額をまったく適用できなくなるわけではありません。

次の期間中は、本来適用できる仕入税額控除の一定割合まで控除が認められます。

令和5年10月1日~令和8年9月30日仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日~令和11年9月30日仕入税額相当額の50%

ただし、買い手企業において、適格請求書発行事業者とそうでない事業者との取引きが混在する場合、経理の負担増が考えられます。

したがって、この経過措置が、買い手企業の判断にどれほど影響するのかは、企業によって異なると考えられます。

税理士中村太郎

いかがでしょうか。

今後の取引・経理への影響も含めて、適格請求書発行事業者への登録の可否を考えて頂ければと思います。

本記事によってインボイス制度への理解が深まることを期待しております。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。