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個人事業主が開業するときに必要な手続き・書類について解説!

初めて開業する方にとって、開業の方法や必要書類の準備など、煩雑なことが多いのではないでしょうか。基本的な開業の知識から、専門家の開業知識まで、様々なトピックについて解説します。これから開業する方もすでに準備を進めている方も、ぜひご一読をお勧めします。

中村太郎

こんにちは。税理士の中村太郎です。

今回は個人事業主が開業する際に注意すべき点や、必要な手続きをわかりやすく解説したいと思います。

目次

個人事業主の開業には「開業・廃業等届出書」の提出が必要

開業届とは?

「開業届」とは、個人で事業を開始したことを、税務署に知らせるための書類です。

書類名は「個人事業の開業・廃業届出書」で、開業や移転、廃業の時と兼用の様式になっています。

では、どのような事業を始めたときに開業届を提出しなければならないのかというと、①日本国内において、②不動産所得、事業所得、または山林所得を生じる事業を始めるときになります。

①はよいとして、②は初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。

簡単に説明すると、下記のとおりです。

  • 不動産所得・・・不動産を賃貸して得られる所得
  • 事業所得・・・対価をもらって継続的に行われる事業から得られる所得
  • 山林所得・・・山林の伐採や譲渡(売却)から得られる所得

「不動産所得」や「山林所得」は、どういう行為から生じる所得か、名前からも想像しやすいと思います。

「事業所得」は、事業の内容を特に限定されていません。

過去の裁判例などから、以下のすべての要件を満たすものが該当すると考えられています。

  • 対価をもらって継続的に行っている
  • 独立性、営利性がある
  • 反復継続して行う意思がある
  • 事業として社会的に認められるものである

開業・廃業等届出書の主な記載内容

「開業届」に記載する主な内容は、事業内容に関する事項だけでなく、「給与の支払いの状況」に関する項目があります。

個人事業主は、自分に給与を払うことはできません。

しかし家族(その事業の専従者)や従業員(使用人)に対しては、事業から給与を支払うことができます。

ではなぜ「開業届」で給与の支払い状況を記載するのかというと、給与を支払い始めると、支払うたびに「所得税」を源泉徴収し、それを翌月10日までに納めなければならない義務が生じるからです。

これを「源泉徴収義務」といいます。

開業届をさらに見ると、「給与支払を開始する年月日」という項目があります。

ここに書いた日付けは、「この日から所得税の源泉徴収を始めます」という意味になります。

つまり翌月から、源泉所得税の納付を始めなければなりません。

ただし、その左側に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無」という項目があります。

もしこの納期の特例の承認を、別の手続きによって受けていれば、毎月10日の納付が年2回になります。

納期の特例については、「従業員を雇うときにお勧めする書類」で詳しく解説しています。

税務署に提出する書類に、税金に関係のない質問はありません。

意図のよくわからない項目があったら、税務署や税理士にご相談ください。

本人確認書類について

開業届には、個人番号も記載します。

個人番号を記載した書類を税務署に提出するときは、本人確認(番号確認+身元確認)ができる書類を用意しなければなりません。

マイナンバーカードがあれば、それ1枚で本人確認になりますが、それ以外は、番号確認ができる書類と身元確認ができる書類を、別々に準備する必要があります。(例:番号通知カード+運転免許証)

本人確認書類の提出方法は、以下のとおりです。

  • 開業届を郵送するとき

本人確認ができる書類のコピーを専用の台紙に添付し、それを同封して提出します。

国税庁HP:本人確認書類(写)添付台紙

httpss://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/pdf/honninkakunin.pdf

  • 窓口に持参するとき

本人確認ができる書類のコピーを持参して提出するか、本人確認ができる書類を持参して直接提示をしてもよいとされています。

開業届は税務署へ提出する

開業したら1ヶ月以内に、納税地の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出

開業届は、開業した日から1か月以内に、納税地の税務署に提出しなければなりません。

納税地とは、基本的に個人の住所地のことですが、開業届で、事業所にすることも可能です。

開業届の記載項目

【個人事業主に関する事項(書類上部)】

  • 納税地

 基本的には住所地ですが、事業所等にすることもできます。居所地とは、日本国内に住所がない人が日本での滞在先などを書くときに使います。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 個人番号
  • 職業
  • 屋号

 すべて正確に記載します。屋号はなくても構いません。次項で詳しく説明します。

【事業に関する事項(書類中央部)】

  • 届出の区分

「開業」をチェックします。事業を引き継いでいる場合は、引き継いだ人(先代)についても記載します。

  • 所得の種類

不動産所得・山林所得・事業所得の3つの所得から選びます。

農業は事業所得にチェックをします。

  • 開業日

開業年月日を記載します。

個人の所得税は1月1日から12月31日の期間で計算しますので、たとえば12月1日を開業日としたときは、12月1日から12月31日の確定申告を忘れずに行うようにしましょう。

  • 開業
  • 廃業に伴う届出書の提出の有無

 それぞれ提出の有無を記載します。

 「青色申告承認申請書」は「有」になることが多いと思います。

【給与等の支払い状況に関する事項(書類下部)】

以下、給与を支払う相手がいる場合にのみ記載します。

  • 従業員数

 専従者、使用人それぞれの人数を記載します。

  • 給与の定め方

 日給・月給等の区分を記載します。

  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無

 申請書の提出の有無をチェックします。(開業届を提出しても申請したことになりません)

  • 給与支払を開始する年月日

給与の支払を開始する日を記載します。

届出書を作成している時点で、すでに支払った給与がある場合は、その支払いを開始した日(最初に給与を支払った日)を記載します。

提出時はコピーに受理印をもらう

税務署に開業届を提出する際は、コピーに受理印をもらいましょう。

開業届を税務署に持参する場合は、コピーをあらかじめ1枚持参し、窓口で依頼すれば押印してもらえます。

郵送の場合は、コピーと返信用封筒(返送先の記載、切手貼付済みのもの)を同封すれば、押印後のコピーを返送してもらえます。

控えとして保管する意味もありますが、屋号付きの口座開設をしたいときなどに提出を求められる場合があるためです。

店や事務所の名前である「屋号」について

屋号は空欄で提出して構いませんが、屋号を決めることには経営上のメリットがあります。

お客さんによっては、個人との取引に慣れていない方がいます。

そうした方は、個人名での請求書や領収書などを見ると、個人を相手に取引をすることに不安を抱くことがあります。

開業届を出して継続する意思のもと事業をやっていることは、お客さんにはわかりませんからね。

屋号を決めて、その名称で書類を発行したりホームページを開設したりすれば、こうしたお客さんに対し、多少いい方向に働くはずです。

また、屋号を決めれば、屋号付きの口座を作ることもできます。

詳しくは「個人事業主が開業届を提出するメリット」で説明します。

所得税の青色申告承認申請書について

青色申告承認申請書とは、開業した個人事業主から税務署に対し、「不動産所得・事業所得・山林所得の確定申告を『青色申告』でやりたいのですが、承認をもらえますか」という内容の書類です。

書類を提出し、その年末までに税務署から却下するという通知が特になければ、承認されたことになります。

青色申告とは、より信頼性の高い所得税の申告方法のことです。

通常の申告(白色申告)と違って、確定申告書に「青色申告決算書」(貸借対照表、損益計算書等)を添付しなければなりませんが、その分、節税に有利なさまざまな特典が受けられます。

提出期限は、事業を開始してから2か月以内です。

1月15日以前の開業であれば、3月15日が提出期限になります。

開業届を税務署に提出するときに、忘れないようセットで提出することをおすすめします。

個人事業主が開業届を提出するメリット

節税効果がある青色申告の特典を受けられる

青色申告をすると、主に下記の特典があります。

  • 65万円(55万円)又は10万円の青色申告特別控除が受けられる
  • 青色事業専従者給与を支給できる
  • 30万円未満の少額な減価償却資産を一時で経費にできる特例が使える
  • 機械等の設備や経営改善設備を取得したときの特別償却・税額控除の特例が使える

これらを活用することで控除額や経費にできる額が格段に増え、所得税の負担を軽減することができます。

青色申告をすることが認められているのは、不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかの事業で開業している人のうち、青色申告の承認を受けた人です。

税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出し、ぜひ青色申告を行って特典を受けてください。

なお、青色申告の承認を受けるだけなら申請書の提出でよいのですが、実際に青色申告をするためには、正規の簿記の原則で帳簿をつけ、その帳簿や関係書類を一定期間保存する必要があります。

赤字の繰越し・繰戻しができる

青色申告をすると、事業などから生じた赤字を、翌年以降3年間繰り越し、その間、黒字化した年の所得から控除できます。

これを繰越欠損金の控除といいます。

青色申告・白色申告のどちらでも繰越欠損金の控除は可能ですが、青色申告で繰り越した年は、繰り越せる損失の範囲が広くなります。

また、生じた赤字を前年分の黒字に繰り戻して、税額の還付を受ける方法もあります。

これを欠損金の繰戻し還付といいます。

欠損金の繰戻し還付に関しては、青色申告のみの特典になります。

これらの特典も、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出して、青色申告を行うことで受けられます。

屋号での銀行口座開設や事業用クレジットカードの申し込みが可能

事業を始めた後も、個人用の口座やクレジットカードをそのまま使っている方がいます。

しかしそうすると、経理をするときに、通帳や明細にプライベートの収支が混在して邪魔ですよね。

ミスも起こりやすくなります。

そこで、口座やクレジットカードは事業用にもう一つ作ると、経理の面で楽になります。

さらに開業届等で屋号を決めていると、

  • 屋号付きの口座を開設できる金融機関がある
  • 事業用クレジットカードを作成できる

といったメリットがあります。

【屋号付き口座が作成できる金融機関の例】

  • 三菱UFJ銀行
  • みずほ銀行
  • 楽天銀行
  • ゆうちょ銀行

ゆうちょ銀行は、屋号のみによる振替口座(決済専用の口座)の開設が可能です。

屋号付き口座などを申し込むときの注意点

金融機関には、犯罪収益移転防止法による取引時確認(口座開設時などにおける本人確認)の義務があります。

その屋号や事業内容で、実際に活動をしていることを確認されるのですが、その確認方法は、金融機関ごとに異なります。

開業届以外の書類の提出を求められる場合もありますし、開業届を提出しても、確認がうまくいかないと契約できない可能性もあります。

なお、開業届の提出が必要な場合、単なるコピーではなく、コピーに税務署の受理印を押印したものを求められることが一般的です。(参照「開業届は税務署へ提出する」)

地方自治体へ事業開始等届出書を提出

税務署だけでなく、都道府県税事務所と市町村にも「事業開始等申告書」を提出

個人事業を開始するときは、都道府県税事務所などにも、開業を知らせる書類を提出する必要があります。

提出する書類は、「事業開始等申告書」などの名称で、その自治体が指定しているものを使用します。

申告する項目の内容は、税務署に提出する開業届の内容とほとんど変わりません。

ではなぜ税務署の他にも、同じような書類を提出しなければならないのでしょうか。

税務署への開業届は、税務署が徴収する所得税の計算に関するものですが、都道府県や市町村には、所得税とは別に、個人から徴収する税金があります。

都道府県は「個人事業税」、市町村は「個人住民税」という税金をそれぞれ徴収します。

いずれの税金も、税務署に確定申告をすれば、都道府県と市町村でそれぞれ税額が計算され、所定の時期になると税額の通知書が届きます。

個別の申告もできますが、それをする機会は、通常はありません。

個人事業税とは

その名が表しているとおり「個人事業」から生じた所得に対してかかる税金です。

事業所得や不動産所得などの額を、個人事業税の独自のルールで調整し、それに税率をかけて計算します。

税率はシンプルで、事業の内容に応じて、5%・4%・3%のどれかが適用されます。

たとえば、物品販売業、請負業、不動産貸付業は、第1種事業の5%になります。

個人事業税は、都道府県が計算してくれますので、細かい計算ルールを知る必要はありませんが、次の内容は知っておいて損はありません。

  • 個人事業税の計算には青色申告特別控除がないこと
  • 年間290万円の事業主控除が無条件で適用されること

つまり、青色申告特別控除を適用する前の事業所得などが290万円を超えなければ、その年に個人事業税は発生しないと判断できます。

ただし、開業した年の事業主控除は、290万円全額ではなく、開業月から12月までの月数で月割して適用されます。

納期は8月と11月の年2回です。8月になると税額が通知されます。

個人住民税とは

その年の1月1日に住所のある市町村に納付する税金です。

納付する税額は、所得割と均等割という2つの税の合計額になります。

所得割の計算方法は、所得税と同じで10種類の所得が対象です。

したがって、サラリーマンの給与などにも発生します。

所得割の税率は10%です。

均等割は、一律で5,000円ほどになります。

納期は、年4回です。

自治体が決める期限にしたがって納税します。

第一回目の納期は、自治体によって異なりますが、おおむね6月ころです。

この頃になると、自宅に納税額の通知書が送付されます。

なお、会社員やアルバイトの方などで勤務先から給与をもらっている方の場合、給与から天引きする徴収方法(特別徴収)で納税をしていると思います。

この場合は、自宅ではなく職場に、個人事業の分も合わせて計算された住民税額が通知されることとなります。

地方自治体によって「事業開始等届出書」の名称や手続きは異なる

「事業開始等届出書」の名称は、自治体によって異なります。

基本的には、都道府県のみの提出としている場合が多いのですが、詳細は、提出先の都道府県や市町村のホームページでの確認が必要です。

また、提出期限にもさまざまなものがあります。

東京都は事業開始から15日以内と早めの提出が求められますが、他は 1か月以内、2か月以内という自治体もあります。

申請が必要なその他の書類

個人事業主は、法人に比べて経費にできるものが多くありません。

自分に給与を支払うことができないことや、親族への給与が原則的には経費にならないことが、その理由の一つです。

また個人事業主は、どうしても事務負担が大きくなります。

定型的な業務はなるべく効率化して負担を軽減することも、利益を最大化するためには必要な対策です。

ここでは、できるだけ節税したい・事務負担を軽減したいという場合に欠かせない

  • 青色申告専従者給与の届け出
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

について解説します。

青色事業専従者給与に関する届出書

個人事業主は、配偶者や親族に給与を支払っても、原則はそれを経費にすることはできません。

ただし、その配偶者や親族が「事業専従者」であれば、確定申告の際に、一定額を所得から控除(配偶者:最大86万円、親族:1人につき最大50万円)することができます。

さらに、青色申告をする人が、その配偶者や親族について「青色事業専従者給与の届出書」を税務署に提出すると、その給与を、届け出た範囲内の金額ですべて経費にすることができるようになります。

たとえば、届出書の内容にしたがって月給20万円を支給した場合、年間240万円を事業所得などの経費にできます。

そして同時にその額は、家計にかえってくるというわけです。

この届出書を提出できるのは、青色申告をする人の事業専従者に限られます。

【事業専従者とは】

次のすべての要件を満たす人をいいます。

  • 個人事業主と生計を一にする、配偶者や親族
  • その年の12月31日時点で15歳以上
  • その年を通じて6か月を超える期間、事業主の事業に専従している(※)

(※)開業した年などは、その期間の2分の1を超える専従期間があればよいとされます。

「青色事業専従者給与の届出書」の注意点

届出書を提出しても、その給与が無制限に経費として認められるわけではありません。

青色事業専従者に支払う給与の額は、その人の資格や経験、他の従業員とのバランスがとれた額である必要があります。

また、青色事業専従者が受け取る給与からは「給与所得」が生じますので、専従者自身にも税負担が生じます。

また、事業専従者として給与を支払っている相手は、支給額にかかわらず、配偶者控除や扶養控除の対象にできなくなりますので、配偶者控除や扶養控除の額だけ、控除を失って給与を支給していることも加味する必要があります。

ではいくら給与を支払えば、税金を最大限安くできるのでしょうか。

これは、個別にシミュレーションをする必要があります。

給与は毎月支払い続けるものですので、早めに税理士とシミュレーションをすると、より高い節税効果を得られます。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

給与や退職手当、税理士等に支払う報酬から源泉徴収をした所得税は、徴収した日の翌月10日までに納めなければなりません。

つまり、年間12回の納税を行うということです。

ただし、給与の支給人員が常時10人未満の事業であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出することで、この納税を年2回(半年に一回ずつ)にすることができます。

【特例を適用した場合の納期】

1月~6月の間に源泉徴収した所得税等・・・7月10日まで

7月~12月の間に源泉徴収した所得税等・・・翌年1月20日

申請書に提出期限はありませんが、提出日によって、いつから適用になるかが決まります。

詳しい制度や注意点は、「従業員を雇うときにお勧めする書類」で解説します。

開業する業種によって必要な各種届出・許認可

開業する業種によって必要な届出などを記載

税務署に提出する書類以外にも、その事業を規制する各種業法にしたがって、官公庁に届け出や許認可の申請をしなければならないものがあります。

特に安全面や衛生面に対する基準が厳しい業種は、建築や改装などに着手する前に、提出先の担当者と相談して注意点をよく確認することが大切です。

また、申請や届け出のために必要な書類を収集・作成する準備期間も必要ですので、開業予定日までスケジュールを決め、計画的に進めていかなければなりません。

以下、こうした手続きが必要な業種をいくつかご紹介します。

飲食店 レストランや食堂などの飲食店を開業するときは、保健所に飲食店営業の許可の申請を行い、許可を受ける必要があります。許可を受けるには、店舗の構造設備が要件を満たさなければならないため、工事を始める前に保健所の担当者に相談をしながら進めます。申請時には、構造設備の基準をクリアできていることがわかる図面や、店舗に配置する食品衛生責任者に関する書類等を準備します。

弁当屋 弁当を販売する場合も、飲食店営業の許可が必要です。レストランや食堂と同様に、設備の状況や食品衛生責任者の配置が確認できる書類を保健所に提出する必要があります。特に、弁当屋の場合は、前もって調理したものを販売するという性質から、衛生管理のために、盛り付けと放冷ができる施設基準を満たす必要があります。

移動型販売車を使った飲食業 自動車で移動しながら、ランチタイムなどにお客さんに軽食を提供する移動型販売も、飲食店営業の許可が必要になります。自動車内の設備状況や食品衛生責任者の配置が確認できる営業許可の申請を、保健所に行わなければなりません。また、自動車の中で調理するという特徴から、車内に調理内容に合った容量の給水タンクの設置があるか、廃水を保管できる設備はあるか、手洗い場や冷蔵設備はあるかなど、基準を満たしている自動車を用意できなければなりません。

深夜にお酒を出す店(スナックなど) 深夜(午前0時から午前6時までの時間)に酒類を提供するスナックやバーを開業するときは、飲食店営業の許可に加えて、警察署に深夜酒類提供飲食店の営業開始届を提出する必要があります。警察署への届け出は、風営法によるルールです。設備の状況や、18歳未満の者への対応、20歳未満への酒類提供防止対策などが求められます。なお、接待を伴うものは風俗営業の「許可申請」が必要になります。(深夜は営業できません。)

ヘアサロン 美容業(パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくする業)は、資格を持った美容師が、美容所として保健所から許可された場所で行う必要があります。まずは保健所に事前相談をして、構造設備や衛生管理上の基準を満たしていることがわかる図面などを準備し、それらを添付した開設届を保健所に提出します。また、美容業は、医師法との境目に注意が必要となる施術があるため、どのような営業をするかもきちんと相談しておきましょう。

リサイクルショップ 近年、店舗を持たずに、インターネット上で手軽に商品の販売ができるようになりました。ただし、いったん人の手に渡った中古品(未使用品を含む)を買い取ってそれを販売する営業をするには、警察署に古物営業の許可申請が必要になります。盗品の横流しを規制するためのルールですので、新しい商品を業者から仕入れて販売する場合は該当しません。なお、許可を受けて終わりではなく、古物にあたるものを買い取る際、相手の住所や氏名、年齢等が確認できる書類の交付を受けなければならないなどの義務があります。

社会保険の手続き

従業員を雇用する場合は、労働保険(労災保険と雇用保険)に加入

従業員を雇うときは、税務署に対する給与関係の届け出のほかに、労働保険(労災保険+雇用保険)の加入義務があることに注意が必要です。

労働者を1人でも雇っている個人事業主は、その労働者の雇用形態に関係なく、労働保険に加入しなければなりません。

労災保険とは

労災保険とは、業務上の事故や通勤中による傷病等に対して、保険金の給付等を行う制度です。

労働者を1人でも雇っていれば、個人事業主にも加入義務があります。

パートタイマー、アルバイトなど、労働者の雇用形態は関係ありません。

なお、建設業など特別加入の対象者であれば、事業主1人でも加入できる場合があります。

同居の親族は、原則として労災保険法上の「労働者」には該当しませんが、一定条件下で加入できる場合があります。

雇用保険とは

雇用保険とは、失業手当や再就職のための支援などを行う、労働者の雇用を守るための保険になります。

雇用保険についても、労働者を1人でも雇っていれば事業所として加入が必要ですが、労働者ごとの加入資格の判断基準があります。

次の労働条件のいずれにもあてはまる人が、雇用保険の一般の被保険者になります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上の雇用見込みがあること

同居の親族は、雇用保険の場合も加入できません。

ただし親族でも、事業主の指揮命令に従って業務をしていることが明確であるなどの一定の要件を満たせば、加入できる場合があります。

労働基準監督署への提出書類

  • 労働保険関係成立届

労働保険への加入義務が発生した場合に提出する書類です。

提出期限は、保険関係の成立から10日以内になります。

  • 労働保険概算保険料申告書

初年度の労働保険の概算を申告するものです。

提出期限は、保険関係の成立から50日以内になります。

【概算保険料とは?】

労働保険料(労災保険料+雇用保険料)は、年度単位(4月から翌年3月分)で納めます。納付方法は、まず毎年6月1日から7月10日までの間に、その年度末までの保険料を概算保険料として算定して申告し、その保険料の額を、その後3期に分けて納付します。労働保険に加入した初年度については、まず、保険関係の成立日からその年度末までの概算保険料を申告し、保険料を納めます。そして2年度目からは、前年度の確定保険料と、当年度の概算保険料の2つを申告し、初年度で納めた概算保険料と確定保険料との間に差額があれば、当年度の概算保険料の額で調整します。

公共職業安定所への提出書類

雇用保険適用事業所設置届

雇用保険の加入義務が、事務所に発生したときの届け出です。

以後、その個人事業は、雇用保険適用事業所となります。

提出期限は、適用事務所になった日から10日以内になります。

雇用保険被保険者資格取得届

従業員の中に、雇用保険の加入要件を満たす人がいる場合、その人の加入資格を取得するための届け出になります。

提出期限は、資格取得の事実があった日の翌月10日までです。

従業員を雇うときにお勧めする書類

従業員を雇用する場合は、税務署に「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を提出する

税務署から、源泉所得税の納期の特例の承認を受けると、毎月の納税を年2回に変更することができます。

通常時の支払いは年12回

従業員の給与から徴収した源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限になります。

たとえば1月25日支給分から源泉徴収した額は2月10日まで、2月25日支給分から源泉徴収した額は3月10日まで…のように、年12回の納税が必要になります。

納期の特例を申請した場合は年2回に

納期の特例の承認を受ければ、これを年2回に減らすことができます。

【特例を適用した場合の納期限】

1月~6月までの支払いから源泉徴収をした分・・・7月10日まで

7月~12月までの支払いから源泉徴収をした分・・・翌年1月20日

給与のほかに、退職手当、税理士などへの報酬から源泉徴収した分も、まとめて年2回の納付にすることができます。

納期の特例を申請できる個人事業主

納期の特例を申請できるのは、次の要件を満たす事業主です。

  • 給与の支給人員が常時10人未満であること
  • 「源泉所得税の納期の特例に関する申請書」を税務署に提出していること

納期の特例の適用開始はいつから?

申請書を提出した翌月末の日までに、税務署から却下の処分がなければ、その日に承認があったものとして扱われます。

したがって、提出した翌月に支払う給与(本来の納期が翌々月の10日になる給与)から適用が始まります。

たとえば6月に提出した場合、6月分は7月10日までに納めますが、7月分は、本来8月10日が納期であるところ、特例の適用によって翌年1月20日までに納付すればよいことになります。

納期の特例を適用する場合の注意点

納付書が違う

特例を受けた後に使用する納付書は、通常のものと様式が異なります。

下記のとおり、納付書の様式が変わっていることを確認しましょう。

  • 「支払年月日」が「◯年◯月◯日~◯年◯月◯日」(通常:「◯年◯月◯日」)
  • 「納期等の区分」が「自◯年◯月 至◯年◯月」(通常:「◯年◯月◯日」)

未納税額を管理すること

納期の特例を適用する場合、半年間、源泉徴収した税額をきちんと管理しなければなりません。

納期になって「現金が足りない!」なんてことになったら大変です。

給与の仕訳をするときに、預り源泉所得税などの勘定科目で仕訳を行い、未納税額の残高を常に把握できるようにしましょう。

納期の特例が取り消されることも

年の途中で次のような事実が生じたときは、税務署から納期の特例の承認を取り消されることがあります。

  • 給与の支払いを受ける人が常時10人未満でなくなった場合
  • 国税の滞納があり、その滞納税額の徴収が著しく困難であるなど一定の場合

開業後に従業員を雇う場合は、給与支払い事務所の開設届を提出

開業後、しばらく経ってから専従者や従業員に初めて給与を支給するケースがあります。

開業届で「給与等の支払の状況」を届け出ていない場合は、1か月以内に「給与支払事務所等の開設届」を提出して税務署に届け出ます。

移転や廃止と兼用様式になりますが、「開設」に関する部分だけを記載すればOKです。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。