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マイクロ法人とは?メリット・デメリットと節税例、注意点を解説

税理士 中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

今回は、マイクロ法人について解説します。

マイクロ法人は、税金や社会保険料の負担を重く感じ始めた個人事業主にとって、もっとも有効な節税対策となるかもしれません。

ただ、デメリットや注意点もあるため、これらを踏まえて法人化すべきかを検討することが大切です。

当事務所では、個人事業主やフリーランスの方のマイクロ法人の設立を数多くサポートしてまいりました。

本記事では、マイクロ法人のメリットやデメリット、事例を使って実際にどのくらい節税になるのかをわかりやすくご紹介します。

マイクロ法人とは

マイクロ法人とは、従業員を雇わず、経営者が一人で設立・運営する法人のことです。

一人会社や、一人社長の会社と同じ意味で使われることもあります。

マイクロ法人は、個人事業主やフリーランスが法人成りするケースに適しており、税金や社会保険料の負担を抑えたい場合や、活躍の幅を広げたい場合におすすめです。

マイクロ法人に向いている法人形態

マイクロ法人は、法人形態に制限があるわけではなく、目的や事業内容に応じて選ぶことができます。

実務上よく選ばれているのは、株式会社や合同会社です。

とくに、少人数での経営に向いている合同会社には、株式会社よりも設立費用を抑えやすいメリットがあります。

こちらの記事も参考にしてください。

マイクロ法人のメリット

個人事業主がマイクロ法人を立ち上げることには、以下のメリットがあります。

税制の違いで節税できる

個人事業にかかる所得税は税率5%〜45%の超過累進課税であり、事業所得が増えるほど税負担も重くなるしくみです。

これに対し、法人所得にかかる法人税率は23.4%であり、マイクロ法人のような中小規模の会社であれば、毎期の所得のうち800万円以下の部分は15%に軽減されます。

この税率差により、所得の多い個人事業主がマイクロ法人を設立し、法人で事業収入を計上することで、所得に対する税負担を抑えやすくなります。

さらにマイクロ法人では、法人から自分自身に支払う給与(役員報酬)を経費にすることができ、受け取る自分自身には給与所得控除が適用されるため、見かけの税率差以上の節税効果が見込めます。

こうした個人と法人の税制の違いによって、マイクロ法人を設立すると節税しやすくなります。

法人化による節税のメリットは、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。

社会保険料も節約できる

マイクロ法人のように経営者一人しかいない会社でも、社会保険(健康保険と厚生年金)に加入する義務があります。

社会保険料は、会社の「従業員」であれば会社と折半です。

しかし、マイクロ法人の「経営者」にとっては会社の分も個人の分も、いずれも自分自身の負担であることに変わりありません。

そのため、一般のサラリーマンに比べると負担は重くなります。

いっぽうで、個人事業主が加入する国民健康保険や国民年金に比べれば、マイクロ法人の社会保険料はかなり優遇されています。

まず、個人の国民健康保険料の算定対象となるのは、個人の「総所得」となります。上限はありますが、事業収入が増えるほど保険料も増えるしくみです。

これに対し、法人の健康保険料の算定対象となる所得は、法人から支払われる給与に限定されます。

そのため、役員報酬の金額の設定しだいで、国民健康保険より保険料を抑えられます。

他にも、世帯員の人数で保険料が加算されるしくみが、法人の健康保険にはありません。

そのため被扶養者のいる個人であれば、法人化により、大幅に保険料を減らせる可能性があります。

社会的信用を向上させやすい

法人を設立するには、法人登記を行う必要があります。

この登記という制度は、その法人の一定の情報に誰でもアクセスできるようにすることで、法人の信用や取引の安全を維持することなどを目的としています。

個人事業を法人化することにより、個人事業主では取引の機会がなかった企業と取引ができるようになったり、金融機関からの融資を受けやすくなったりする可能性があります。

マイクロ法人を設立した場合の節税シミュレーション

それでは、個人事業主がマイクロ法人を設立した場合、どのくらい節税になるのかを見てみましょう。

計算例

下記【例】の個人事業主を代表とするマイクロ法人を立ち上げ、事業の収入をすべて法人で計上します。

法人からは毎月20万円の役員報酬を受け取ります。

この条件で、個人事業主の時と、その個人事業を法人化した時で、税金と社会保険の負担を比較します。

【例】

・年齢:35歳

・家族構成:単身者(扶養する親族なし)

・事業から生じる所得(売上-経費):年800万円

・社会保険:国民健康保険(新宿区)と国民年金

個人事業主の税金と社会保険の負担額

青色申告特別控除65万円を適用し、それ以外は最低限の控除で課税所得(※)と税金を計算すると、個人の税金(所得税、事業税、住民税)は約160万円で、社会保険料(新宿区の国民健康保険、国民年金)は約100万円となります。

(参考)新宿区|保険料の計算方法について

https://www.city.shinjuku.lg.jp/hoken/hoken01_001028.html

(※)課税所得とは、合計所得から所得控除を差し引いた金額です。この例では約580万円で計算しています。

マイクロ法人の税金と社会保険の負担額

それでは、この事業をそのままマイクロ法人に移すために会社を設立し、役員報酬を毎月20万円に設定して比較します。

この場合、税金(法人分+個人分)は約140万円、社会保険料(法人負担+個人負担)は約70万円となります。

ちなみに、個人の1年間の可処分所得は約200万円(※)となります。
(※)役員報酬(年240万円)-税金(個人分)-社会保険料(個人負担分)

税理士 中村太郎

ご覧のとおり、この事例ではマイクロ法人化したほうが税金や社会保険料の負担を抑えられます。

なぜこのような結果になったのかを、もう少し詳しく解説します。

節税のポイントは税率差

個人事業にかかる所得税の税率は5%~45%の超過累進税率となります。

これにより、ある程度の課税所得がある場合、法人化したほうが節税には有利です。

法人化した場合の税負担は、法人所得にかかる税金と、個人所得(役員報酬から計算した給与所得)にかかる税金を合算して比較する必要があります。

事業所得の額と役員報酬の額によって損得のラインが変わる場合があり、事前に法人と個人の両方の税額をシミュレーションすることが大切です。

社会保険料は標準報酬月額がポイントに

多くの事業者が加入する協会けんぽでは、「標準報酬月額」により1年間の社会保険料が決定するしくみです。

「標準報酬月額」は、毎年4月から6月の平均的な給与(金銭+現物給与)を年金機構に届け出ることで決定します。

事例は、月額20万円の役員報酬に対する東京都の協会けんぽの保険料で試算しています。法人負担分と個人負担分を合わせても、国民健康保険と国民年金の合計より安くなります。

しかも、厚生年金に加入するため老後の年金受給額も増えるしくみです。

扶養する家族がいると効果はもっと高い

今回は単身者のケースで試算しましたが、社会保険上の被扶養者にあたる家族がいる個人事業主であれば、社会保険料の節約効果はより高まるといえます。

その理由は、個人事業主の国民健康保険と国民年金の保険料のしくみです。

国民健康保険は世帯人数分の「均等割」がかかり、国保世帯員が多いほど保険料は高くなります。

また、国民年金は20歳以上は必ず1人あたり年20万円ほどの定額を納めなければなりません。

いっぽう、マイクロ法人で加入する協会けんぽの健康保険は、被扶養者を加入させてもその分の追加保険料は発生しません。

年金保険についても、厚生年金の加入者となるのは本人のみですが、その配偶者が被扶養者の要件を満たしていれば、年金保険料を負担せず国民年金に加入している状態と同じになります。

そのため、

・国民健康保険の世帯員に自分以外の家族がいる

・配偶者が国民年金を負担している(配偶者も国民年金の第1号被保険者である)

という個人事業主では、今回の事例で示した保険料よりさらに節約効果が高まる可能性があります。

マイクロ法人のデメリット

一方でマイクロ法人にもデメリットが存在します。

法人設立・運営コストがかかる

マイクロ法人を設立する際には、会社設立のための登記費用が発生します。

設立する会社の種類が株式会社であれば、定款の認証費用や登録免許税などにより、20万円から30万円ほどかかります。

設立費用を少しでも抑えたい場合は、マイクロ法人の種類を「合同会社」にすることも検討するとよいでしょう。

こちらの記事も参考にしてください。

赤字でも税金が発生する

法人の場合、法人所得がマイナスであっても、法人住民税の「均等割」は毎期必ず発生します。

法人住民税の均等割の額は、資本金等の額と従業者数で決まります。

資本金1,000万円以下のマイクロ法人(一人会社)であれば、最低額の7万円となります。

税務の手続きが複雑化する

個人事業主であれば、税務署への確定申告を行うことで、事業税や住民税については、都道府県税事務所や市町村役場が自ら計算し、その結果が通知されます。

しかし、法人であれば、法人税は税務署、法人事業税や法人住民税などの地方税は、都道府県税事務所や市町村役場(※)に、専用の申告書を使用し、それぞれ計算して申告する必要があります。

(※)東京23区は、都税事務所にまとめて申告します

さらに、法人から自分自身へ支払う役員報酬については、自身で給与計算を行って税や社会保険料を徴収し、1年分の報酬をすべて払い終えたら年末調整を行います。

ただし、年末調整をしていても、場合によっては個人の確定申告が必要になります。

そのため、マイクロ法人を設立しても「個人の税務がなくなる」ことはなく、個人の税務に加えて、法人や給与の税務が増えるというイメージを持つことが必要です。

社会保険は毎年「算定基礎届」が必要に

個人事業主で加入する国民健康保険や国民年金は、市町村や年金機構が保険料を計算して通知します。

これに対し、マイクロ法人を設立すると、事業所としての加入手続きと個人の資格取得の手続きが必要になります。

また、社会保険料を決定する標準報酬月額は毎年見直されるため、毎年7月10日までに年金機構に「算定基礎届」を提出しなければなりません。

税理士 中村太郎

当事務所では、税務申告書類の作成・提出の代理はもちろん、専門家と連携し、社会保険手続きのサポートも行っています。

「税務も社会保険もまとめて相談したい」という方は、ぜひご相談ください。

法人登記で住所が閲覧対象に

法人登記をすることには社会的信用を高める効果があります。

ただし、法人登記をすれば、商号(会社名)、事業目的、代表者の氏名や住所、資本金などの一定の情報は、誰でも閲覧できるようになります。

住所を公開されることが気になる場合は、2024年10月から施行されている「代表取締役等住所非表示措置」を活用することも一つの手です。

ただし、株式会社に限定されること、「◯◯区」「◯◯市」のような最小行政区画までは記載されること、融資などで不都合が生じる可能性があること等に注意が必要です。

(参考)法務省|代表取締役等住所非表示措置について

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html

マイクロ法人を設立する注意点

マイクロ法人の設立・運用にあたっては、税務上のリスクを避け、正しく節税効果を得るために抑えておくべき注意点があります。

脱税を疑われないようにすることオピニオンとして活用できる

個人事業を法人化することについては問題ありません。

ただし、合理的に説明できないような処理、たとえば同じ事業なのに、法人で請け負ったり、個人で請け負ったりして所得を分散させている処理などが見られると、不当に税負担を減らしたとして税務調査などで処理を否認され、追加の税金を徴収される可能性もあります。

マイクロ法人化が問題なのではなく、税法の趣旨を逸脱した租税回避が問題なのです。

法人独自の税務に注意

法人の税務には個人とは異なる点が無数に存在します。

そのなかで、マイクロ法人を設立する方が特によく理解しておくべき税務は、役員報酬の損金不算入と給与課税の考え方です。

役員報酬は無条件では経費にならない

役員報酬として法人から自分自身に支払う報酬は、「定期同額給与」などの条件をみたさなければ法人の経費になりません。

これにより役員報酬の金額を、原則として1年は変えることなく、毎月同額で支給する必要が生じます。

この規制の趣旨は、役員が報酬を調整し、法人の所得を恣意的に操作できないようにすることにあります。

そして「定期同額」は支給のサイクルが1か月以下のものにしか適用されないため、賞与は経費にできません。

賞与を経費にするには、月給とは別の税務上の手続きが必要になるため、その点にも注意が必要です。

「給与課税」に注意

法人の経営者や従業員がその法人から経済的な利益を受けると、原則として個人への給与とみなされ、源泉徴収や個人の給与所得の対象とすることが求められます。

これが給与課税です。

給与の名目で支給していなくても該当し、さらには金銭でなくても対象となるため、常に注意が必要となります。

特に経営者への給与課税は、個人の税負担が増えるだけでなく、「定期同額給与」の要件を満たさないため、法人の経費にならず法人税も課税されるという、いわゆるダブルパンチの状態になります。

法人からお金を引き出すときは慎重に

役員報酬以外で法人から個人にお金を引き出す方法としては、「役員貸付金」として会社からお金を借りる方法や、事業に使用している個人名義の不動産などの賃料を会社から受け取る方法などが考えられます。

ただし、役員貸付金は状況によって給与課税のリスクがあり、法人から受け取る賃料についても、金額が相場より高いとその部分に給与課税のリスクがあります。

社会保険料の負担を抑えるため、役員報酬の額を小さくしすぎてしまうと、役員報酬以外の方法で法人からお金を引き出すことになりやすいため、注意が必要です。

税理士 中村太郎

マイクロ法人ならではの柔軟さや快適さは生かしつつ、税務調査で指摘されやすい最低限のポイントはしっかり抑えるバランス感覚が大切です。

当事務所ではお客様の考えをヒアリングしながら、どのような法人運営を目指すのかを一緒に考え、サポートしていきます。

マイクロ法人を設立する手続き

マイクロ法人の設立は、ご自身で行うことも可能です。

ただ、会社設立の流れ、定款の作成、資本金の決め方、設立直後の会計処理、各種機関への手続き、具体的な運営方法などは、多くの方にとってなじみのないものだと思います。

以下、マイクロ法人を設立する大まかな流れをご紹介します。

法人設立までの手続き

マイクロ法人であっても、設立の手続きが簡単になるわけではありません。

通常の法人と同じ手続きが必要になります。

【法人設立の主な流れ】

・会社の基本事項を決める

・定款を作成する

・発起人の口座に資本金(出資金)を払い込む

・登記申請を行う

詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

法人設立後の手続き

登記を完了した後は、登記事項証明書や印鑑証明書を取得し、金融機関や行政機関での各種手続きを進めていきます。

【マイクロ法人(一人会社)設立後の主な手続き先】

・金融機関 法人口座の開設

・税務署、都道府県税事務所、市町村役場 税務に関する各種手続き

・年金機構 社会保険に関する手続き

会社を設立した後には複数の手続きが必要になります。

税務や社会保険の手続きは、こちらの記事も参考にしてください。

まとめ

本記事では、マイクロ法人とは何か、設立によるメリットやデメリット、設立や運営に必要な手続きなどを解説しました。

マイクロ法人は、税金や社会保険料の負担を見直すうえで有効な選択肢となる一方、法人化のタイミングや運営方法を誤ると、税務上のリスクが生じる可能性がある点に注意が必要です。

税理士 中村太郎

いかがでしたでしょうか。

マイクロ法人は、正しく活用すれば、個人事業主やフリーランスの方のビジネスを飛躍させる有効な手段となります。

一方で、税金や社会保険料の負担が本当に軽減できるのか、設立後の運営に問題はないかなど、検討すべきポイントは少なくありません。

当事務所では、事業を法人化すべきかどうかのご相談や、設立前後の手続き、継続的な決算・申告対応、税務調査への対応まで、マイクロ法人をトータルでサポートしています。

「マイクロ法人に興味がある」

「税や社会保険の負担が気になっている」

そう感じた方は、お気軽にご連絡ください。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。