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個人事業主が知っておくべき「消費税」を徹底解説

税理士 中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

今回は個人事業主が知っておくべき【消費税】について。

消費税は法人税とは異なり赤字でも支払わなければならないため、きちんと把握しておかないと資金繰りに影響を及ぼすことも・・。

まずはこの記事で消費税について知ることで、納税準備を前もって進めていただければと思います。

是非ご一読ください!

消費税とは何か

消費税とは、物を買ったり、サービスの提供を受けたりしたとき、その対価にかかる税金です。

現行の消費税率は、消費税の課税対象となる取引の対価に、10%または8%を乗じた額になります。

10%が標準税率ですが、飲食料品など一部の取引には軽減税率として8%が適用されます。

これらの税率は、国税である「消費税」と、地方税である「地方消費税」の合計です。

税率の内訳
標準税率(10%)軽減税率(8%)
消費税率7.8%6.24%
地方消費税率2.2%1.76%

消費税の負担と納税のしくみ

消費税は、最終消費者が負担した税を、それを受け取った事業者が納税する「間接税」と呼ばれる税になります。

たとえば、ホームセンターを営むA社が、レジで買い物客Bから消費税100円を受け取ったとします。

この時、100円の税を負担しているのはBですが、その100円は、A社が税務署に対し申告・納税する仕組みになっています。

では、この買い物客Bが実は販売業を営む事業者であり、A社から購入した品を1.5倍の額で顧客Cに販売して、Cから消費税150円を受け取ったとします。

Bは、Cから受け取った150円から、A社に支払った100円を控除した50円を税務署に申告・納税します。

すると、最終消費者であるCが負担した税額と、事業者であるAとBが納めた消費税額は、ともに150円になります。(支払った消費税を全額控除できない事業者もあるので、現実には一致しません。)

個人事業主の消費税の申告・納税について

消費税は、課税期間中に行った課税取引から、納税額を計算して申告・納税を行います。

個人事業主の場合、課税期間は、所得税の事業年度と同じで、1月1日から12月31日となります。

申告期限は、翌年3月末までです。

ただし、すべての方に消費税の申告・納税の義務があるわけではありません。

消費税の申告・納税義務があるのは、「消費税の課税事業者」に限られます。

個人事業主は消費税の納税が必要なのか?

個人事業主は消費税の納税が必要なケースとそうでないケースがあります。

納税が不要なケース

個人事業主で消費税の納税が免除されるのは免税事業者である場合です。

免税事業者に該当するのは以下の通りとなります。

  • 基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者
  • 適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)の登録を受けていない事業者
  • 特定期間(前年の1月1日から6月30日まで)における課税売上高が1,000万円以下の事業者

基準期間とは個人事業主の場合、その年の2年前を指します。

例えば令和4年の売上高が1,000万円以下の場合、令和6年の消費税の納税は免除され、免税事業者となります。

消費税の課税事業者とは

消費税の課税事業者になる要件についてくわしく解説していきます。

消費税の課税事業者の要件

消費税の課税事業者は、次の(ア)と(イ)のどちらか一方にあてはまる事業者をいいます。

(ア)「基準期間」における課税売上高が1,000万円を超える事業者

(イ)「特定期間」における課税売上高又は給与等の支払総額が1,000万円を超える事業者

「(ア)基準期間」とは、前々年の事業年度をいい、「(イ)特定期間」とは、前年の事業年度の開始から6か月までの期間をいいます。

【例:令和4年の基準期間】

令和2年1月1日~12月31日

【例:令和4年の特定期間】

令和3年1月1日~6月30日

特定期間は6か月しかなく、しかも課税売上高と給与等のどちらで判定してもよいことから、実務では(ア)の基準期間によって課税事業者になるケースがほとんどです。

課税事業者の判定は毎年行います。

たとえば、令和4年の課税売上高が1,000万円を超えれば令和4年は課税事業者ですが、令和3年の課税売上高が900万円であれば、令和5年は免税事業者に戻ります。

消費税の「課税売上高」とは

「課税売上高」とは、「①消費税の課税対象となる売上高+②免税売上高」のことです。

消費税の課税対象となる売上高とは

「①消費税の課税対象となる売上高」とは、商品や製品の販売、保有する資産の賃貸料、業務用の設備や建物の売却代金など、消費税の課税対象となる取引のうち、消費税を受け取った取引(売上)が該当します。

一方、課税取引の要件を満たさない不課税となる売上や、政策的な配慮から非課税とされている売上は、課税売上には含めません。

消費税の課税対象にならない売上高の例
非課税不課税
・土地の売却代金や地代
・アパートなど住宅の家賃収入
・有価証券の売却代金
・預貯金や貸付金の受取利息
・商品券、プリペイドカードなどの売却代金
・医療保険、介護保険の対象となるサービスなど
・助産に関するサービスなど
・一定の身体障がい者用物品の販売代金やレンタル料金
・教科書などの図書の販売代金
・補助金、寄附金、見舞金
・保険金や共済金
・株式の配当金や出資分配金
・損害賠償金(対価性のあるものを除く)

免税売上高とは

「②免税売上高」とは、免税取引となる売上高のことです。

国内からの商品の輸出、免税店での商品の売上、非居住者に対するサービスの提供などの売上などが該当します。

個人事業主が消費税の課税事業者になると変わること

消費税の申告・納税が必要になる

消費税の課税事業者は、消費税の申告・納税が必要になります。

前述の「消費税の申告・納税時期」もご参照ください。

消費税の経理が必要になる

納税額の計算のために消費税の経理が必要になります。

経理の方法には、税抜経理方式と税込経理方式があります。

仕入税額控除のための帳簿や保存書類の要件がある

消費税の納税額についての原則的な計算方法は、受け取った消費税から仕入税額控除を行った金額です。

この控除は、基本的に事業で支払った消費税の金額ですが、適用するには一定の帳簿書類の保存要件を満たさなければなりません。

個人事業主が消費税の課税事業者になるための手続き

課税事業者の要件を満たしたら、税務署に「消費税課税事業者届出書」をすみやかに提出します。

このとき、簡易課税制度の選択も検討しましょう。

よく似た書類に、「消費税課税事業者選択届出書」がありますが、これは、課税事業者になることを自ら選択する書類です。(少なくとも2年は免税事業者に戻ることができない点に注意。)

どちらが有利かわからないときは、税理士への相談がおすすめです。

消費税の選択についてお困りの方がいらっしゃいましたらぜひお気軽にご相談下さい。

個人事業主の消費税の計算方法

消費税は、課税売上に係わる消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除して計算します。

消費税の計算方法は【原則課税方式】と【簡易課税方式】、【2割特例】の3種類がございます。

原則課税方式

基準期間の課税売上高が5,000万円以上の事業者はこちらの計算方法となります。

原則課税方式の計算式

消費税額=(課税期間中の課税売上に係わる消費税額)-(課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額

現在税率が複数に分けられている為、消費税10%の取引と8%の取引に分けて計算しなければなりません。

仕入等の経費が多い等、支出が多い場合は消費税の還付を受けられる可能性があるため、免税事業者であっても、原則課税方式を選択するのも検討しましょう。

簡易課税方式

基準期間が5,000万円以下の事業者が選択できる計算方法となります。

簡易課税方式の計算式

消費税額=(課税期間中の課税売上に係わる消費税額)-{(課税期間中の課税売上に係わる消費税額)×みなし仕入率

仕入の際に支払った消費税を計算する必要が無く、あらかじめ業種ごとに決められた
【みなし仕入率】という割合を使って計算します。

みなし仕入率は、次の通りです。

みなし仕入率
卸売業90%
小売業等80%
製造業等(農林漁業、建設業、製造業など)70%
その他(飲食店業など)60%
サービス業等(運輸・通信業、金融・保険業、サービス業)50%
不動産業40%

参考:No.6509 簡易課税制度の事業区分

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm

簡易課税方式は非課税取引や税区分を分けて計算する必要が無いため、原則課税方式のように手間がかからない点がメリットです。

簡易課税制度のデメリット

簡易課税制度を選択した場合いくつかのデメリットが存在します。

事業が好調で、設備投資をするといった際、原則課税方式の場合は消費税の還付を受けられますが、簡易課税制度は受ける事が出来ません。

さらに、簡易課税制度の適用を受けている事業者は事業を廃止した場合を除き、2年を経過してからでないと簡易課税制度を取り止める事は出来ない等のデメリットが存在します。

2割特例

2割特例は2023年10月1日に始まったインボイス制度を機に課税事業者となった場合に適用できる計算方法となります。

2割特例の計算方法

消費税額=(課税期間中の課税売上に係わる消費税額)-{(課税期間中の課税売上に係わる消費税額)×80%}

2割特例は事前の届出は必要なく、消費税の申告時に消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記することで適用を受ける事が出来ます。

2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。

個人事業主が消費税を抑えるためのポイント

個人事業主は、できるだけ支払う税金を抑え、事業の拡大をしていきたいところです。

消費税を抑えるには事業形態に合わせて実業と将来の予測に基づいて課税方式を選択することが大切です。

消費税課税方式の選択などについてお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

売上高が1,000万円以下は消費税を支払う必要が無い免税事業者。

売上高が5,000万円以下は簡易課税制度が選択できる。

消費税を抑えるためには課税方式を選択する事が大切。

税理士 中村太郎

今回は個人事業主が知っておくべき消費税について解説いたしました。

消費税については、まず「課税売上高」が一千万を超えるかどうかが判断基準となります。近年では軽減税率が導入されたり、インボイス制度が始まったりと税務が煩雑化しています。

課税事業者になるかどうかのご相談など、弊社までお気軽にご相談いただければと思います。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。