Pick UP!

【個人事業主向け】所得税と住民税の定額減税 金額や実施方法を解説

税理士中村太郎

まいど!西新宿の税理士 中村です!

今回は【個人事業主向けの定額減税】について解説していきます。

来月から事務作業が開始される定額減税。

そもそもの制度概要や、事務作業の手順は確認されておりますか?

是非まだの方は本記事でご確認ください!

定額減税とは

定額減税とは、デフレ脱却のための対策として2024年に実施される経済政策の一つです。

個人の所得税と住民税をそれぞれ減税する方法によって実施されます。

定額減税の対象となる税

定額減税の対象者

定額減税の対象者は、国内居住者である個人のうち、合計所得金額が1,805万円以下である人です。 合計所得金額とは事業所得や不動産所得など、その年の所得の合計額になります。

なお、上記の【定額減税の対象となる税】のとおり、所得税は令和6年分の所得税ですが、住民税は前年分の所得に対する住民税が減税対象になります。

この違いによって、合計所得金額が1,805万円以下かどうかの判定もまた、所得税は本年の所得、住民税は前年の所得で行います。

定額減税の金額

定額減税の金額は、1人あたり4万円(所得税3万円、住民税1万円)です。

扶養している家族がいれば、1人につき、さらに4万円(所得税3万円、住民税1万円)が加算されます。

つまり、定額減税の金額は次のようになります。

定額減税の計算式

定額減税の加算対象になる家族の条件

定額減税の加算の対象にできる家族は、「同一生計配偶者」や「扶養親族」にあたる配偶者や親族です。

次の条件にすべてあてはまる必要があります。

同一生計配偶者・扶養親族の要件

  • 定額減税を受ける人と同一生計である
  • 合計所得金額が48万円以下である
  • 事業専従者にあたらない
  • 国内居住者である

定額減税の具体例

それでは、次の【例1】~【例3】のパターンで、どのように定額減税を受けられるのか具体的に確認してみましょう。

例1

  • 夫:個人事業主
  • 妻:無職(収入なし)
  • 子:小学生2人

この場合は、所得税12万円(3万円×4人分)、住民税4万円(1万円×4人分)を、個人事業主である夫の所得税と住民税からまとめて減税することができます。

例2

  • 夫:個人事業主
  • 妻:会社員
  • 子:小学生2人

この場合も、家族全体で16万円分(所得税12万円+住民税4万円)の定額減税を受けられることは、【例1】と同じです。

【例1】との違いは、妻にも所得がある点になります。

もし、この妻が「同一生計配偶者」にあたらなければ、妻の定額減税は、妻自身の所得税や住民税から減税を受ける必要があります。

例えば、妻の給与収入が年103万円を超えていれば合計所得金額48万円を超えるため、「同一生計配偶者」にあたりません。この場合は、妻自身で定額減税を受けることになります。

お子さんの分は、夫と妻のどちらがまとめて減税を受けても構いません。ただし、重複のないようにしましょう。

例3

  • 夫:個人事業主
  • 妻:夫の青色事業専従者として給与をもらっている
  • 子:小学生2人

【例3】の場合、妻は青色事業専従者として給与をもらっているため、夫や妻の定額減税をまとめて受けられません。

次のような事業専従者は、「同一生計配偶者」や「扶養親族」にあたらないためです。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image-2.png

したがって、妻の定額減税は妻自身で受ける必要があります。

なお、妻が「月次減税」などの対象になる場合、個人事業主である夫が、妻に支払う給与の源泉徴収税額を減額する方法によって定額減税を実施しなければならないことがあります。

青色事業専従者がいる個人事業主や、従業員を雇っている個人事業主は、後述する「個人事業主における定額減税の注意点」もご確認ください。

個人事業主の定額減税の方法(所得税)

それでは、個人事業主の定額減税の方法を具体的に解説します。

まず所得税の減税方法です。

所得税の定額減税は、①給与や賞与から控除する源泉徴収税額の減額、②年金から控除する源泉徴収税額の減額、③予定納税の減額、④令和6年分の確定申告といった機会で減税を受けることができます。

事業所得や不動産所得などのある個人事業主の場合、多くは予定納税の減額(③)や令和6年分の確定申告(④)の機会で定額減税を受けることになります。

もし、給与や年金を受け取っており、そこで定額減税を受けたとしても、最終的には令和6年分の確定申告(④)をすることによって減税の重複は調整されます。

この記事では、個人事業主に向けて、予定納税の額がある場合(③+④)と、ない場合(④のみ)の、定額減税の方法を解説します。

方法の①~④をすべて知りたい場合は、こちらの記事もご覧ください。

個人事業主の定額減税の方法(予定納税がある場合)

個人事業主の中には、予定納税を行っている方も多くいらっしゃいます。

予定納税は定額減税にどのような影響を与えるのか、詳しく解説していきます。

予定納税とは

予定納税とは確定申告によって納める1年分の所得税のうち、その一部をあらかじめ支払う制度のことです。

予定納税基準額(≒前年の所得税の申告納税額)が15万円以上である場合に発生し、対象者は、その3分の1にあたる額を、第1期分(7月)と第2期分(11月)として納税します。

対象者には、6月中旬に税務署から通知書が届きます。

予定納税について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

第1期分から減税される

予定納税額のある個人事業主の場合、第1期分(令和6年7月分)の予定納税の額から、定額減税が行われます。

この時に減税される金額は、基本的には本人分(3万円)です。

家族の分も減税したい場合は「予定納税額の減額申請」の手続きを行うことによって、「同一生計配偶者」や「扶養親族」の分(1人あたり3万円)を加算することもできます。(※)

この手続きによって第1期分の予定納税の額から減税しきれない分が発生した場合、残りは第2期分から減税されます。

なお、「予定納税額の減額申請」をしようがしまいが、令和6年分の確定申告によって、家族分を含めた適正な定額減税を申告納税額から控除できます。

(※)「申告納税見積額」(≒当年の所得税の見積り額)によっては「予定納税額の減額申請」ができないこともあります。

予定納税の納期や申請期限の特例

今回の定額減税の実施によって、令和6年の予定納税の納期や減額申請の期限が、一部延長されています。

・令和6年の予定納税の納期の延長

【第1期】令和6年7月1日(月)~令和6年9月30日(月)まで

(※)通常は7月1日~7月31日まで

【第2期】令和6年11月1日(金)~令和6年12月2日(月)まで

(※)変更なし

・令和6年の「予定納税の減額申請」の期限の延長

【第1期分及び第2期分】令和6年7月31日(水)まで

(※)通常は7月15日まで

【第2期分のみ】令和6年11月15日(金)まで

(※)変更なし

個人事業主の定額減税の方法(予定納税がない場合)

予定納税額がない個人事業主の場合は、令和6年分の確定申告において定額減税を適用することができます。

具体的には、通常どおり計算した申告納税額から、定額減税分を控除して確定申告をすることになります。

個人事業主の定額減税の方法(住民税)

住民税の定額減税は、その納税方法が、「普通徴収」なのか「特別徴収」なのかによって変わります。

「普通徴収」の場合は、令和6年度分の第1期の住民税(令和6年6月分)を減税する方法で実施され、減税しきれない額があれば、第2期以降から順次減税されます。

家族分の加算については前年の年末調整や確定申告などの情報から、市町村が判断してくれます。

これに対し、「特別徴収」の場合は、給与や年金から控除される住民税が減額されます。

個人事業主の多くは「普通徴収」になると思いますが、「特別徴収」による定額減税についても詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。

一部は令和7年度分から減税される可能性も

定額減税の対象となる配偶者が「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」に該当する場合、その1万円分の減税は「令和6年度分の住民税」からでなく、翌年の「令和7年度分」の住民税から減税されます。

「控除対象配偶者以外の同一生計配偶者」とは、個人事業主である本人の合計所得金額が1,000万円超であり、かつ、配偶者の合計所得金額が48万円以下である場合です。

この区分に該当する配偶者については、令和5年分の確定申告等の情報から把握することができないため、令和6年分の情報に基づき、その翌年に減税することとされています。

定額減税で控除しきれない額が発生した場合

定額減税では、個人の所得税や住民税から全額を減税しきれないことがあります。

納税額が定額減税よりも少ない場合

定額減税は、個人の所得税と住民税を減税する方法で実施されます。

そのため、その税額が定額減税の額より少なければ、減税しきれない額が発生します。

減税しきれない額が発生した場合は、「調整給付」として1万円単位で支給されます。 例えば、減税しきれなかった所得税と住民税の合計が1.5万円である場合、1万円単位で切り上げた「2万円」が給付されます。

調整給付については、こちらの記事でも解説しています。

納税額のある者がいない場合

世帯の全員が住民税の非課税対象者(=住民税非課税世帯)にあたる場合は、定額減税の対象ではなく給付金の支給対象になります。(1世帯あたり10万円。子育て世帯は加算あり)

個人事業主における定額減税の注意点

個人事業主の定額減税について、注意点をご紹介します。

家族に事業専従者がいる場合

前述のとおり、青色事業専従者として給与をもらっている家族や白色事業専従者である家族は、「同一生計配偶者」や「扶養親族」にあたりません。

この場合は、事業専従者は自分の所得税や住民税から減税を受けることになります。

なお、個人事業主のうち青色事業専従者に給与を支払っている場合、次項の「月次減税」や「年調減税」の実施に注意が必要です。

従業員を雇っている場合

従業員を雇っており、その従業員から「令和6年分扶養控除等申告書」の提出を受けて、給与から源泉徴収をしている場合(=甲欄で源泉徴収をしている場合)、その従業員の源泉徴収税額を減額する方法によって定額減税を実施する必要があります。

従業員に対する定額減税は、「月次減税」と「年調減税」という2つの機会で実施されます。

それぞれにおいて、減税対象者の範囲や減税額の判定方法が決まっており、それを事業主において実施する必要があります。

月次減税と年調減税は、従業員が青色事業専従者であっても実施しなければなりません。

月次減税と年調減税は普段の給与計算や年末調整とは異なる作業が発生します。ご不安がある場合は、税理士に依頼することも一つの手段です。

まとめ

個人事業主の定額減税について、対象者や計算方法、実施方法について解説しました。

個人事業主は、自分や家族のための定額減税と、雇っている従業員のための定額減税を考えなければなりません。

減税の手続きや計算でわからないことがあれば、当事務所にご相談ください。

税理士中村太郎

いかがでしたでしょうか。

定額減税、開始の時期が迫ってきています。

考慮しなければならない項目が多く、どこか複雑に感じる当該制度。

しかしながら制度概要をきちんと理解し、一つ一つ丁寧に見ていけば難しいことはありません。

不明点等はすぐに税理士に相談しましょう。

ABOUT US
新宿の税理士「中村太郎」
税理士業界経験20年超。過去、300社を超える会社、さまざまな業種・企業の税務・財務・融資・補助金申請などの業務を経験してきました。その経験と、士業はサービス業であるという精神から、ご満足頂けるご提案やサービス提供が可能であると自負しております。貴社の真のビジネスパートナー、経営者の方の「右腕」として弊社をご活用下さい。